2019年、板橋区の中学生6人が、子どもの権利条約の第12条(自分に関わるすべてのことについて意見を聴かれ、その意思を大切にされる権利があります)や、第31条(子どもには、休む権利、自由な時間を持つ権利、遊ぶ権利があり、文化的・芸術的な活動に十分に参加する権利があります)を守るためのアクションを起こしました。
その結果、遊び場の利用時間が延長されるといった変化が起きました。
ぜひ下記の記事をお読みください。
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/life/35950/(外部サイト)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/28119.html(外部サイト)
私たちは、このサイトであなたが子どもの権利を知り、考えるきっかけにしたり、新しい行動を踏み出すためのヒントを得てほしいと思っています。
まずは、このサイトに掲載されている子どもの権利条約の条文を読んだり、学校やあなたの居場所で子どもの権利に関するアクティビティに取り組んだりしてみてください。
「子どもの権利が守られていない…」と感じた場合、保護者・養育者や先生などの周りのおとなたち、また国や自治体の支援サービス、私たちセーブ・ザ・チルドレンのような団体が、あなたの問題解決のサポートをすることもできます。
ぜひこのサイトを通して、みなさんが持つ「子どもの権利」について理解を深めてください。
子どもの権利ってなに?
子どもの権利について、知るってどういうこと?
![](images/a04.png)
あなた自身や、あなたの意見を大切にすること、大切にされること
![](images/a05.png)
あなたがやりたいと思うこと、こうしたいと思うこと、あなたにとって最も良いことを支えること
![](images/a06.png)
あなたやあなたのまわりの子どもたちが、差別されず、安心して生きること
![](images/a07.png)
あなたやあなたの命が大切にされ、最も良い形で成長や発達をすること
子どもの権利を守るため、実際に子どもたち自身が行動を起こし、変化が起きた事例の紹介
子どもの権利、こう思ってない?
子どもの権利ってなに?
今を生きるあなたにとっての「子どもの権利」とは
突然ですが、あなたに質問です。
今のあなたの生活は楽しく、充実していますか?
あなたが、「楽しい!」、「充実している!」と感じられていたらとてもうれしいです。
一方で、もしかしたら、学校や家での時間が少し「苦しい」、「しんどいな」と感じたり、「もっとこうだったらいいのに」と思っている人がいるかもしれません。
「まわりの人たちから、自分自身や自分の意見が大切にされていない」と感じている人もいるかもしれません。
勉強や個人的なことで悩んでいたり、人からの評価やお金などの心配をせずに、もっと自由に自分のことを決められるといいな・・・と考えている人もいるかもしれません。
「子どもの権利」は、あなたが誰であっても、どこに生まれ育っていても、自分らしく、安心して豊かに、自分を大切な存在として、今を生きていくためにある権利です。
もし、今、あなたが「しんどいな」、「おかしくない?」、「もっとこうだったらいいのに」と感じていることがあれば、このウェブサイトを通じて「子どもの権利」を知り、そういう気持ちを減らしたり、自分らしく安心して生きるためのヒントを得てほしいと思います。
子どもは生まれたときから一人の人間
あなたは、「子ども」と「おとな」は、どのような点が、または何が違うと思いますか?
