東日本大震災から10年 いま伝えたい想い
石巻市福祉部子育て支援課で放課後児童クラブの担当をしていたときに石巻市の「子どもまちづくりクラブ」の活動に関わった。現在は石巻市福祉部子ども保育課に在籍する。
震災発生当時、私は石巻市福祉部子育て支援課で放課後児童クラブの担当をしていました。震災発生時には、市外からの避難者も石巻市に集まっており、避難所の設営をしながら、放課後児童支援員などの安否確認やクラブ室の被害状況調査などを行っていました。
ある日、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフが私の課の窓口を訪れ、必要な支援があれば教えてほしいと声を掛けてきました。当時、保育所には、早い段階からさまざまな支援がありましたが、放課後児童クラブや中高生への支援はほとんどなかったため、私たちはその状況を説明しました。その後、セーブ・ザ・チルドレンが放課後児童クラブや中高生への支援を行うことになり、一緒に活動するようになりました。
石巻市の「子どもまちづくりクラブ」(*1)の活動などは本当に思い出深いです。子どもたちの活動を最初から見てきましたが、はじめは頼りない感じの子どもたちが、自分たちのまちのことや復興のために自分たちに何ができるかを考え、声に出したことを具現化していく姿にはとても感動しました。特に東北子どもまちづくりサミット(*2)などの大きな舞台で、子どもたちがまちづくりについての「夢」や自分たちの活動を堂々と発信する姿を見ることをいつも楽しみにしていました。
子どもたちが、自分たちの想いを地域に発信することで、周りの大人たちも年齢や性別、社会的立場などに関係なく、地域全体で一丸となってその想いを実現させるための活動に取り組むことができたと思っています。子どもと大人の思いが一緒で、少しだけ子どもたちをサポートすれば、「石巻市子どもセンター らいつ」(*3)のように大きなプロジェクトも成し遂げることができる。子どもたちの可能性は無限なんだと感動しました。
「らいつ」は、2014年1月に開館してから石巻市が運営してきましたが、2018年4月からは、民間の団体が運営する「指定管理者制度」が始まりました。その「指定管理者」を選定する過程においても、子どもたちが意見を伝えられるように「子ども委員」が設置され、利用者である子どもの声が反映されています。昔も今も変わらず、子どもたちの社会参加の発信拠点として、積極的に活動が行われることを期待しています。
私自身は、最近は「らいつ」に行く機会が減りましたが、近くを通るたびに、いまでも子どもたちの元気な笑い声が聞こえてくるので、当時を思い出して懐かしい気持ちになります。
東日本大震災のような大災害では、当事者はやるべきことが多く、何をどうしたらよいのかわからなくなるし、不安にもなり、普段当たり前にできていたことができなくなったりもします。そうした精神状態の中でも、放課後児童支援員は、子どもたちに寄り添って見守っていかなければなりませんでした。支援員自身も被災しており、放課後児童クラブでは被災した支援員が被災した子どもたちと接するケースもあり、支援員に対してのこころのケアも重要でした。
そのような状況をセーブ・ザ・チルドレンは理解してくれて、全国学童保育連絡協議会などの協力も得ながら、支援員への研修や情報交流会を複数回一緒に実施しました(*4)。このような支援員へのこころのケアの支援を通して、子どもたちに対するきめ細やかな保育が実現できたのではないかと感じています。