東日本大震災から10年 いま伝えたい想い
セーブ・ザ・チルドレンのスタッフ(チャイルドファシリテーター:子どもたちが参加する会議などで子どもたちが意見を伝えやすいようにサポートしながら、話し合いの進行をする役割)として、主に岩手県山田町の「子どもまちづくりクラブ」の活動に参加。東北子どもまちづくりサミットや子どもまちづくりリーダーツアーにおいてもプログラムの進行や子どもたちの発表をサポートした。現在は設計事務所に勤務。
2012年に当時通っていた大学でセーブ・ザ・チルドレンが「チャイルドファシリテーター」を募集していました。同じ寮に住んでいた同級生がすでにセーブ・ザ・チルドレンでチャイルドファシリテーターとして活動していて、活動の様子を聞き自分も参加することにしました。また、当時は教育学部で教師を目指していたので、活動の経験が教師になるうえでも良い経験になるのではないかとも思いました。
子どもたちのファシリテーターをすることは初めてだったため、セーブ・ザ・チルドレンが実施するチャイルドファシリテーターの研修を受けました。その後、週末に山田町の「子どもまちづくりクラブ」(*1)の活動に参加したり、「東北子どもまちづくりサミット」(*2)や「子どもまちづくりリーダーツアー」(*3)に参加したりしました。
「子どもまちづくりクラブ」の活動のなかで、当初子どもたちは「子どもの居場所がほしい」と山田町のふれあいセンター(*4)の建設を企画していました。しかし、町の人たちにヒアリングをしていくなかで「子どもだけではなく大人も、おじいちゃん、おばあちゃんも皆がくつろげる場所にしてはどうか」との意見に変わっていきました。子どもたち自身の視野が活動のなかでひろがり、地域の人たち全員に目を向け始めた瞬間に立ち会えたときは本当に嬉しかったです。実際、ふれあいセンターには小上がりの和室を模した空間があるのですが、高齢の方もくつろげる場所を意識してつくられたスペースです。
ファシリテーターとして、どうしたら子どもたちの意見をうまく引き出すことができるのか、常に考えていました。特に意見が出ないとき、発言のない子がいるときは無理にその場を盛り上げたり、意見を言うよう強いるのではなく、誰もが意見を言いやすい雰囲気をつくったり、意見が出ない理由を考えて、必要な情報をインプットしたりしました。そして、一人でも反対意見が出たときは見過ごさず、その理由を聞いて皆で考えるようにして、少しでも子どもたちの本音を引き出すように努めました。
地域の人たちの意見を聞きながら、その意見をかたちにし、よりよい町、地域をつくっていくことに興味を持つようになり、いまの職業につながっていると思います。現在は、住宅の設計や、まちづくりコンサルタントとして地域に関わっていますが、その人たちの意見を聞き、尊重し、地域の人たちに寄り添いながら、新しい住まい・まちづくりをしていきたいと思っています。
地域の人たちの本音を引き出すことや、意見を押し付けることなく一緒に考えていくという姿勢はファシリテーターとして活動していた経験が活かされていると感じます。
セーブ・ザ・チルドレンなどの団体からの支援はもちろん大切です。しかし、そのような団体がいつまでもその地域で永遠に支援できるわけではありません。ですから、その地域の人たちが主体的に復興の体制をつくったり、まちづくりや防災活動を進めたりしていくことがより重要だと思っています。
最終的に自分たちの地域の問題を自分たちの手で解決していく、そういうコミュニティ支援の視点が国内外問わず今後ますます求められてくるのではないでしょうか。