東日本大震災から10年 いま伝えたい想い
NPO法人ふれあいサポート館アトリエが相馬市から指定管理・委託事業として請け負っている「相馬市中央児童センター」の主任として、児童センター業務、子育て支援、学童クラブ(センター以外に市内4ヶ所)の運営を管理。そのほか、子どもの遊び場施設「相馬子どものみんなの家」の管理運営もしている。
震災後、2013年にセーブ・ザ・チルドレンが支援する「第13回全国児童館児童クラブ大会 東北復興支援フォーラム」(*1)に参加しました。当時、福島県ではさまざまな団体が活動していましたが、私は、最も支援が必要なところに支援を届けるためには、現場のニーズをより的確に伝える必要があると考えていました。そのため、このフォーラムに参加し、学童保育施設の不足など相馬市が直面する状況や子どもたちの様子を訴えました。
その後、サントリーとセーブ・ザ・チルドレンが取り組む福島の子ども支援事業「フクシマ ススム プロジェクト」(*2)の一環で、「相馬市中央児童センター第2児童クラブ」建設(*3)や、児童センター機能強化のため職員研修(*4)などの支援が決まり、一緒に活動することになりました。
「相馬市中央児童センター第2児童クラブ」の建設に際し、設計会社や施工会社との打ち合わせから参加しました。ロッカーの大きさ、トイレや水道の蛇口、窓ガラスなど細かい部分まで、現場の声を反映してくれたことに感動しました。また、子どもたちと一緒に内装壁のタイル制作をしたことも印象的です。
子どもたちは目をキラキラさせて制作に取り組み、クラブ完成時には自分の制作したタイルをうれしそうに探していました。タイルのほかにも、ビー玉を埋め込んだベランダのいぬばしり(犬が通れるくらいの細い道)など、子どもたちも一緒につくった内装は特別で、今でもクラブにあたたかな雰囲気を出してくれています。
震災後、遊ぶ場所が制限され、子どもたちへの影響が懸念されていましたが、クラブの建設により活動スペースが広くなることで、子どもたちのストレスも軽減されたのか子どもたち同士のトラブルが減りました。また、職員も新しい設備が整った施設で、余裕をもって指導にあたることができました。
常に子どもたちの元気な声が絶えない場所です。クラブ完成後は、被災地支援の一環で、企業と連携してさまざまな年齢層の子どもたちや保護者が楽しめるワークショップを開催しました。
イベントが開催されない時でも、昔センターに通っていた子どもたちが、自分のきょうだいを迎えに来るときに顔を出してくれることも多く、センターはいつも賑わっています。「センターに行けば誰かが話を聞いてくれる」と感じている子どもが多いのかもしれません。
また、子育て中の母親を対象とした親子教室を開催したり、デイサービスに通う高齢の方と子どもたち、母親との交流活動を年に数回開催したりと、世代を超えた新たなコミュニティをつくる場にもなっています。新型コロナウイルス感染症流行下の今は一部交流活動を休止しているものもありますが、可能な範囲でセンターを開放し、感染対策に配慮しながら楽しい企画を準備しています。
震災後さまざまな支援を頂きましたが、継続的なソフト面での支援がとてもありがたいと感じました。おかげで中長期的にセンターの活動が充実し、研修なども実現しました。そして当時のことを振り返ると、子どもたちは緊急支援のときに一緒に遊んでくれた人たちと後日再会できたとき、いつもの何倍以上も表情を輝かせて、大喜びしていたことも印象的でした。そのため中長期的な関係性を築いていくことも必要だと感じました。
また、支援する側だけでなく支援を受ける側の対応も大切です。感謝を忘れず、受けた支援をエネルギーに変え、子どもたちを支えていくことが重要だと思います。そして、子どもたちが大きくなったときに、今度は誰かを支える側になっていけば良いなと感じます。こうしたことが当たり前になるように、私自身、子どもたちに、「誰がどんな気持ちで支援をしてくれたのか」を伝えています。
昨年、台風被害で断水したときには、昔センターに来ていた子どもたちや保護者が水を持ってきてくれたり、コロナ禍でマスク不足に悩んでいるときに手作りマスクを持ってきてくれたりと、地域のなかで自然と助け合いの連鎖が生まれていることを感じて、とてもうれしかったです。
今後も、地域やセンターに来てくれる子どもたちや保護者とのかかわりを大切にしながら、非日常の事態に直面したときにも自然と助け合いができる関係をつくっていきたいです。