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インド
(公開日:2015.05.25)

デジタル教材を活用した「子ども参加型」の授業を目指して(2015.05.25)

 
インドのデリー、テランガナ州、ビハール州の3つの地域において、企業とのパートナーシップのもとに行う、BOP(Base Of the Economic Pyramid:経済ピラミッドの底辺にいる貧困層の意)向け教育サービス事業の準備調査を実施しています。事業では、プロジェクターおよび音声・映像のマルチメディア教材を活用して、子どもたちが理解しやすく、教員にも扱いやすい教育システムの提供を目指します。

準備調査の具体的な取り組みとして、県の教員養成機関(DIET: District Institute of Education and Training)の協力を得て、1)ICT(情報通信技術)を活用した教授法に関する教員研修の実施、2)パイロット授業を実施して、子ども、教員、保護者からのフィードバックを収集し、その情報を基に現場のニーズに沿った「触って学べる教材」と「デジタル教材」の開発を行っています。

1)教員研修
公立小学校の4年生・5年生を担当する教員を対象に、基本的なパソコン技術に関する知識の習得と、理科・生活科の授業において、プロジェクターを使用したデジタル教材と触って学べる教材を組み合わせた参加型授業の研修を実施しました。


(写真)DIETの所長によるICTを活用した理科・生活科の教授法に関する講義(デリー)

研修では、パソコンやプロジェクターの使い方に関する説明の後、DIETの講師によるデジタル教材を活用した授業に関する講義がありました。その後、教員たちは、教科書の各トピックに沿ってデジタル教材の内容を検討して改良し、実際に模擬授業を行いました。


(写真)DIETの講師によるデジタル教材を活用した授業に関する講義。アニメーションなどを使い、親しみやすい内容となっています(デリー)


(写真)先生たちはグループに分かれ、レッスンプランを作成しました(ビハール州)

2)デジタル教材と触って学べる教材を使った参加型パイロット授業
DIETと小学4年生・5年生の理科・生活科を担当する教員が共同で作成した授業計画をもとに、プロジェクターを使用したデジタル教材と、触って学べる教材を組み合わせた参加型パイロット授業を実施しました。

5年生のクラスでは、「味わうことから消化まで」という単元での授業を行いました。「味わう」で子どもたちに塩、砂糖、レモン、苦瓜などを味見して、味覚の種類を体験してもらい、「消化」で体の臓器とその役割を映像や画像で紹介しました。また、子どもたちの参加を促すために時折クイズを出したり、より分かり易い授業にするために、重要ポイントや難しい単語を黒板に書きだしたりなどの工夫がなされていました。


(写真)5年生のパイロット授業の様子(デリー)

■デリーでの子ども、教員、保護者への聞き取り調査
パイロット授業の成果をより詳しく確認するため、デリーの学校を訪問して、子ども、教員、保護者への聞き取り調査を実施しました。以下に、各グループから出た意見・感想の一部をご紹介します。

子ども:「先生の教え方が面白い」、「写真や映像、キャラクターが出てきて分り易かった」、「授業についていけるようになった」、「もっともっとたくさんのお話やクイズ、アクティビティがあるといいな」


(写真)学校を訪問し、4年生・5年生の子どもたちを対象に聞き取り調査を行いました(デリー)

教員:「子どもたちが授業により集中し、注目し、反応するようになった」、「欠席する子どもが減った」、「臓器や消化の仕組みなど教科書だけでは教えにくいトピックについても教えやすくなった」、「子どもたちとの対話が増えた」、「子どもたちの意見を聞くことによって、いろんな話をしてくれるようになり、子どもたちとより親密になった」、「もっと簡単に使えるデジタル教材がほしい」

保護者:「勉強に対する姿勢がいい方向に変わったのでとてもうれしい」、「パイロット授業で先生がどのように教えて、どんなビデオを見たかを話してくれる」、「デジタル機器に対して興味を持つようになった」


(写真)4年生・5年生の子どもたちの親に集まって頂き、聞き取り調査を行いました(デリー)

パイロット授業の成果として、子どもたちの授業への参加度や理解度の向上が見られただけでなく、授業以外での子どもたちの態度にも、様々な変化が表れていることが確認できました。また、特に貧しい地域に住む子どもたちは、自分たちの生活圏の外と接することも限られているため、映像や画像を通して視野を広げる機会を作ることが非常に重要であることが分りました。加えて、人口12億人を超える多民族、多言語、多宗教国家であるインドの子どもたちにとって、こうしたツールが、民族、宗教、カースト、性別による差別や偏見を減らし、多様性への寛容さを養う上でも役立つことが確認できました。


<ケース―ストーリーのご紹介:5年生のミランさんの場合>
5年生のミランさんは両親とお兄さんの4人家族です。住んでいる地域はデリーでも特に人口密度が高く、小さな家がひしめきあうように建っています。父親は中古部品屋で修理の仕事をし、母親は家政婦として働いています。家族の収入は月1万ルピー(約2万円)ほどです。

担任の先生によると、ミランさんは恥ずかしがり屋でおとなしい性格のためアクティビティにあまり参加せず、勉強もあまり得意ではなかったそうです。しかし、パイロット授業に参加するようになってから、ミランさんに大きな変化が見られました。授業ではクイズやゲームなどのアクティビティに積極的に参加するようになり、成績も伸びました。先生とも積極的に話すようになり、朝礼では仲間をリードしてまとめるようになるなど、今ではみんなの前で堂々と話しができるようになりました。

「僕の住んでいる地域には公園がない。だからいつも家の屋根で遊んでいるけど、遊べるものが限られているんだ。だから学校に来てアクティビティに参加するのは楽しい。

プロジェクターが学校に来てから、勉強するのもとても楽しくなったんだ。僕の先生は新しいことを教えてくれるし、インターネット・カフェに行って、自分でもっと調べたり、ゲームをしたりするよ」と、ミランさんはセーブ・ザ・チルドレンのスタッフにうれしそうに話してくれました。

学校の保護者会で、ミランさんの母親は彼の変化をとても喜び、「いつか子どもたちに中古のパソコンを買ってあげるつもりです」と、話しました。


(写真)授業に参加するミランさん(デリー)

このような準備調査の取り組みを通して得られた成果や課題を考察しながら、引き続き教員や教育機関と協力し、現場のニーズに沿った「触って学べる教材」と「デジタル教材」の開発を進めています。

インド担当:村田あす香

 

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