こどものミカタ

子どもの視点を学ぶ

このページのQ&Aは、セーブ・ザ・チルドレンが開催した「子どもとの向き合い方を考えるオンラインセミナー」にて参加者から出された質問に対する、専門家の回答をまとめたものです。子育中の方に共通する悩みへの回答という目的のため、質問内容を一部編集の上で掲載しています。

子育てQ&A

高祖常子さんの回答

2歳半の娘がいます。子どもが言うことを聞かないと揺さぶったり大声を出したりしてしまいます。正直言うと蹴りたくなることもあります。このままエスカレートして子どもを虐待してしまうのではないかと心配です。

このように質問くださったこと、そしてご自身の行動を客観的に意識して、改善したいと思っていらっしゃることが、スタートラインです。イライラしたときに反射的にならずに、怒りのピークが収まる6秒間待つというポイントはぜひ押さえていただきたいです。ほかにも、こちらのページのイライラする気持ちとうまくつきあうヒント方をダウンロードして目に付く場所に張っていただくこともできると思います。

「今日もダメだった」「今日もできなかった」とネガティブになるより、5回のうち2回は深呼吸できた!というように、できた行為をポジティブに心がけることで、少しずつイライラの対処ができるようになってくると思います。蹴りたくなってしまうことが正直ある、とおっしゃっていますが、思っただけでそれを行為に移していないということはすごく大事です。そして、今から「揺さぶらない、蹴らない、大声で怒鳴りつけない」と決めましょう。

2歳半は手がかかる時期ではあるのですが、「いやだ」という感情を持てること、言えることはすごく大事なことです。それを受け止められないときは、親自身がいっぱいいっぱいになっている現状があるかもしれません。そういったときは、まずはその親自身の状況を、どうしたら改善できるかという方向で考えていただけたらと思います。

2歳、3歳のイヤイヤ期の子どもに、どう関われば良いでしょうか。

「嫌(いや)」って言われると、困りますよね。でも、「嫌」というのも子どもの大事な気持ちです。「そうか、嫌なんだね」と受け止めることが大事です。そもそも「嫌だ」という理由が、「もっと家で遊びたい」というようなことかもしれません。子どもに嫌の理由を聞いてみると良いですね。

イヤイヤ期は、自分が中心にいる時期。指示されたことに対して、なんでも「嫌だ」と言ってみたくなる頃でもあります。例えば「靴を履かない」ときの対応方法としては、「靴を履きなさい」は指示型なので、「靴を履くよ。どっちの靴を履く?」など選択肢にしてみるのも一案です。人間には選択欲求があるので、選択肢を示すと選びたくなるという心理になります。

あとは、そのときの状況や子どもの成長、気質などにもよりますが「気持ちの切り替えに時間がかかる」子もいるということを覚えておきましょう。「嫌だ!」と言ってずっと泣き止まないこともあるかもしれませんが、「やりたい、でもダメなんだ」と葛藤している時間と考え、見守るこころのゆとりを持ちましょう。

子どもに嫌だと言われたとき、なんで嫌なのか聞くと、「嫌だから」と言われます。理由が分からないとき、言ってくれないときはどうしたら良いのでしょうか。

「なぜ嫌なのか聞いている」というのは良いですね。ただし、「嫌」の理由や気持ちを話す(言語化する)ことは年齢や、そのときの気持ちにもよって意外と難しかったりします。「嫌だから」と言われたら困りますが、「そうか、嫌なんだね」と共感し、「〇〇で嫌だったのかな?」と例を出して問いかけてみると、「そうじゃないんだ」などと否定や肯定はしてくれるかもしれません。これは理由を説明してもらう「オープンクエスチョン」ではなく、イエスかノーで答えやすくする「クローズドクエスチョン」を使ってみるということです。

しつこく聞く必要はありませんが、このように気持ちを確認していく作業をすると、「あ、私はこれで(が)嫌だったんだ」と自分の気持ちに気づいたり、言葉にできるきっかけになると思います。また、気持ちが整理されないと言葉にしにくい場合もあります。「なんで嫌だったか話したくなったら、教えてね」などと子どもが言葉にして話しやすいタイミングに任せることも大切です。

