東日本大震災から10年 いま伝えたい想い
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの「子どもまちづくりクラブ」(岩手県陸前高田市)のメンバーとして「進め!高田っ子!まちづくりフォト☆」などのイベントに参加。現在はカメラマンとして主に観光地で写真業に携わる。
私が小学校5年生の頃、岩手県内で開催されたセーブ・ザ・チルドレンの「子どもまちづくりクラブ」(*1)のイベントに友人に誘われて参加したことがきっかけです。
当時はあまり自分の住んでいる地域に関心がなく、いまいち「まちづくり」についてピンとこないまま、休日の暇つぶし感覚で参加しました。しかし、その日初めて会った子たちと、普段友だちと話さないような「まちづくり」についてたくさん話し合えたことがとてもうれしく、なんだか誇らしい気持ちで帰宅したことを覚えています。
その後、「子どもまちづくりクラブ」の活動に参加しないかと声をかけられ、2015年12月の活動が終了するまでの間、月2、3回活動に参加しました。
まちづくりクラブで開催した「進め!高田っ子!まちづくりフォト☆」(まちフォト☆)(*2)です。普段は子どもたちだけでは行けないような復興途中の場所へ入らせてもらい、自分たちがひかれた風景をひたすら撮影して発信しました。
一番記憶に残っている景色は盛り土されただけの高い場所から眺めた、お店も何もないがれきだけの足下の景色と、少し遠くに見える海です。
当時は悲しさも怒りもなくただ漠然と、「夏に遊んでた海が全部こんながれきになったのか」と眺めていました。しかし、まちづくりクラブで、「あの道は不便だからこうしてほしい」、「〇〇があったら便利じゃないか」など、何もなくなった地元について、これからどうなってほしいかを話していくうちに、次第に希望がみえてきたような気がしました。
また、報告会で写真をパネルにして飾ったり、クリアファイルに写真を刷って近くの学校へ配布したりした活動も覚えています。自分の学校で、そのクリアファイルが配られている瞬間を見たときは、本当に誇らしい気分になりました。
もともと写真を撮影することが好きで、普段はゲーム機や家のデジタルカメラ、使い捨てカメラや親の携帯などで好きなものを撮っていました。まちづくりクラブでは、立派なタブレットを借りて、いろいろな場所へ行き、その成果を、写真を通して他の人にも見てもらえることがとてもうれしくて、はりきって参加した思い出があります。
「考える力」が身についたと思います。また、「自分の発言に責任をもつ」習慣もついたと思います。皆まちづくりに本気なので、私もいつの間にか一生懸命考えて、つたない意見でも仲間のために意見を共有する、ということを意識するようになりました。仲間やセーブ・ザ・チルドレンのスタッフが意見を尊重してほめてくれたり、話を広げてくれたり、いつも話し合いがしやすい雰囲気だったことも私が成長できた要因のひとつだったと思います。
それから、「まちフォト☆」の活動を通して、写真で記録することがどれほど素晴らしいことなのか、写真が人に与える影響力はどれだけ大きいのかを学びました。
今を生きる子どもたちにできるだけ震災当時のことや、自分たちの復興への取り組み、復興の様子などをわかりやすく伝承していけたらと思っています。「まちフォト☆」のように、自分のまちを定期的に撮影して、発信したいとも考えています。
災害時には行政はもちろん、セーブ・ザ・チルドレンのような団体、そして、いろいろな人たちが協力しあって、できる限り迅速に被災地や被災した人たちをサポートすることが重要だと考えます。
被災直後は、誰もが不安や苦しさ、恐怖感を抱えていて、誰かに守られることを望んでいます。家を失う瞬間を目撃して放心する大人や、家族の安否もわからずひとりで怯えている子もいるかもしれません。そんなとき、炊き出しなどの温かいご飯、防犯やプライバシー面で安心できる避難所の設置、清潔な簡易トイレやお風呂、精神面のケアなどの支援があることはとても大切だと思います。