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モンゴル
(公開日:2016.02.03)

モンゴルの寒雪害【ゾド】の可能性

 
皆様、こんにちは。モンゴル事務所の岡本です。
モンゴルの冬はマイナス30度を越えることはご存知ですか? 極寒の世界でいざ住んでみると、防寒具で覆われていないまつ毛が凍ったり、携帯電話の電源が勝手に切れたりと、色々な発見があります。ただ、どれだけ寒くても、基本的な買い物や交通のアクセスに困ることはないため、世界で最も寒い首都とも言われるウランバートルの冬の生活にも少しずつ慣れてきました。


最高気温でマイナス15度前後のウランバートルの冬

しかし、首都から離れた農村部における冬の生活は、一筋縄ではいきません。この冬は、昨年のエルニーニョ現象や干ばつの影響もあり、モンゴル特有の寒雪害である「ゾド」の前兆がすでに確認されており、セーブ・ザ・チルドレンも、想定される大規模災害・緊急事態への早期対応のための準備にとりかかっています。その一環として、12月中旬に首都から約450km離れたウブルハンガイ県に行き、過去にゾドの被害にあった地域の視察をしてきました。

今回のブログ記事では、@ゾドとは何か、A現在の状況、Bそして過去にゾドの被害にあった地域の人たちの現地からの声について紹介したいと思います。


@ゾドとは何か

ゾドとは冒頭でもお伝えしたように、モンゴル特有の寒雪害です。地震や津波などの突発的災害とは違って、ゾドは遅発的災害と呼ばれ、夏の干ばつによる牧草の欠乏に始まり、冬の大雪(10cmから350cm)や厳しい寒さ(−40℃から−50℃)が続くことによって、大量の家畜が死んでしまうことです。全人口(約300万人)の3分の1が牧畜を中心とした遊牧生活を行っているモンゴルにおいて、家畜を失うということは、財産を失うことに等しく、このゾドという自然災害がモンゴルという国全体に与える影響は、私たちが想像する以上のものがあります。多くの遊牧民は少しでも被害を抑えようと、と殺を行って現金に換えようとしますが、市場に大量の肉が集まるために値段が急落し、生計を立てるために必要なお金を得ることすら困難になると言われています。

また、ゾドの被害は経済的な面だけに留まりません。大雪のため車の通行が遮断され、交通手段を失った村民たちは、医療などの公的サービスや、食料、生活必需品といった物資へのアクセスも途絶してしまいます。子どもたち、特に親元を離れて生活している子どもたちに関しては、寄宿舎の暖房維持や食料確保の困難、世帯所得の減少に伴う衣類・生活雑貨等の欠如、両親や家族に対するゾドの被害を気遣う心理的影響、冬期休暇の延長や臨時休校による学びの遅れなど、様々な問題を抱えることになります。

前回のゾドは2009から2010年にかけての冬に起こりましたが、これによってモンゴル人口の3割近い約77万人が大きな被害・影響を受け、そのうちの約4割(約28万人)が子ども(被災人口の36%)であった、という報告があります。(参照1)(前回のゾドに関する記事はこちら)。


A現在の状況

私が出張したのは昨年の12月中旬でしたが、それから一月ほどでで、状況は更に悪化しているようです。モンゴル国家危機管理庁(NEMA)の発表(12月30日のデータ)によると、モンゴルにある21の県のうち、16県の50の郡がゾド状態(その冬の積雪量、気温、牧草等が、政府の定めた基準値を満たした状態)になっていることが確認されており、その他120の郡がゾド状態手前に陥っているとのことです(参照2)。すでにいくつかの村では、大雪が道路を閉鎖して、文字通り村民の保健衛生、食事、福祉サービスから隔離してしまっているようです。このように、すでに被災者がいると思われる状況ですが、今後の天候次第では更に被害が拡大されるといわれており、適切な支援を必要としている遊牧民家庭は益々増えているようです。

モンゴルからゾドの正式な勧告が出されるとしても2016年の2月〜4月くらいだと言われていますが、セーブ・ザ・チルドレンを含む多くの国際組織が、数ヶ月前から被害を最小限に抑えるための準備を進めています。


2015年12月30日時点、NEMAによるゾド状況
(青=ゾド状態、水色=ゾド状態手前)(参照3)

B現地からの声(行政・教育関係者、村役人、遊牧民、子どものみで生活する家庭)

今回訪問したのは、前回のゾドで被害にあったウブルハンガイ県でしたが、道中の様子を見ていると、牧草が少なく、大雪が覆っている場所が多く、家畜にとって厳しい環境であるというのは明らかでした。現段階では、すでに同県の一部がゾド状態手前になっています。


雪の中に顔を入れて牧草を探す家畜の様子

今回面会したのは、NEMA県事務所代表、郡の行政官、地域教育センター所長、前回のゾドで多くの家畜を失った遊牧民、親元を離れて自分たちだけで暮らす子どもの家庭などで、主に前回のゾドの様子と、今回再び起こるかもしれないゾドへの対策や準備について尋ねてみました。

当時最も必要とされていたものは何かという問いへの回答に共通していたのは、衣類、食料、医療品、シャベルなどの基本的な物資から、子どもたちに対する心理的サポート、学校や寄宿舎における暖房、ゾドに関する意見公開の場や、学校のソーシャルワーカーに対してゾドの知識を蓄えるための研修などでした。

また、特に印象的だった回答は以下の通りです:

  • 「前回のゾドでは、道路が閉鎖されたため、手に入れられる医療や食料物資に限りがあった。既に、県の30%がゾドの被害を受けるかもしれないというデータが出ている(NEMA県代表)。」
  • 「この県で雪が最も多く降るのは2月〜4月なので、今緊急状態ではないからといって、まだまだどうなるか分からない(郡の役人)。」
  • 「2010年のゾドの影響で2〜3週間休校になった学校も少なくなく、週末が補修授業に使われた。小さな村では、通学途中に遭難した子どももいた(地域教育センター所長)。」
  • 「前回のゾドでは大雪により、ゲル(伝統的な丸型の家)の扉が開かなかったため、とにかくどうすることもできなかった。次に来るゾドに関しては、特に対策はしていない(遊牧民)。」
  • 「今は、遊牧民である両親と離れて、妹二人(13歳と7歳)と計3人で暮らしているが、家事や学校のことで毎日の生活が忙しいから、ゾドのことを考えている余裕がない(子どもだけの家庭の長男(15歳))。」

  • 今回の訪問で一番印象的だったのは、両親が遠隔地で牧畜業を行っているために子どもたちだけで暮らしている家庭(以下の写真)ですが、色々な郡や村に同様の家庭は存在しています。彼ら彼女らのような子どもたちが、少しでも安心して安全に暮らせていけるよう、また、起こるかもしれないゾドの災害を最小限に抑えるためにも、セーブ・ザ・チルドレンは準備を進めていく予定です。


    子どもだけで生活する家庭(一番下の7歳の妹は通学中)

    今後もブログなどで、ゾドの進捗状況ならびに、セーブ・ザ・チルドレンの同災害に対する対応についてアップデートさせて頂きますので、皆さまのご支援、どうぞよろしくお願い致します。

    (報告:モンゴル事務所 岡本 啓史)


    参照資料
    参照1:Mongolia Dzud Appeal 2010 (UN OCHA, 2010)
    参照2:Information bulletin n° 2 (Red Cross, 2016)
    参照3:モンゴル国家危機管理庁の記事(NEMA、2016)

     

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