就寝前、もっと遊びたい子どもと話し合って時計の針が5になったら、遊ぶのをやめて歯磨きして寝ようね、と言ってもなかなかいうことを聞かないときがあります。そういう場合はどうしたら良いのでしょう。うちは結局おばけが来るよと言ったり、夫や私が強く叱ることもよくあります。

お子さんと相談して決めているのは良いですね。言うことを聞かないときがあっても、言うことを聞いてくれたら、「今日は約束通りに寝られるね」と肯定的な声かけをしてみると、良い行動が増えていくと思います。脅したり、叱りつけたりしては、かえって目が覚めてしまうかもしれません。

寝る前の遊び方は、どのようなものでしょうか。寝付く前にすること、例えば「夕食を食べ、入浴をして、少しずつ電気も暗くして、絵本を読む」など、徐々に静的な動きにし、それをパターン化していくと子ども自身の体やこころもだんだん眠りにつく準備を整えていきます。これは「入眠儀式」とも言います。

まずは、寝る前の流れや環境を見直してみましょう。電気が煌々(こうこう)とついて、テレビもついている、体を使ったおもちゃ遊びをしているなどだと、なかなか寝付くことができません。あとは、日中に体を動かしているか、お昼寝が長すぎないか、朝決まった時間に起きているかなど、改めて1日の生活リズムを見直してみると良いかもしれません。

6歳の息子は、自分の気持ちを抑えきれなくて、足をどんどんならしたり、ドアや扉をたたいたり、ものにあたったりとかんしゃくを起こします。そのような場合はどのように声掛けをしたらよいでしょうか。

かんしゃくは自分の気持ちの切り替えに、子ども自身が葛藤している時間です。子どもによってかんしゃくが強い子と、気持ちの切り替えが早い子もいます。それも個性ですから、どちらが良いということではありません。

かんしゃく時は、お子さんが自分の気持ちと闘っている時間です。親や友だちをたたくなど、誰かを傷つけるようなことがなければ、例えば、クッションに叫ぶ、クッションをたたくなど、お子さんが落ち着いている時間に、親としても許せる範囲で気持ちの爆発をどのように発散するのかを相談してみましょう。お子さんは足をどんどんならす、ドアや扉をたたくことで発散しているのだと思いますが、その音で親自身がとてもつらくなるなら、それもお子さんに伝えて、(親も許せる範囲の)ほかの方法がないか相談してみると良いですね。

「わーっとなったら、深呼吸してみよう」など、「あなたのミカタ」ページにあるようなクールダウンの方法も参考にしてみましょう。あまりにもかんしゃくが多く激しい場合は、お子さんもですが、親もつらいので、小児科医などにも相談してみましょう。日本小児科医会のサイト(外部サイト)では、地域の「子どもの心相談医」を検索することができます。

4歳の子どもが話を聞いてくれません。話を聴いてもらえるようにするにはどうしたら良いでしょうか?

どういう話かにもよりますが、伝える言葉のわかりやすさという問題もあります。「こうして、こうして、こうして、これはダメ」などたくさん一度に伝えると、どれもこれも守るのは難しいものです。「ここでは○○しよう」と短く肯定文で伝えましょう。

例えば、あぶない道で子どもが走り出したら「走らないで!」と言いたくなりますが、「歩いて!」と肯定文で声掛けをしたり、事前に「ここでは手をつないでいくよ」と練習したりしてから、その道を歩いてみると良いですね。そして、できたときは「危ない道だから、ちゃんと手をつなげて歩けて良かったね」とぜひ、認める声掛けをすると、そのような行動が増えてくると思います。

