東日本大震災から10年 いま伝えたい想い

地域に貢献できる人材を育成することで地域の復興を支援していきたい

アクセンチュア株式会社
ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター
藤井篤さん

セーブ・ザ・チルドレンとのパートナーシップのきっかけは

当社は、セーブ・ザ・チルドレンのグローバル・パートナーとして東日本大震災前から世界各地で一緒に活動をしてきました。そのため震災が起こったときも、その直後からセーブ・ザ・チルドレンの東京事務所に私も含め当社の社員複数名が集まり、何日か事務所に寝泊まりしながら一緒に緊急支援に取り組みました。

また、当時アクセンチュアは、セーブ・ザ・チルドレンのグローバルバートナーとして、社会貢献活動の一環で掲げていたグローバル統一テーマ「Skills to Succeed」(スキルによる発展)という考えのもと、人材育成にも取り組んでおり、セーブ・ザ・チルドレンの東日本大震災復興事業とも連携できないか検討していました。そうしたなか連携の一つとして、地震や津波の被害に加え、原子力発電所の事故の影響も受けていた福島県の子どもたちが将来のためのスキルを身に付けることを目的とした活動を共同で実施することになりました。

さらに、当社は福島県会津若松市と会津大学と共同で被災地における産業振興や雇用創出に向けたさまざまな支援を行うことを目的に、会津若松市に「アクセンチュア・イノベーションセンター福島」を設立しました。2011年8月にはそのセンターの一部をセーブ・ザ・チルドレンに無償で提供し、福島事務所として活用してもらいました。

東日本大震災の被災地支援の中で印象に残っていることは

2013年より農業がさかんな福島県で農業を学ぶ高校生を対象に、経営・マーケティング授業を行いました(*1)。授業の内容は、「農産物を使った新しい商品を考えてみよう」「想定するお客さんの嗜好や競合商品を踏まえてセールスポイントを考えてみよう」「最も利益が出るように商品に値段をつけてみよう」など、農業のその先を考える内容でした。

Save the Children
福島県の農業高校での実習授業の様子

当初、皆の前で発言をすることが苦手な生徒がほとんどでしたが、授業では必ず発言をする機会をつくりました。生徒たちは次第に堂々と皆の前で発表することができるようになりました。そして、新聞をはじめとする報道機関の取材が入った時に、生徒たちが記者の質問に堂々と答えている姿を見て、私だけではなく学校の先生も生徒たちの成長に驚き、一緒に喜んだことを今でも覚えています。

また、授業では一方通行の講義形式ではなく、グループワークなど生徒たちが自ら考え、手を動かし作業するワークを大切にしました。企画の段階から最後の決算まですべて生徒たち自身が行います。絵が得意な子、皆の意見をまとめることが上手な子、たくさんのアイディアを出せる子など、それぞれのステージでそれぞれ得意分野を持つ生徒一人ひとりが活躍している姿も印象的でした。

支援を通した従業員への影響は

経営・マーケティング授業も回を重ねるうちに、どうすれば生徒たちにとってより良いプログラムになるのか、当社の社員たちで議論を重ねていきました。デザイナーを呼んでパッケージのデザインについて考えてもらったり、食品安全を考えるプログラムを追加したり、生徒たちに東京に来てもらい都内では物がどのような価格でどのように売られているのか体験してもらったり、プログラムの内容を充実させていきました。

Save the Children
2015年2月に農業高校の経営・マーケティング授業の一環で行われた東京での販売会の様子

そのなかで、当社の社員も一緒に成長することができたと思っています。特にいつもビジネスで接している大人たちとは違い、子どもたちに説明して理解してもらうことの難しさを痛感したという声が社員からありました。人に対して分かりやすく説明して理解してもらうにはどうすればいいか、子どもたちから教えてもらったように思います。

また、私たちのプログラムに参加した生徒たちのなかで、「自分の進路についてより真剣に考えるようになった」、「マーケティングに興味を持ち、大学などでもっと勉強したいと思うようになった」といった意見があったと聞きました。そのような声は本当にうれしいですし、社員のモチベーションを高めることにもつながります。私たちは現在も福島県や宮城県内の複数の高校で活動を継続しています。これからも、地域に貢献できる人材を育成することで引き続き地域の復興を支援していきたいと思っています。