いろいろな考えがあると思いますが、子どもはおとなと比べ、心や身体(からだ)の成長や、発達の途中にあります。
生まれたばかりの赤ちゃんや年齢が低い子どもは、おとなに比べ、自分のやりたいことや考えをうまく言葉にすることができません。
また、身体(からだ)の小さな子どもはおとなに比べ、力が弱い場合が多いと思います。
このような理由で、子どもたちは、まわりの人々に守られる必要があります。
でも子どもたちはおとなから守られるだけの存在ではありません。生まれたときから一人の人間です。
一人の人間である子どもたちには、人としての権利、つまり「人権」があり、子どもの考えや意見は、おとなの考えや意見と同じように大切なものです。
もし、今あなたが、自分たちに関わることを、おとなが何でも決めてしまう、と感じているのなら、それは「子どもの権利」が守られていない状態だと言えるかもしれません。
「子どもの権利条約」は、一人ひとりの子どもにある権利についてまとめたものです。
自分にある権利について知り、それらの権利が守られているか考えてみてください。
あなたや友だちが、自分らしく、安心して豊かに、自分を大切な存在とみとめ、今を生きていくために必要なこと
「子どもの権利」は、国と国との約束事として「条約」で定められています。
「子どもの権利を守ります」と約束した国は、子どもたちの権利を守る義務があり、そのための取り組みを進めたり、法律を作ったり、変えたりする必要があります。
それぞれの国で生きる、あなたや友だちが、自分らしく、安心して豊かに、自分を大切な存在とみとめ、今を生きていけるよう、「子どもの権利」では、次の4つのことが最も大切だとしています。
●人種や生まれ・皮膚の色・性別・言語・宗教・障害・貧富の差・考え方などによって差別されないこと
●国やおとなが、子ども(あなた)の立場に立ち、子ども(あなた)にとって最もよいことは何かを考えたり、大切にしたりすること
●命を大切にされ、子ども(あなた)にとって最も良い形で成長や発達をすること
●自分に関わるすべてのことについて意見をきかれ、大切にされること
国や自治体などの地域社会、また学校や保護者は、これらの大切なことが守られるよう取り組みを進める必要があります。あなたは、今の自分の生活で、これらが十分に守られていると感じますか。
例えば、自分が「こうしたい!」と思うことについて、まわりのおとなたちから意見を聴かれたり、大切にされたりしていると感じていますか。
または、自分自身の考えや個性を大切にされ、あらゆる差別から守られていると感じていますか。
ぜひあなた自身の毎日の生活や気持ちについて、考える時間を持ってみてください。
子どもの権利について知るってどういうこと?
あなたが「子どもの権利」を知っているときと、知らなかったときではどのように生活が変わるのでしょうか?
子どもの権利について知ることは、次のようなことにつながります。
・あなた自身や、あなたの意見を大切にすること、大切にされること
・あなたがやりたいと思うこと、こうしたいと思うこと、あなたにとって最も良いことを支えること
・あなたやあなたのまわりの子どもたちが、差別されず、安心して生きること
・あなたやあなたの命が大切にされ、最も良い形で成長や発達をすること
ピンとこない… という場合は、ここに書かれているストーリーを例として読んでみてください。
ここに書かれているような、気持ちや状況の変化が起きるかもしれません。
ストーリー① あなた自身や、あなたの意見を大切にすること、大切にされること
あなたは小学生のころからあるスポーツを続けていて、今はそのスポーツがさかんな学校で部活に入っています。
早朝も放課後も練習、毎週末試合があって休む時間がありません。そのため、疲れで怪我をしやすくなったり、気分が落ち込んだり、授業に集中できなくなってしまいました。
でもあなたは、「休む時間も欲しいなんて言ったら、さぼっていると思われるかな」と考えて何も言い出せずにいました…。
あるとき、あなたは、子どもの権利に「休む権利」や「自分に関わるすべてのことについて意見を聴かれ、その意思を大切にされる権利」があることを知りました。これらの権利について知り、あなたは少しほっとしました。
そして「休む権利は自分にも、部活の仲間たちにもある。どうしたらより良い形で部活動ができるか、仲間や先生と話し合ってみようかな。自分たちの意見や気持ちも大切にしてほしい!」と考えるようになりました。
ストーリー② あなたがやりたいと思うこと、こうしたいと思うこと、あなたにとって最も良いことを支えること
あなたは学ぶことが好きで、毎日の学習や、テスト勉強にも力を入れています。