子どもをたたいてしまったあと、謝りづらいのですが、どのように謝ったらいいですか。

子どもを「たたかない」と決めたあとでも、ついたたいてしまったときは、まず子どもに「ごめんね。もう、たたかないって決めたよ」と伝えると良いですね。子どもは、また、たたかれるかもしれないと思って、恐怖や緊張を常に感じているかもしれません。「もう、たたかないって決めたよ」と言うことで、子どもは安心します。

子どもに「ごめんね。さっきは、こういう理由で、ママ(パパ)はいっぱいいっぱいだったんだ」と理由をちゃんと説明することも大事です。子どもはやさしいので「わかったよ」と許してくれるかもしれません。そういったやりとりも含めて、親子の関係性がつくられていきます。

また、親も間違うことがありますから、謝る姿勢を見せることもとても大事です。このようなやりとりから学び、子どもも子ども同士や大人との関係性のなかで、自分から謝るというコミュニケーションの方法も使えるようになることでしょう。

子どもとの関わりで「私はこうしてほしい」といったI(アイ)メッセージの方が良いと聞きます。一方で相手を思いやり、相手の真意を理解するために発言するYOU(ユー)メッセージも大事ではないでしょうか。

YOUメッセージも大事です。親は「私はこれからお出かけしたいんだ。だからそろそろお片付けしてくれない?」というIメッセージを使いつつ、一方、子どもの「嫌だ。ぼくはまだ絵を描いていたい。終わるまで行きたくない」という気持ちに対して、「あなたは、こうしたかったんだね」というのはYOUメッセージになります。うまくIメッセージとYOUメッセージ両方を使っていくのが良いと思います。

一方、子ども自身に対して、子ども自身の気持ちをIメッセージとして受け止めず、「友だちがこうしたいのに、なぜ君は気持ちがわからないの?」とYOUメッセージのみを押し付けるような関わりをしてしまっていないかを確認することも大事ですね。

そして、親自身も自分は置いておいて「あなたはこう思うのね」、「あなたはそうしたいのね」とすべて受け取ってしまうYOUメッセージばかりだとつらくなってしまいます。親だから子どもの気持ちをすべて引き受けなければならないというわけではなく、ママはこう、パパはこう、君はこうだよねという折り合いをつけて、それぞれの気持ちが大事にされるにはどうすることがベストな選択なのかを探していくことが大切です。自分はこう思う、というのはみんなそれぞれ違います。親が、「あなたはこうよね」と言ったとしても、子どもは「いや、違うんだよ」と言うことがあるかもしれません。子どもと親、それぞれの気持ちを、確認することがとても大事です。

ただし、乳児の頃は、そういった会話はできません。そうしたとき「オムツが汚れて嫌だったんだね。気分が良くなかったんだね」とYOUメッセージで言葉にして伝えることが必要です。子どもが話をできるようになったら、それぞれのIメッセージを大切にして会話していかれると良いですね。

パートナーが忙しく、子育てへの協力が難しい状況が続いています。一人で子育てをしていると自分に余裕がなくなってしまいます。どうしたら良いでしょうか。

パートナーさんが忙しいとのことですが、子どもの成長は早いです。子どもが小さい頃は、特に大事な時期。そんな時間はあとから取り戻せるものではなく、パートナーが一緒に過ごせていないのは、とてももったいないですね。せっかく親子、家族になったのです。家族でいかに楽しく過ごせるかを考えていくことも大切ではないでしょうか。そうした方向けの講座も最近増えてきています。場合によっては働き方を少し変えてみて家族の時間を確保するなど、一緒に子育てを考えるきっかけにしてもらえると良いのではないでしょうか。

質問者の方は、パートナーさんに協力してほしくても「言っても無駄だ」、「相手の負担になってしまう」と諦めてしまっていないでしょうか。でも、人間、言わないと伝わらないし、わかってもらえません。なので「もっと一緒に子育てしてほしい」、「朝は時間がなくてイライラしちゃうから、子どもの着替えをしてくれないかな」、「もっとみんなで笑顔で過ごしたいから、週に1回は家族でごはんを食べたい。早く帰れないかな」などと、気持ちと具体的な提案を伝えてみましょう。

