お母さんにやさしい国ランキング2014:世界の母親たちのケースストーリー(2014.05.09)

今年で15年目になるセーブ・ザ・チルドレンの「母の日レポート」では、母親にとって最も厳しい国としてランキングされることの多い国々において、人道危機が妊産婦と乳幼児の生存にどのような影響を与えるかを分析しています。

ランキング1位のフィンランドと最下位のソマリアの差は衝撃的で、例えばフィンランドでは妊産婦の死亡リスクは極めて低く、女性が生涯で妊娠出産に際して死亡するリスクは12,000人中1人以下であるのに対し、ソマリアでは16人に1人の妊産婦が死亡するリスクを抱えています。ほぼすべてのフィンランドの子どもたちが健康や教育を享受する一方、ソマリアの子どもたちの15%は5歳の誕生日を迎えることなく亡くなってしまいます。教育面では、平均的なフィンランドの子どもたちの就学年数が17年であるのに対し、ソマリアの子どもたちが公的教育を受ける年数は平均して2.5年です。ソマリは世界的にも最も貧しい国の一つであり、フィンランドの国富はソマリアの350倍、女性議員の割合はフィンランドが43%、ソマリアは14%となっています。(178か国の全ランキングはこちら)

お母さんにやさしい国ランキング1位
フィンランドのお母さん


写真の赤ちゃんは、ヘルシンキの産婦人科病院で2013年の3月に産まれた生後3週間の女の子です。赤ちゃんは妊娠33週目に産まれた早期出生児で、1,170グラムという低体重の未熟児だったため、生後1週間にわたり小児科病院で集中治療が施され、また産婦人科病院に戻されました。

赤ちゃんのお母さんは、病院のケアにとても満足しています。「フィンランドに産まれることは、恵まれていると思います。産婦人科病院でこれから一週間ほど経過を見て、体温が安定してミルクをちゃんと飲めるようになれば、娘を家に連れて帰ることができます。先生は娘の体重が1,800グラム程度になれば退院できるだろうと言いますが、退院の条件は体重だけでなく、他の要素も総合的に診て判断してくれます。」

お母さんにやさしい国ランキング177位
コンゴ民主共和国のお母さん


20歳のSoleilさんは二人の子どもを持つお母さん。二人目の子は、武装勢力と政府軍との間で紛争が勃発したために、避難する道中での出産でした。二日がかりの出産中は雨期の大雨が降っていたため、赤ちゃんの体をビニール袋でカバーしなければなりませんでした。夫とは避難中にはぐれてしまい、生存は未だ不明です。

「避難する途中で武装した男たちに誘拐され、家族と離ればなれになってしまった人をたくさん知っています。私が訴えたいのは、女性たちが性的暴力の犠牲になっていることです。軍服を着て武器を持った男たちや、時には一般市民が危害を加えてくるのです。状況はどんどん酷くなっていて、市場に行くことすらできません。

私たちの生活は悲惨を極めています。服はこの一着だけなので、洗濯をする時には人から服を借りなければなりません。一番困っているのは調理器具がないこと。本当に何も持っていないのです。」

セーブ・ザ・チルドレンは、コンゴ民主共和国の武力紛争の影響を大きく受けた地域の村、町、コミュニティで、子どもの保護、啓発活動、生計支援、ヘルスケアプログラムを実施しています。子どもの保護事業の中で、性的暴行を受けた被害者に対する心身面のサポート、被害者に対する偏見をなくすための啓発活動も行っています。

お母さんにやさしい国ランキング149位
エチオピアのお母さん


エチオピアは2000年から妊産婦の死亡を1/3まで減らし、アフリカ大陸で最も成果をあげた国となりました。

妊娠9カ月のTeguadaさんは健康指導員のアドバイスを受け、医療施設で出産することや赤ちゃんに初乳を飲ませ、母乳で育てることの重要性を理解しています。

「私には14歳の長男と9歳の次女がいます。二人の時は出産直後にバターを与え、母乳を飲ませたのは生後3日が過ぎてからでした。それが慣習だったからです。今は健康指導員のアドバイスを受けて、赤ちゃんに初乳を飲ませるつもりです。それが赤ちゃんの健康にいいと教えてもらいました。妊娠4カ月が過ぎてからは定期健診にも行っています。」

エチオピア政府は保健普及員(Health Extension Worker)システムを導入し、訓練を受けたヘルスワーカーをコミュニティに派遣しています。保健普及員は政府資金で運営されているカレッジで1年間の訓練を受けた後、地方の遠隔地に派遣されるのです。セーブ・ザ・チルドレンはエチオピア保健省と協働で、保健員や助産師の訓練を実施しています。

お母さんにやさしい国ランキング105位
フィリピンのお母さん



2013年にフィリピン中部を横断して甚大な被害を出した台風ハイエンのような大きな自然災害では、基幹インフラが破壊され、公共サービスが停止した際の母親たちへの支援の重要性が強調されました。台風ハイエンのケースでは、最初の緊急段階が過ぎた後、各公共施設が復旧し、支援物資の配給も迅速に行われたため、 自然災害に対しては備えと防災の取り組みが被害の軽減につながることがわかりました。

Maraさん(22歳)は生後5週間の赤ちゃんと祖父と3人で、パナイ島で暮らしています。赤ちゃんの父親は、Maraさんの妊娠を知ると姿を消してしまいました。赤ちゃんは台風ハイエンがパナイ島を襲った3週間後に早産で生まれました。3人は台風によって破壊された家の片隅で寝起きしています。

「家を建て直すための資材を買うお金がありません。でも、寝る場所も、雨露をしのげる屋根もあるので何とかなっています。いろいろと大変なことはあったけれど、娘がいてくれて幸せです。私は野菜をたくさん食べて、娘に母乳を与えています。今の望みは以前のようにちゃんとした家に暮らすことです。洋服も日用品も何もかも不足しているけれど、私は快適に生活できています。ただ、娘が病気になるのを心配しています。お金がないので病院に連れて行ってあげることができないからです。」

セーブ・ザ・チルドレンはフィリピン台風被災地で巡回診療を実施し、基礎的な医療サービスや妊産婦に対する母乳育児の技術的支援や啓発活動を行っています。

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