【幼稚園プロジェクト(19)】事業で開発した2つの新しい取り組みを、ウランバートル市に引き継ぎました (2014.06.26)

日本の皆様、モンゴルの山々は、とうとう一面緑になりました。そして、シソ科やキク科の仲間の紫や黄色の花も咲き始めました。それらの花で草原が色づくほどにもなり、それは大変美しい山になります。1年の半分が零度以下、そして、年間平均降水量が東京の四分の一という乾いた大地でも、自然は生きていることを感じます。


連絡帳の出席簿の欄を記入する園児らⓒ
 Save the Children Japan

さて、
20118月から続いています「子どもにやさしい幼稚園」推進事業ですが、いよいよ事業の終盤に差し掛かりました。私たちモンゴル事務所では、事業終了後も「子どもにやさしいモデル幼稚園」がモデルとして残り、その他の幼稚園にも良い影響を与えていくことができるよう準備活動を進めています。今年4月には、ウランバートル市の教育課や監査局が中心になって、モデル幼稚園を支えていくことができるよう、本事業を通じて開発し、実施してきた2つの重要な活動を、モンゴル政府関係者に引き継ぎました。今回のブログでは、その様子をお知らせします。


1.幼稚園と保護者のコミュニケーションを促す連絡帳


子どどもの絵でいっぱいの連絡帳ⓒ
 Save the Children Japan


朝の登園直後に父親と一緒に記入する園児ⓒ Save the Children Japan

多いところでは、一教室に
60人から70人にも園児がいるモンゴルの公立幼稚園。いくらがんばってみても、11人の子どもの成長を観察し、それぞれの保護者とその成長の様子を共有していくことは難しいのが現実です。そこで、私たちの事業では、日本の幼稚園で使われているような連絡帳を開発し、201210月から導入を始めました。使い手にやさしい連絡帳を目指して試行錯誤を繰り返しました。使い手である幼稚園の先生と、保護者を対象に調査をし、その意見を十分に反映させ、20139月には改正版を発行しました。

ウランバートル市教育課からは、開発当時から高い評価を受けていました。
2013年年末には、ウランバートル市教育課が、市の予算で20,000部を印刷し、事業対象以外の幼稚園への配布を始めました。その結果、連絡帳を使用する公立幼稚園は、58ヶ所から100ヶ所以上と、2倍に増えました。そのため私たちは、この連絡帳の著作権を、ウランバートル市教育課に譲渡しました。

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29日行われた会議で、教育課長オトゴンバガナ氏は、連絡帳の今後の計画について、次の様に話してくださいました。


覚書に署名をするオトゴンバガナ氏ⓒ
 Save the Children Japan

「連絡帳は、子ども
1人の1人の成長の証を刻むものです。もし幼稚園を卒業した子ども全員が、この連絡帳と共に小学校に入学したら、小学校1年生の先生にとって、どれぐらい有益な情報となるでしょうか?小学校1年生の先生は、子どもたち11人の個性を、短期間で把握することができ、子どもの個性に合った教育方針をすぐに立てることが出来ます。

この連絡帳が、幼稚園と保護者とのコミュニケーションを高め、連携を強化したことは確かです。連絡帳の一冊の値段は、大量に印刷すれば、約
510Tg(30)と大変安価に作成することが出来ます。公立幼稚園に通う全ての子どもが準備しなければならない新学期の文房具セットに、この連絡帳を含めることを義務付けていきたいと思います。そうすることで、全国の幼稚園で使用されるようになります。」


連絡帳の様子
ⓒSave the Children Japan

(連絡帳普及の活動については、以下のリンク先でも紹介されています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1207


2.「子どもにやさしい幼稚園」になるための自己評価ソフトシステム



ソフトシステム研修を受ける幼稚園の先生ⓒSave the Children Japan

モンゴル国には、監査局という外部組織が、組織の設備やサービスをモニタリング・評価する、というシステムがあります。私たちは、この監査局が行うモニタリング評価が、評価のための評価になっており、施設設備の改善やサービスを向上するための評価になっていないことが問題であると考え、?幼稚園職の先生が、監査項目の内容を正しく理解するための研修、?監査局職員による監査方法の見直しや、幼稚園職員への指導方法を改善するための研修など、支援を行ってきました。

また、幼稚園で行われている教育サービスを、先生自身が評価できるようになることも推進しました。先生が自分の仕事を見直すということは一番大切で、またサービス向上のために効果があると思ったからです。そのためにまず、内部評価用の項目を作成しました。また評価した結果が、簡単に数字やグラフで表せるように、ソフトシステムを開発しました。



内部評価用のソフトシステムⓒ
 Save the Children Japan


内部評価用のソフトシステムの様子ⓒ
Save the Children Japan

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16日に行われた会議で、ウランバートル市のウヤン・オチャー監査局長は、「この内部評価のためのソフトシステムは、現在我々が進めようとしている『外部監査から内部評価への移行』という新しい国の方針を進めるために大変有効です。もちろん、このソフトシステムで、評価結果の数字化が大変容易になりました。これも効率よく仕事をするために大変重要なことです。ぜひこのソフトシステムを、市内の全幼稚園、または全国の幼稚園に紹介し、導入していきたいと思っています。」と話されました。


ウヤン・オチャー監査局長ⓒ
Save the Children Japan

(
監査局については、以下のリンク先でも紹介しています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=833


これらの2つの会議の様子は、多くのテレビ番組や、インターネットニュース、新聞などで報道され、政府関係者のメッセージが、全国のモンゴルの人々に届けられました。

私たちの事業が終了しても、これらの活動が政府関係者によって、その他の幼稚園に広がっていくことを願っています。


―子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクト―
対象地区の幼児(2歳~5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになることを目指しています。
事業期間:2011823日~201498
事業分類:【教育支援】

本事業は、外務省
NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しています。 

 (
報告;モンゴル事務所 柴田
)


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