そうしたことを言うと、パートナーさんは「え、そんなこと言ったって無理だよ」と反応するかもしれません。また、場合によっては、イラっとした反応をするかもしれません。でも、伝えた事実は確実にこころに残ります。あとから、なるべくそうしようかな、どうしたら早く帰れるだろうと仕事の工夫をしてくれるかもしれません。パートナーさんが、こちらがしてほしい行動をしたときに、「一緒に食べるご飯は美味しいね」、「子どもが一緒にお風呂に入れて楽しそうだったよ」と言葉にして伝えながら、良かったことを増やしていける家族関係をつくっていきましょう。

余裕が無くてつい子どもを怒鳴ったり、たたいたりしてしまうことがあり反省の日々です。子どもも「怒らないでー」と泣いていて、胸が張り裂けそうですが止まりません。

質問者の方は、とても頑張ってらっしゃると思います。怒鳴ったりたたいてしまったあと、後悔している人が9割というデータも出ています(2021年厚生労働省*)。怒鳴らない、たたかない、と決めることが大切です。決めることで回数は減っていくと思います。

そして時間があるときに、つい怒鳴りつけたくなる、たたきたくなるという場面を客観的に考えてみましょう。怒鳴ったりたたいている親自身も後悔しているし、子どもも嫌な気持ちになっています。怒鳴らないたたかないためにどうしたら良いのかを考え、子どもと相談しましょう。今までお伝えしたIメッセージを使って伝えたり、例えば、危ないものを触ってしまうなら、見えないところや手の届かないところに片づけるなど、環境を整えて困った問題が起きないように回避する方法もあります。

余裕がない自分のケアも大事です。時間を取るにはどうしたら良いか、自分がやっている家事を減らすにはどうしたら良いのかをパートナーとも相談して考え、工夫してみましょう。パートナーと協力するのはもちろん、食洗器や調理家電を導入したり、ファミリーサポートなど外部の手を借りたりするという方法もあります。

*体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査
(2021, 令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 )

よく、子どもがパートナーや義理の親から頭ごなしに怒られることがあります。「子どもは大人に従うべきもの」という固定観念がありそうです。こうした代々受け継がれているその家の考え方はどのように変えれば良いのでしょうか。

自分が育ってきた環境や、自分が親にされてきたことは、それを肯定しながら我が子などにもしているという場合も多いです。ただし、子どもをたたいたり、怒鳴ったりすることが脳の成長発達に良くないということが近年の研究でよくわかってきました。厚生労働省の「愛の鞭(ムチ)ゼロ作戦」のなかでも、海外の研究で体罰が子どもの問題行動をより大きくしてしまうといった調査結果も紹介されています。以前は、わかっていなかったけれど、最近、こういうことがわかってきているよ、と裏付け(科学的根拠)を見せると理解してくれる方もいます。ぜひ伝えていただけると良いと思います。

また、パートナーと一緒に受講できる講座やパパなどを対象とした講座、孫育て講座などもあります。調べてぜひ活用してみていただけたらと思います。家族から言われるよりも、第三者の講師から言われると受け入れやすい場合も多いです。

秋山邦久さんの回答

子どもに話が伝わらないとき、どのように対応すれば良いのでしょうか。

子どもにいくら注意をしても言葉が子ども自身に伝わらないと思うとき、こちらの文脈と子どもの文脈が違っていることがあります。文脈とは、相手とコミュニケーションするときに言葉で伝える内容以外の「いつ、どこで、誰と、誰が、どのように」といった背景のことを指します。言葉が伝わらない、むしろ火に油を注いでいるなと思うときは、文脈がずれているということがあります。そのときは自分の文脈を押し付けず、一度距離を取って子どもを観察することに切り替えてみると良いかもしれません。