でも、テストの成績で自分と他の人を比較したりすることには少し息苦しさを感じており、もう少し趣味の時間なども大切にしながら自分のペースで毎日を過ごしたいな…と思うことがありました。
自分と同じように感じている人はいるのだろうか、そういう人はどうしているのだろう…と思い、インターネットなどで調べてみると、少人数制の学校や、自宅でのオンライン学習を取り入れた学校、音楽や美術に力を入れたさまざまなプログラムを実施している学校などがあることを知りました。
あるとき、あなたは授業を通し、子どもたちには「教育によって、自分の身体と心を成長させる権利」があることを知りました。「学校に通うことは子どもの『義務』だから苦しくてもこのまま学校に通わなくちゃ!」と思っていたあなたは、「学校に通うことは義務ではなく権利であること」、また「学校に通う以外にも教育を受けたり、勉強をしたりすることができること」に気づき、少し肩の力が抜けたような感じがしました。
「自分は、自分にあった方法で勉強したい」と考えたあなたは、話しやすい兄弟や親にまず相談してみることにしました。
ストーリー③ あなたやあなたのまわりの子どもたちが、差別されず、安心して生きること
あなたのクラスに、最近外国から移住してきたクラスメイト(彼)がいます。
彼は、まだ日本語がうまく話せないため、他のクラスメイトはどう接したらよいかわからず、少しよそよそしい雰囲気です。
でも彼は暴力を振るわれたり、ひどい悪口を言われたりしているわけではないので、差別やいじめを受けているという考えはあなたにありませんでした。
あるとき、あなたは彼と帰り道が一緒になりました。
そのとき彼は、今、学校の雰囲気になじめず、苦しい思いをしていることを話してくれました。
自分たちが差別やいじめをしているつもりはなかったのですが、「子どもの権利」には「差別されない権利」があることを以前学んでいたあなたは、彼の差別されない権利が奪われているのではないかと考えました。
そして、彼が苦しい思いをするのはおかしい、みんなが安心して生活できることが大事なはずだと改めて感じました。
あなたは、これからクラス内の自分たちの会話に彼がもっと参加できるよう意識してみよう、と思いました。
また、クラスとして何かできないか、周りの友達にも聞いてみようと思いました。
ストーリー④ あなたやあなたの命が大切にされ、最も良い形で成長や発達をすること
あなたは、自然豊かな山間部に住んでいます。生まれたときからその町に住んでいて、これまで川や山で遊ぶなど、自然と触れ合うさまざまな経験をしてきました。しかし、この数年、夏になると気温がとても高くなり、毎年、最高気温が更新されています。気温の上昇に伴い、記録的な集中豪雨が続くこともあり、土砂崩れなどが発生しています。先日も災害警報が発令され、深夜から朝にかけ、「これからどうなってしまうんだろう…」と、不安な時間を過ごしました。
祖父母や親たちは、時々、「自分たちが子どものころはこんなに暑くなかった」、「外は暑すぎるから家の中で過ごしなさい」と言います。そんなときあなたは、「私が生まれたときから夏はずっと暑い…。私たちのせいで気温が上がったわけではないのに、どうして私たちが我慢しないといけないのだろう…」と思います。
あなたは、今、学校で持続可能な開発目標(SDGs)や環境問題について学んでいます。また、人権学習で「子どもの権利」について学び、命を大切にされる権利や、最も良い形で成長や発達をする権利について学びました。
環境問題や気候変動が人の命や健康に与える影響を、政治家を含むおとなや自分たちと同じ世代の人に伝え、もっと環境問題に積極的に取り組んでもらいたい!と思うようになりました。
子どもの権利を守るため、実際に子どもたち自身が行動を起こし、変化が起きた事例の紹介
中学生6人が自分たちの遊び場を守るための意見書(陳情書)を板橋区に提出
「震災の被害を受けたまちのために何かしたい!」という子どもたちの声が形になる
「石巻市子どもセンターらいつ」は、「震災の被害を受けたまちのために何かしたい!」という中高生が意見を出し合い、考え、2013年に設立された子どもたちや地域の人々のための居場所です。子どもの権利条約の第3条(国やおとなから、その子どもにとって最も良いことを優先して考えてもらう権利があります)や、第12条(自分に関わるすべてのことについて意見を聴かれ、その意思を大切にされる権利があります)が守られた事例として、「らいつ」のウェブサイトや、活動内容をご紹介します。
https://ishinomaki-cc.jp/(外部サイト)
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?c=30(セーブ・ザ・チルドレンブログ記事)
子どもの権利、こう思ってない?
