イエメン(公開日:2024.09.12)
【イエメン食料事業 完了報告】食料危機:ラヒジュ県における現金支援と栄養支援を通じた食料安全保障改善事業
2011年からの長引く紛争や、新型コロナウイルス感染症の流行、ウクライナ危機による世界的な食料不足などの影響で、イエメンでは経済危機が深刻化し、長い間食料危機が続いています。国際機関の発表では2024年末までに、推定61万人近くの子どもが急性栄養不良となり、そのうち11.8万人が重度の急性栄養不良に苦しむと予測されています。また、約22万人の妊産婦が栄養不良になり、2023年よりも状況が悪化すると言われています1。
特に、セーブ・ザ・チルドレンが支援してきた地域の一つ、ラヒジュ県は食料不足の深刻さを示す総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)が「人道的危機レベル」であるIPC4以上の地域に属し、厳しい生活を強いられている人が多く暮らしています2。そうした中、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、このラヒジュ県で最も経済状況が厳しい地域の一つ、アル・クバイタ地区で、2023年9月から2024年5月まで、人々の食の安全保障を改善するために現金支援を行うと共に、栄養改善のための啓発セッションを実施してきました。(詳細はこちら)
現金支援の対象は、なかなか働きに出られない女性や高齢者が世帯主となっている世帯、妊産婦のいる世帯、障害者がいる世帯などが中心で、事業期間中計7回に渡り、366世帯(2,705人)に、1ヶ月に必要な食料を購入するために必要な金額を給付してきました3。
また、栄養と衛生に関するセッションを同世帯の養育者を中心に実施し、現金支援を受けた人々が、より栄養価の高い食事を効率的にとれるようにしたほか、衛生状況に配慮し予防可能な感染症から身を守れるように啓発を行いました。このセッションは、同地域で育成したボランティアが実施できるよう6人のボランティアへの研修・育成を通して行い、事業が終わっても栄養・衛生に関する知識やセッション実施のノウハウが地域に根付き、活動が持続するよう配慮しました。こうして、ボランティアが行ったセッションは、期間中371回にもおよび、延べ1,366人が参加しました。
これらの活動を通じて、支援を受けた336世帯(2,705人)のうち食料安全保障のレベルを測る「食料消費スコア(Food Consumption Score: FCS)」4 が改善した世帯は99.7%にのぼったほか、「対処法指標スコア(Reduced Coping Strategies Index:rCSI) 」5が改善した世帯は98%を達成しました。これらの結果から、人々が十分な食料を手に入れただけでなく、栄養価の整った食事を意識的にとるようになったことや、食費を捻出するために医療費や教育費を削るなどのネガティブな対処法を控えるようになったことがわかっています。
5人の子どもの母親のワルダさん(37歳)は、支援を受けたことで「食料を購入し、末っ子のサメ(3歳)の栄養不良が改善しました。また、やむを得ず首都サナアに働きに出ていた長男のワシーム(16歳)が出稼ぎから学校に戻ることができました」と語ります。また、「中古のミシンを購入するための頭金を支払うことができたため、縫製の仕事をはじめて、わずかながら収入を得られるようになりました」と話してくれました。
ワルダさんと同じように、支援を受け取った多くの世帯が支援を活用して、食料を買うだけでなく、生計向上の足掛かりを作っています。
一方で、支援が一時的であるため、事業が終了した後のことを心配する声も多く聞こえてきました。経済回復までには引き続き厳しい状況が予想されています。イエメンの人々が、少しでも安心して暮らせるように、セーブ・ザ・チルドレンはさまざまな活動を続けていきたいと思います。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
(海外事業部・金子由佳)
特に、セーブ・ザ・チルドレンが支援してきた地域の一つ、ラヒジュ県は食料不足の深刻さを示す総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)が「人道的危機レベル」であるIPC4以上の地域に属し、厳しい生活を強いられている人が多く暮らしています2。そうした中、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、このラヒジュ県で最も経済状況が厳しい地域の一つ、アル・クバイタ地区で、2023年9月から2024年5月まで、人々の食の安全保障を改善するために現金支援を行うと共に、栄養改善のための啓発セッションを実施してきました。(詳細はこちら)
現金支援の対象は、なかなか働きに出られない女性や高齢者が世帯主となっている世帯、妊産婦のいる世帯、障害者がいる世帯などが中心で、事業期間中計7回に渡り、366世帯(2,705人)に、1ヶ月に必要な食料を購入するために必要な金額を給付してきました3。
また、栄養と衛生に関するセッションを同世帯の養育者を中心に実施し、現金支援を受けた人々が、より栄養価の高い食事を効率的にとれるようにしたほか、衛生状況に配慮し予防可能な感染症から身を守れるように啓発を行いました。このセッションは、同地域で育成したボランティアが実施できるよう6人のボランティアへの研修・育成を通して行い、事業が終わっても栄養・衛生に関する知識やセッション実施のノウハウが地域に根付き、活動が持続するよう配慮しました。こうして、ボランティアが行ったセッションは、期間中371回にもおよび、延べ1,366人が参加しました。
これらの活動を通じて、支援を受けた336世帯(2,705人)のうち食料安全保障のレベルを測る「食料消費スコア(Food Consumption Score: FCS)」4 が改善した世帯は99.7%にのぼったほか、「対処法指標スコア(Reduced Coping Strategies Index:rCSI) 」5が改善した世帯は98%を達成しました。これらの結果から、人々が十分な食料を手に入れただけでなく、栄養価の整った食事を意識的にとるようになったことや、食費を捻出するために医療費や教育費を削るなどのネガティブな対処法を控えるようになったことがわかっています。
5人の子どもの母親のワルダさん(37歳)は、支援を受けたことで「食料を購入し、末っ子のサメ(3歳)の栄養不良が改善しました。また、やむを得ず首都サナアに働きに出ていた長男のワシーム(16歳)が出稼ぎから学校に戻ることができました」と語ります。また、「中古のミシンを購入するための頭金を支払うことができたため、縫製の仕事をはじめて、わずかながら収入を得られるようになりました」と話してくれました。
ワルダさんと同じように、支援を受け取った多くの世帯が支援を活用して、食料を買うだけでなく、生計向上の足掛かりを作っています。
一方で、支援が一時的であるため、事業が終了した後のことを心配する声も多く聞こえてきました。経済回復までには引き続き厳しい状況が予想されています。イエメンの人々が、少しでも安心して暮らせるように、セーブ・ザ・チルドレンはさまざまな活動を続けていきたいと思います。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
(海外事業部・金子由佳)
2 同上
3 現金の給付は、家庭毎のニーズに柔軟に対応できるため、国連が発表する「イエメン人道危機対応計画」でも奨励されている手法です。また、栄養改善を目指す場合、最低6回の給付が求められています。
4 過去7日間の1.食事の多様性、2.食事の頻度、3.栄養バランスを測定するもの。7日間の間、8つの食品群(主食/穀物、豆、野菜、フルーツ、動物性タンパク、乳製品、砂糖、油)を何日間摂取したかを聞き取り、スコアを算出する。詳しくはWFP, Food Consumption Scoreを参照。
5 食料不足によって過去7日間にとった食料消費に関する行動の種類と頻度によって、人々が食費のために何を犠牲にしているのかがわかる指標のこと(例えば医療費や教育費などが食費のために削られる)。詳しくはWFP, reduced Coping Strategies Index を参照。