東日本大震災から10年 いま伝えたい想い

次世代を担う子どもたちのため中長期にわたる復興支援を

SONY

ソニー株式会社
サステナビリティ推進部CSRグループ シニアマネジャー
岡田 康宏 さん

ソニー株式会社
サステナビリティ推進部CSRグループ CSRマネジャー
杉村 菜穂 さん 

セーブ・ザ・チルドレンとのパートナーシップのきっかけは

2010年に起きたハイチ地震でセーブ・ザ・チルドレンを通じて現地を支援したことがきっかけです。ソニーは「For the Next Generation(次世代のために)」を社会貢献活動のスローガンとしています。世界中で子どものための支援活動をしているセーブ・ザ・チルドレンのビジョンと重なる部分が大きく、ハイチ地震の後も災害時に迅速な支援を可能にする仕組みづくりをはじめ、さまざまな連携の可能性を議論していました。

その頃東日本大震災が発生し、ソニーはセーブ・ザ・チルドレンと協力して、すぐに子どもたちの支援を始めることになりました。2011年6月に共同で「RESTART JAPANファンド」(*1)を立ち上げ、ソニーグループの総合力を生かしながら「教育」「子どもの保護とケア」「創造的活動」に重点を置いた支援を連携して行い、中長期にわたる復興支援に取り組みました。

ファンドには、当社を含む複数の企業からの支援金や社員からの募金に加え、アーティストやタレントなど約170人によるチャリティソングの売り上げなども寄付されました。また、東日本大震災で被災した宮城県多賀城市の弊社工場の復旧後は、その工場で生産されたブルーレイディスクの売り上げの一部もファンドに寄付されました。

Save the Children
2012年7月に岩手県大船渡市で開催した「RESTART JAPANファンド」によるチャリティイベントの様子

東日本大震災の被災地支援の中で印象に残っていることは

被災地の子どもたちが日常生活を少しでも早く取り戻し、夢や希望を持ち続けてほしいとの願いから「RESTART JAPANファンド」で集まった資金で、震災の影響で中断した学校や地域のスポーツ・文化活動の再開をサポートする「夢実現プロジェクト」(*2)を実施しました。また、当社の科学教育プログラム「ソニー・サイエンスプログラム」(*3)を被災地の学校で実施したり、アーティストやプロのスポーツ選手などの協力を得て「夢の課外授業」(*4)などを行いました。さまざまな活動を通じて支援した子どもたちは、岩手県、宮城県、福島県の3県で1万5,000人にのぼります。

実際に私たちの活動に参加した子どものなかで、日本代表に選ばれるほどのスポーツ選手になったり、夢を実現してアーティストになったりしたという話を聞くと、本当にうれしく思います。

Save the Children
2011年2月に開催された「夢の課外授業」にてサッカーをする子どもたち

また、セーブ・ザ・チルドレンが被災地で実施していた、緊急下の子どものこころのケア「子どものための心理的応急処置(子どものためのPFA)」(*5)も印象に残っています。その後ソニーは、心理や精神保健の専門家でなくても誰もが実践できるこの方法を、もっと多くの方々に知ってもらいたいと考え、普及活動をサポートしています。2016年4月に発生した熊本地震の際も子どもたちのこころのケアの支援に役立てられました。

支援を通した従業員への影響は

東日本大震災発生直後から、何か自分たちにできることはないか、自分たちのアセットを活用して社会課題を解決できないかと考える社員が多くなりました。そうした声を受け止めつつ、実際に支援現場でどのようなニーズがあるのか、セーブ・ザ・チルドレンの皆さんは私たちができることを常に一緒になって検討してくれました。

東日本大震災発生から数年にわたり共同でさまざまな支援活動を実施していく中で、災害発生時および復興期において迅速に被災地のニーズにこたえていく重要性を強く認識するようになりました。それが2016年の「子どものための災害時緊急・復興ファンド」(*6)の共同設立につながり、一定額以上の資金を常に準備することで、迅速な支援の対応が可能になっています。

点ではなく線で長くつながってきたセーブ・ザ・チルドレンとのパートナーシップからは貴重な学びがたくさんありました。これからも、この強固なパートナーシップのもと、自然災害発生直後や人道危機などの緊急時をはじめ、中長期にわたって次世代を担う子どもたちを支援する取り組みを継続していきます。