子どもの権利は、「●●したら」もらえるもの?
子どもの権利は、「勉強したら」とか、「お金があるから」といった、「○○したら」や「〇〇があるから」という条件と交換に手に入れるものではありません。
どんな環境に生まれても、すべての子どもたちには、生まれたときから子どもの権利があります。
差別されないこと、国や大人が子ども(あなた)にとって最もよいことを考えたり、大切にしたりすること、命を大切にされること、意見を聴かれたり、意見を言ったりすること、これらはすべての子どもにとっての権利です。
「大人になったら」、または「○○したら」というのではなく、あなたがどこにいても、どんな状況でも、すべての子どもたちは、これらの権利が守られるよう求めることができます。
そして、これらのことを誰かができないようにしてはいけません。
子どもの権利は誰が守るの? どうしたら子どもの権利が実現されるの?
子どもの権利は、「やさしさ」や「思いやり」といった個人のものさしによって実現されるものではなく、どんな環境で生きる子どもであっても、実現されるものでなければなりません。
そのためには、「子どもの権利条約を守ります」と宣言した各国の政府が役割を果たすことがとても重要です。
また、地域社会や学校、それぞれの家庭やさまざまな機関や施設、そしてあなたを含む子どもたち自身も重要な役割を果たします。
下の図を見てみてください。
子どもの権利を実現していくための、重要な登場人物です。
![](images/a11_1.png)
国や各地域の自治体の人々には、子どもの権利条約を守り、実現していく義務があります。
子どもの権利が守られる社会のために、国や自治体が学校や医療サービスなど、子どもたちを守るための仕組みや制度を整えていくことが必要です。
2023年4月に発足した国の機関「こども家庭庁」も、国の仕組みや制度をつくるために重要な役割を果たします。
https://www.cfa.go.jp/top/(外部サイト)
保護者・養育者も、子どもの権利について知り、毎日の生活の中で子どもたちの考えや意見を聴いたり、子どもたちの成長をサポートしていく必要があります。
そして、子どもであるあなた自身が、権利について知り、意見を伝えたり、問題解決のための力を身につけていったりすることも大切です。「権利について知らない」、「権利が守られていないように思うけど、どうしたらいいかわからない」という場合は、みなさんが、意見を伝えたり、問題解決をしたりできるよう、私たちのような団体もサポートします!
国や自治体、保護者・養育者、そしてあなた自身によって、子どもの権利が守られ、あなたや友だちが、自分らしく、安心して豊かに、自分を大切な存在とみとめ、今を生きていくことができるのです。
「子どもの権利」を学ぶとわがままになる?
「子どもの権利」を知ってもらうための活動を行っていると、「子どもに権利を教えると、子どもがわがままにならないか」と言われることがあります。
あなたが権利を知り、差別されないことや、命を大切にされること、意見を聴かれたり、意見を言ったりできるよう求めることは、自分の権利を守ることであり、わがままなことではありません。
また、自分がこうしたい!と思うことを大切にすること、自分らしく生きていくことも、子どもの権利条約で保障されています。
大切なことは、自分だけに権利があるのではなく、「すべての子ども」に権利があり、おとなたちにも権利があるということを知ることです。
もし、あなたが自分の権利が大切にされていると感じられたら、自分とは異なる人々の権利も大切だと思えるようになるのではないでしょうか。
子どもの権利を学ぶことは、自分、そして自分以外の人たちの視点や考えを大切にすることにつながります。