例えば子どもが、「●●ちゃんなんか死んじゃえば良いのに!」と言ったとき、親の文脈から「どうしてそんなこと言うの!友だちに死んじゃえ、なんて言ってはいけません」と伝えても、言葉が子どもに伝わらないことがあります。そういうときは、「どうして、そういう風に思ったの?」と聞いてみる。そうしたら、子どもが「●●ちゃんとケンカしちゃったんだもん」と言ったりします。「あ、『くやしい!』っていう気持ちを『死んじゃえ』という言葉で言ってたんだ」という文脈が見えてきて、それに合わせていくことができるかもしれません。

そして、子どもの観察の仕方としては、子どもの文脈から物事がどのように見えているのかをじっくり見ることからはじめてみてください。「子どもの価値観ではどのように捉えられているのだろうか」ということを興味を持って観察してみる。判断や押し付けをせずに「どうして、そう感じたの?」、「どうして、そう思うの?」と言った問いかけをするとスムーズにいくと思います。

引きこもりの子どもがいます。学校制度は時間的制約があり、私が生きている間に社会的自立が間に合わないと思うと焦ります。いつまで観察していたら良いのでしょうか。ちなみにひとり親です。

それぞれの事例によって具体的な対応は異なりますので、まずは専門機関への相談となります。ただ、「見守りましょう、子どもさんを信じて、時が解決しますよ」などのお題目だけを繰り返す相談機関は解決につながりません。本人と家族の安全を確保しながら直接本人に働きかけをしてくれるところや、親に具体的な対応の仕方を示して、一緒に行動してくれるところに相談することが必要です。

引きこもりの方を自立支援につなげた一例ですが、ご本人に対し引きこもりの問題として関わると拒否されますが、今後の家族の経済的な問題として「親にもしものことがあった場合、どのように生活費を捻出していくか」といったテーマにすると、ご本人が話し合いに参加するようになったということです。このように、問題の立て方を工夫し、ご本人に話し合いに参加してもらうことを糸口にして、自立支援につなげた事例は多くあります。ご参考にしてみてください。

子どもにちょっと注意をすると、全否定としてとらえられることが多いです。子どもの受け止め方が、基本ネガティブな場合、どう注意したらいいか、アドバイスをいただけたらうれしいです。

その子の生まれながらの気質によっては、ものごとをルールとして捉え、「そうあるべき」と強くこだわり、それに合わないことはすべて否定してしまうタイプの子どもがいます。この場合、親は「でも、しかし、だけど」という逆説的な(言葉を否定的に受ける)言葉を使わず、「なるほど、そうなんだね」といった順説(受け止め言葉)を使って話をするとスムーズにいくことがあります。

例えば「勉強なんてやっても意味がない!」などと子どもが言った場合、「でも、勉強はこれからの生活に、とっても必要だよ」というと、「でも」に反応してパニックになったり反抗してきたりします。そこで、「なるほど、意味ないよね」と順説で受けたあと、「じゃ、どうしようか?」と聞いてあげると「少しだけやる」などと反応してくることがあります。

小4の娘と私の性格がよく似ているので、昔の自分を見ているようで、ついつい感情的に話してしまうことがあります。もっと穏やかに娘の話を受け止められるようになるにはどうすれば良いか、アドバイスがありましたらお願いします。

自分と似た子どもの困ったところは、ほかよりも強く意識されてしまい、親のイライラのもとになることが多いようです。

あなた自身が幼い頃に我が子と同じように(大人から)課題と思われていたことは、今は克服して何とかできていたりしませんか。だとすれば、今我が子に対し困ったと感じる部分も将来は自分のように何とかできていけるだろうなと、少し先の未来を見てみると、あなた自身も落ち着くことができるかもしれません。親は、子どもの発達を今という点で見て悩んだりイライラしたりされやすいのですが、発達は過去・現在・未来の線で捉えることが大切になります。

子どもが物事に対し慎重で、「やってみよう」というスイッチが入らず、何もしないまま時間ばかりが過ぎていくことが多いです。どうしたら、上手く勇気づけをしてあげられるでしょうか。

