東日本大震災から10年 いま伝えたい想い

従業員を巻き込みながら被災地の子どもたちが楽しめる教育機会を

LANXESS

ランクセス株式会社
コーポレートコミュニケーションズ 日本統括マネージャー
村上 幸 さん

セーブ・ザ・チルドレンとのパートナーシップのきっかけは

もともと、セーブ・ザ・チルドレンとは、支社のあるインド国内の社会貢献活動で繋がりがありました。震災直後、ドイツにある本社より「日本の被災地を支援したい」と連絡があり、日本でも震災直後から子どもの権利を実現するために被災地で緊急支援に取り組んでいることを知り、一緒に活動することになりました。

当社は「Good for business, good for society(ビジネスへの貢献、社会への貢献)」の理念を掲げた企業活動を展開しています。なかでも教育への取り組みは企業理念の重要な柱のひとつとして位置づけられており、被災地の子どもたちにも教育の機会を提供したいと考えていました。

震災から3ヶ月程経った頃、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフと一緒に被災地に行き、震災の爪痕が残る現場を目の当たりにしました。その後、現地のニーズに寄り添った支援をしたいと考えていたところ、職員より「被災地では夏休みの遊びが限られている」と聞き、社内で検討を重ねた結果、夏休み出前講座として「化学実験教室」(*1)を実施することになりました。 また、化学実験教室のほかにも実験キットの寄付や、岩手県山田町・陸前高田市、および宮城県石巻市の「子どもまちづくりクラブ」(*2)の活動支援、山田町の仮設子どもセンター「KYTみんなのひろば」(*3)の建設支援なども行いました。

東日本大震災の被災地支援の中で印象に残っていることは

化学実験教室は、当社の日本法人では初の試みでしたが、「子どもたちに会いに行こう」「東北に行こう」というスローガンを掲げて社内でメンバーを募ったところ、「東北の支援をしたい」と活動に賛同する社員が集まりました。2014年に初回の開催が行われて以来、現在まで毎年開催されています。

Save the Children
2014年8月に石巻市子どもセンターで化学実験教室を開催した時の様子

私自身、頻繁に被災地を訪れ、毎年化学実験教室に参加しています。教室では、身近なゴムやコンクリートなどの題材を取り上げながら、子どもたちがさらに楽しんで実験に取り組めるよう、「正確に計量しなければ良い作品ができない」などのチャレンジが仕掛けられています。

参加した子どもたちが新しい発見をして目を輝かせていたり、「すごい!」と好奇心に満ちた表情をしたりしている姿を見ると、大変うれしい気持ちになります。真剣に取り組み、積極的に学ぶ子どもたちの姿からは、無限のエネルギーと可能性を感じました。また、白衣や保護メガネを身に着けた子どもたちが、科学者になりきって実験に取り組む姿も非常に印象的です。

参加した子どもたちが、当社の従業員と肩を並べて実験に取り組むなかで、化学に親しむだけでなく、自分の才能に気がついたり、さまざまな職業を知って将来の可能性を広げたりしていってほしいと思っています。

支援を通した従業員への影響は

セーブ・ザ・チルドレンとともに開催する化学実験教室は、今年で7年目を迎えました。社内横断的に従業員を巻き込んだ成功例として、ドイツ本社からも高い評価を受けています。毎年、若手からベテランまで所属部署の異なる従業員が有志で集まり、扱う題材の決定から当日の運営まで、ゼロベースで企画しています。なかにはプロジェクト立ち上げ当初から何年にもわたって参加する従業員もいます。従業員自身が大きなやりがいや達成感を感じられることが、社内に根付く持続可能なプロジェクトを生み出しているのではないかと思います。

また、当社では、プロジェクトへの参加を業務の一環に位置づけていることもあり、参加した従業員が、通常業務とプロジェクトの両方に一生懸命取り組むようになり、それが所属部署の活性化に繋がったという声も耳にします。こうした相乗効果の連鎖により、社内にプロジェクトへの理解が浸透していることが、良い循環を生み出していると感じます。

Save the Children
2020年は山田町の子どもたちに向けてオンラインで化学実験教室を開催

今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で化学実験教室の開催自体が危ぶまれましたが、オンラインで開催することができました(*4)。教育は、一度身に付ければ誰も奪うことができないものだからこそ、置かれた環境にかかわらず、すべての子どもたちが等しく教育の機会を得ることが大切だと考えています。今後も、セーブ・ザ・チルドレンと連携し、従業員を巻き込みながら、持続可能な支援を継続していきたいと思います。

  1. 夏の出前講座~ドイツ化学実験教室 (2014年8月)
  2. 「子どもまちづくりクラブ」
    東日本大震災復興支援として、子ども参加によるまちづくり"Speaking Out From Tohoku~子ども参加でより良いまちに!~"を実施。岩手県山田町、陸前高田市、宮城県石巻市の3地域において、小学校5年生から高校生の子どもたちが月2~3回定期的に集まり、行政や地域住民、専門家と話し合いながらまちづくりに取り組んだ。
    "夢のまちプラン"を発表!!「第一回子どもまちづくりクラブ報告会」(2011年9月)
    第6回東北子どもまちづくりサミット_オープニング動画
  3. 山田町 仮設子どもセンター“KYTみんなのひろば”のお披露目会
  4. オンライン「ランクセス化学実験教室」を岩手県山田町で開催