最新の報告書「疎外される子どもたち」を発表し、世界で12億人の子どもたちが、貧困、紛争、女の子に対する差別で子ども時代を奪われる脅威にさらされている状況を報告


 セーブ・ザ・チルドレンは、6月1日の国際子どもの日*1にあわせ、最新の世界子どもレポート「疎外される子どもたち(The Many Faces of Exclusion)」を発表し、世界では、子ども*2の人口の半数以上にあたる12億人以上もの子どもたちが、貧困、紛争、女の子に対する差別によって、子ども時代を奪われる脅威にさらされていると発表し、子どもたちを守るための行動を早急に起こすよう訴えました。レポートではまた、昨年に続き、世界175ヶ国を対象にした「子ども時代が守られている国ランキング(End of Childhood Index)」を発表しています。

■ 子ども時代が守られている国ランキング

「子ども時代が守られている国ランキング」は、”死亡”、”栄養不良”、”教育を受けられないこと”、”児童労働”、”早すぎる結婚”、”早すぎる出産”、”激しい暴力の被害”を、子ども時代を奪う7つの要因と設定し、①5歳未満児の死亡率、②発育阻害の子どもの割合、③学校に通っていない子どもの割合、④児童労働に従事する子どもの割合、⑤結婚している少女の割合、⑥少女の出産率、⑦紛争により家を追われた子どもの割合、⑧子どもの殺人被害率、の8つの指標をもとに、175ヶ国を対象に作成したものです。

結果は、175ヶ国中1位はシンガポールとスロベニア、3位から5位はノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧諸国が占めました。一方、最下位は昨年に引き続きニジェールで、下位の10ヶ国中8ヶ国が西アフリカと中央アフリカ地域の国々でした。日本は昨年の16位から順位を下げ、イスラエル、ルクセンブルクと同位の19位という結果でした。



全体の傾向としては、175ヶ国中95ヶ国で昨年に比べて子どもたちの置かれた状況が改善し、40ヶ国で状況が悪化していました。

セーブ・ザ・チルドレンの統括組織であるセーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルの事務局長を務めるヘレ・トーニング=シュミットは、「西アフリカや中央アフリカ地域をはじめ、世界の多くの地域で子どもたちの置かれた状況が改善しましたが、その速度は遅々としているうえに、多くの国では貧富の格差が急激に拡大しています。

世界の子どもの2人に1人が、貧しいから、紛争地で育っているから、あるいは女の子であるからという理由で、人生のスタートから不利な状況に置かれ、早すぎる結婚や児童労働、栄養不良などによって、子ども時代を奪われてしまうのです。

この現実に早急に対処しない限り、2015年の国連総会において全会一致で採択された2030年までに世界が目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の中で約束された、すべての子どもが生き、学び、守られるための目標の達成はほぼ不可能です。

たとえ国民所得が同等の国であっても、政治的な意思決定、政策、資金の割り当てが、子どもたちの状況に決定的な違いを生み出すことがわかっています。各国政府は、すべての子どもが人生のスタートを最善な形で切ることができるようにするための方策を持っていますし、そのための努力を尽くす必要があります」と訴えます。

■ 報告書「疎外される子どもたち」から見えてきたこと

●世界では、10億人を超える子どもたちが貧困にあえぐ国々で暮らし、2億4,000万人の子どもたちが紛争や脆弱な状況下にある国々で暮らし、5億7,500万人の女の子たちが、女の子への差別が根強い国々に暮らしています。

●南スーダン、ソマリア、イエメン、アフガニスタンを含む20ヶ国に暮らす、およそ1億5,300万人の子どもたちは、貧困、紛争、女の子への差別という3つの要素すべてに影響を受けています。

●紛争地域では、栄養不良、病気、不適切な医療によって命を落とす子どもの数が、紛争に巻き込まれて命を落とす子どもの20倍にものぼります。

●武力紛争のある国では、子どもたちが児童労働に従事する割合が世界平均よりも77%高く、18歳未満の少女の児童婚の割合も増えます。

●紛争や脆弱な状況下にある国々で、初等教育の完全普及を達成またはほぼ達成したのは、統計が取れている34ヶ国中4ヶ国だけです。

●最貧困層の少女の出産数は、最富裕層の少女の3倍です。

●「子ども時代が守られている国ランキング」において、アメリカ合衆国は36位、ロシアは37位、中国は40位で、経済、軍事、科学技術大国の3ヶ国では、西ヨーロッパ諸国よりも子どもたちの置かれた状況が悪い結果となりました。