子どもがのんびり(Beingタイプ*)のようで、なかなか動かないだけかもしれませんが、親から見ると臆病な感じに見えてしまうこともあるようです。

子どもに何か行動を起こさせたい、身につけてもらいたいときには、①して見せて、②言って聞かせて、③させてみて、④3つ注意して、⑤5つほめ、という子育ての極意を使うとうまくいく場合があります。

多くの親は①を飛ばして②の「やりなさい、こうしなさい」の言葉で言って聞かせて子どもを動かそうとしますが、まずは親が①でモデルを示す(本気で、楽しそうに遊んでみる・勉強してみる)と、子どもも真似して動き出します。動き出したら上手にできなくても⑤ほめをたくさん与えてあげてください。
*子どもの気質のタイプ別の説明はこちら

本人の心理状況や発達段階から「今は理解できない」というタイミングがあるかと思いますが、その時は、注意することは不要なのでしょうか。それとも、「いけないことである」ということは本人がわからないにしても伝え続けることが必要なのでしょうか。

発達段階によっては、親の意図していることが理解できないこともあります。例えば、乳児がおもちゃを散らかしてしまった時に「なんで散らかすの!」などと言っても意味を理解できません。そのため、大人と同じ会話や親の声かけで子どもの行動を統制しようとしないことが大事です。

一方、声かけはその意味が理解できない発達段階であっても、たくさんしてあげてください。つまり、言葉で子どもを注意するのではなくその場を言葉で表現することで、子どもの中に言葉がどんどん溜まっていくからです。その場合の言葉がけは「なんで散らかすの!」ではなく「散らかっちゃたね」となります。

体は大人に成長していても、こころが未熟なままの状態の我が子に対しては、これからどのようにしたら良いでしょうか。

子どもの年齢によって対応が異なりますが、ここでは、一般的な対応策をお話しします。子どもが、思春期以降に、こころが発達できていない未熟な状態のままだと感じたとき、家族で何とかしようとしないことが大前提です。世間一般的にここが間違ってしまっていることが多く、何でも「家族や親が『愛情』を注げば大丈夫」という方式の助言が見られます。そのためうまくいかないと、結局は家族が悪いとなってしまい、さらに家族が追い込まれてしまいます。

本当の「愛情」とは、知識に裏打ちされた適切な関わりのことなのです。子どもとの歯車が少しずれて、現在、子どものこころが未熟だと感じたなら、その親の関わりをいくら続けても解決はしません。また、親はそれ以外の関わり方を知識として持っていないからでもあります。家族以外の支援者を見つけましょう。これも一昔前は、部活の先生や近所のおじさん・おばさん、職場の親方などがその役割を担っていたのですが、現代では少なくなっていますね。

注意をするときは、言葉の選び方も大切だと感じています。どのような言葉で制止するのが良いのでしょうか。

適切な「注意」についてですが、命に関わることやけがをする恐れがあることを子どもがしているときは、①ことばで一発(短く)「やめなさい」と行動を制することが大切です。そして、子どもが落ち着いた時に、「ケンカはいいけど、刃物は危ないからダメだよ」など、②静かに理由を話し、諭すように伝えます。

一方で、命やけがに関わるようなことでなければ③言葉で注意していきます。「(走りだそうとする子どもに)ここでは歩くよ」、「今は静かにするよ」といった伝え方をします。①では子どもの行動を制するよう伝えますが、③は言葉で注意をして子どもに任せます。そして、行動が変わったらほめることが大切です。もし、いつものトーンの言葉の注意で聞かなければ2回目は少し強めに注意をします。

それでも聞かないときは、④反省を促す注意の仕方をします。あごを上げないように子どもの目をじっと見てポーカーフェイスで、深呼吸を2回~3回してから、「なぜ、言うことをきけない?そういう子を私は許しません」と伝えます。それから、また一度呼吸をしてから、「わかりましたね」という。信頼関係がある親からそういった伝え方をされると、子どもにとってはこれが一番強い注意の仕方になります。

また、子どもが遊んでいて物を壊してしまったり、遊んで散らかしてしまった時に、「元に戻しなさい」、「一緒に片付けようね」といった⑤責任を取らせる促し方もあります。

ここで最も大切なことは、注意して子どもが謝ってきたり適切な行動ができた時には、必ず褒めてあげてください。つまり、注意と褒めは一対で最も効果を発揮します。

このように、その子どもの行動に対する注意の仕方にけじめをつけることで、子どもの行動にけじめがつきます。行動の重大さが違うのに、同じように注意をしていると、子どもの中で行動が同列になってしまいます。ぜひこのことを、スキルとして知っておいてほしいと思います。

子どものほめ方について詳しく教えてください。

適切な「ほめ方」としては、①適切なスキンシップとして、肩をトントンする、背中をさする、頭をなでるなどがあります。ただし、他人はしてはいけません。あと、親であってもプライベートゾーンには触れないことが大切です。

そして、②質問の形で「ほめる」。「これどうやったの?お父さんに教えて」というように、教えてもらうというスタンスで質問すると子どもは喜んで教えてくれることがあります。さらに、強いほめ方になると③プロセスをほめることがあります。「頑張ったの、知っているよ」や「努力したんだね」と伝えます。

さらに、④うわさでほめることも効果的です。つまり、その場にいない人を使ってほめるのです。子ども、親、その場にいない人の魔法の三角形をつくります。例えば、その場にいない「おばあちゃんが聞いたら喜ぶね」、「●●ちゃんが喜んでたよ」などがあります。さらに強いほめ方は、⑤感動を「3s+a」で伝えることです。3sは「さすが」・「素晴らしい」・「すごいね」の3sです。ただし、いっぺんに「さすが、素晴らしい、すごいね!」とは言わないでください。「+a」というのは、強く伝えるのではなく感動をさりげなく伝えるような言い方をすることです。一番のほめは、⑥感謝を伝えるということです。特に「ありがとう」は最高のほめになります。

ほめ方や注意の仕方を含め、自分の子育ての仕方で反省点や今日は失敗したと思うことがあるのですが、その後からでもできる事はありますか。失敗した後でも改善することはできますか。

子育てはいつの段階からでもやり直すことが可能です。たとえ大人になってからでも、カウンセリングなどを通して、もう一度やり直しができます。

また、日常的な子育てでは、その時その瞬間のかかわりがちょっとうまくなかったと感じたり反省したりするよりも、一日の流れの中で±0を意識すると良いかもしれません。さっきは感情的に怒ってしまったと思ったら、その後に少しでも落ち着いていたら少し大げさに褒めてみることで±0に戻ります。

今日は少し注意することが多かった、あるいは感情的な怒りをぶつけちゃったなと反省したときに、それを一気にリセットしてさらにプラスを増やす魔法をこっそり教えます。それは、お休み前にギュッと子どもを抱きしめて「可愛い!」という呪文を優しく口に出すことです。

ただ、年齢の段階によっては家族だけではなく社会の支援を受けながら行うことも必要です。大切なことは、「この段階の発達課題をうちの子はクリアできていないかな」と気づくこと、そして対応し直すことです。具体的対応が必要な場合は、どうぞ専門機関にご相談ください。

現在母子家庭で3歳の子どもを育てています。子どもの発達を考える際に気を付けて関わったほうが良い点などあれば教えていただきたいです

日々の子育て、おつかれさまです。3歳の子どもは、ちょうどしつけによって社会性を身につけさせる時期のため、身辺自立などのしつけをしっかり行いましょう。しかし、本人はいうことを聞かず親とぶつかり合うことも多くなります。これが第1次反抗期ですね。反抗期は自我が育つためにとても大切なので、親としてはイライラしてしまうこともありますが、「ちゃんと育っているのだな」と捉えて楽しんでみましょう。ここをうまく乗り越えると、思春期の第2次反抗期の対応も比較的楽になります。

自立を促すために「自分のことは自分でやる」ということが大事だと考えています。子どもが嫌がっても子どもに伝え続けていくのが良いのでしょうか。

私は、保護者や学校の先生方に「ドイツ語でどんぐりコロコロ」を歌ってくださいとお願いしてみることがあります。すると「ドイツは習ったことがないから歌えません」という方が大部分です。