●「子ども時代が守られている国ランキング」において、東アジア・太平洋地域では、76%の国々で子どもたちの置かれた状況が改善しましたが、フィリピンでは栄養不良による発育阻害の子どもの割合が増え、昨年より悪い結果となりました。

■ イエメンの子どものケース

イエメンに暮らす14歳のアリさん(仮名)は、日々の暮らしの中で貧困と紛争の影響を受けています。紛争で家を追われ、避難先の仮設住居で寝起きをしながら、空爆で負傷し働けなくなった父親に代わり、家族を養うために働かなければなりません。アリさんは、家族を養うために必死に働いていますが、時には空腹のまま床につくこともあります。



アリさんは、「空爆があると、以前は何が起きているのかわからず、恐ろしくて弟と泣いていました。でも、今では紛争状態が普通なので、空爆も恐くなくなってしまいました。紛争が起きる前は、友達と遊んで楽しかった。あの頃は良い時代だったけど、不満は言いません。今は紛争が起きていて、紛争は人々の生活を変えてしまうものだから」と話します。

■ 世界で子どもを誰ひとり取り残さないために


セーブ・ザ・チルドレンは、各国政府に対して、子どもたちが誰ひとり予防や治療のできる病気や激しい暴力の犠牲になることがなく、栄養不良や早すぎる結婚の強制、早すぎる妊娠、児童労働で未来を奪われることもなく、質の高い教育を受けられるよう、取り組むことを求めます。

■ 日本の子どもの子ども時代


「子ども時代が守られている国ランキング」で19位の日本でしたが、子ども時代を奪う7つの要因をもとにした8つの指標においては、上位の国々との差はわずかで、日本の子どもたちの子ども時代は守られていると言えます。しかし、このランキングは、世界の中での子どもたちの状況を浮き彫りにするためのものであり、日本を含め上位の国々の子どもたちの置かれた状況に、課題がないわけではありません。

日本の子どもの相対的貧困率は13.9%*3で、子どもの7人に1人が相対的に貧困の状態にあります。また、セーブ・ザ・チルドレンが2017年7月に国内2万人の大人を対象に実施した「しつけにおける体罰等に関する意識・実態調査」では、大人の約6割が子どもに対するしつけのための体罰を容認することがわかりました*4

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン事務局長の千賀邦夫は、「日本では、紛争や脆弱な状況下にある国々の子どもたちのように子ども時代が奪われることはありません。しかし、子どもの貧困問題では、経済的困難にある子どもたちが、学習や進学などの面で不利な状況に置かれ、将来的な就職や所得獲得にも影響することが指摘されるなど、子どもの成長や学びの機会が環境に左右されている状況があります。

さらに、日本も批准している国連子どもの権利条約では、あらゆる形態の暴力や虐待から子どもを保護することが定められています。そして国連子どもの権利委員会は、子どもに対する体罰等はどんなに軽いものであっても禁止されるべきであると示しています。にもかかわらず、日本ではまだ家庭内を含め全面的に禁止されていないのが現状で、子どもの個人の尊厳が保障されているとは言えません。

セーブ・ザ・チルドレンは、日本の子どもの貧困問題解決の取り組みとして、国や自治体に対して就学援助制度など公的支援制度の改善や周知の徹底を求めると同時に、日本における子ども虐待の予防をめざし、体罰等の全面禁止に向けた法整備を日本政府に提言するなど、社会の仕組みの中で、すべての子どもの権利が守られるよう求めていきます」と話します。

*1 1925年、ジュネーブの子どもの福祉世界会議にて制定された記念日。国際子どもの日以外には、国連が1954年に児童の権利に関する宣言と児童の権利に関する条約を採択した11月20日を「世界子どもの日(Universal Children’s Day)」と制定している。
*2 本報告書では、国連子どもの権利条約の定義にあわせ、18歳未満の人を子どもとしている。
*3 厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」より。
*4 2017年7月、全国2万人の大人を対象に、子どもに対するしつけのための体罰等に関する意識と、1,030人の子育て中の親や養育者を対象にその実態を把握するために、体罰等に関する意識・実態調査を実施し、本年2月には報告書『子どもの体やこころを傷つける罰のない社会を目指して』を発表した。
http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/php_report201802.pdf


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