そこで、「がんばればドイツ語で歌えるでしょ」、「自分のことなのだから、ちゃんとドイツ語で歌いなさい」とわざとお願いしてみます。最終的に「身につけていないことは、どんなに『がんばれ』『やりなさい』といってもできないのだとお伝えします。

つまり、まだこの年齢では親が期待することを身につけていない段階のため、「自分のことは自分でやる」ことを言葉で伝えるだけではなく、まずは親が100%お手伝いして「できる」ようにしてあげることが大切だということをお話しています。

ついつい目の前の子どもの言動にイライラしてしまいます。将来を見据えた子育てはどのようにすれば良いのでしょうか。

親や学校の先生は、その時その時で子どもを見てイライラしてしまいますが、「この子、将来こうなるよね」と考えると、案外未来が楽しく見えてきます。将来の姿のモデルを考えると良いと思います。伝記などを読むのも良いと思います。

例えば、エジソンの話を読むと、小さい時大変だったなぁと思いますよね。そういったのを読むと「あ、うちの子も将来は博士になるかもしれない」など思ったりできますよね。そういう風に見ていく、未来を考えていくことで上手くいくかもしれません。

思春期に入り反抗することが増えてきました。どのように接したらいいのか困っています。

「友だちのように仲がいいの」と言う親子が時々いますが、反抗期を経ずにいた場合、後から問題が起きてしまうことも多くあります。子どもは、きちんと発達段階の階段を上っていくことで成長につながっていきます。親が、成長を困ったことと捉えないようにして「あ、反抗期だ。どう関わっていったら良いかな?」と工夫していくことがとても大事になっていきます。ぜひ楽しい工夫をしていただけたらと思います。「この手を使ってみたらだめだった。じゃ今度はこの手を使ったらどうかな」といったように、楽しむこと。そのためにはこころの余裕も必要になってきます。

また、思春期は生物学的な変化があります。その一つに、異性に対して臭いに関することを言うこともあります。女の子が「お母さん、お父さんの洗濯物と一緒に洗わないで」と言います。そんな時どう関われば良いのか困ることもあると思います。一つは、ユーモアを使っていなしていくことです。「お父さん、近づかないで加齢臭がするから」と言われたら、「おかしいな、昼間はラーメンだったのに」など、ちょっとユーモアで返していくことが大事になります。

ただ、子どもが何か相談しようとしていたり、何か様子が違うといった時には、きちんと対応してください。例えば、いつもたくさん食べる子が少ししか食べずにため息をついていれば親はわかります。でも、良い変化があったときも気をつけてほしいと思います。良い変化が続いていても、それが逆に自殺をこころに決めた結果の場合もあるのです。我々大人は、つい子どもの良い変化については安心しきって気に留めずにいたりします。すると、自殺などの深刻な問題を抱えていることを見落としてしまうことにもつながる恐れがあります。いつもと違う様子があれば、良い変化も悪い変化も声をかけていくことで、私はあなたを気にしているよ、と伝えることになります。

回答者について

高祖 常子(こうそ・ときこ)

所属:
認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事
プロフィール:

子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント。資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019-2020)でガイドライン策定委員など、国や行政の委員を歴任。子育て支援や共働き支援など子育てと働き方などを中心とした編集・執筆や、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。3児の母。

秋山 邦久(あきやま・くにひさ)

現職:
常磐大学人間科学部心理学科 教授 (公認心理師、臨床心理士)
プロフィール:

大阪市立大学大学院修了後、秋田県職員として児童相談所や福祉事務所の心理判定員を16年務めた後、文教大学大学院、桜美林大学大学院、弘前大学大学院、常磐大学大学院などで臨床心理士の養成に携わる。専門は家族心理学や児童福祉臨床で、大学での講義のほか、全国の児童相談所や病院、教育センター、越谷心理支援センターなどで心理支援やカウンセリングを行っている。