(公開日:2014.10.23)
シリア難民と避難先コミュニティとの関係は? ~レバノンでの「青少年クラブ」開設に至るまで~(2014.10.23)
- シリア危機
シリア難民青少年に対する緊急下の心理社会的サポートを含む保護支援と緊急生計支援事業(レバノン・ベカー県)【vol.2】
2011年3月より始まり、未だ解決の糸口が見えないシリア紛争。紛争を逃れて来たシリア難民たちのレバノンでの避難生活も、まだまだ終わりが見えません。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、シリア難民の中でも、特に支援対象から見落とされがちな14~24歳の青少年たちへの支援として、シリアと国境を接するレバノン・ベカー県内の3ヵ所に「青少年クラブ」を開設しました。
(参照:前回の活動報告ブログ)
そこでは、芸術やスポーツ等の様々なクラブ活動や研修を通して、シリア難民青少年らが避難先のレバノンのコミュニティ(ホスト・コミュニティ)に溶け込み、避難生活という厳しい環境下においても健全な社会生活を営めるような活動を提供しています。
青少年クラブは、レバノン国内でも難民数が多く、支援へのニーズの高い地域の中から、最もシリア国境に近い村マジダル・アンジャル(Majdel-Anjar)と、他2村アル・マルジュ(Al-Marj)とカブ・エリアス(QabElias)への設置が決まりました。
しかし、設置地域が決定しても、実際に青少年クラブを開設する建物の選定に、予想以上に苦労が伴いました。
レバノンには、政府が公式に認め、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が管理する難民キャンプがありません。また、物価も高く、多くの難民にとって、アパートを借りることは経済的に不可能です。そのため、シリアから逃れてきた人々の多くは、整備されていない建設途中の建物であっても家賃を払って間借りしたり、農作地の一角を地主から借りて自分たちでテントを建てたりして生活せざるを得ません。このような状況下で、土地や建物の確保は、誰もが頭を悩ます共通の課題なのです。
青少年クラブのために村長さんが提案してくれた公立高校横のスペースの一部にも、未だ住む場所が見つかっていないシリア難民の家族が数世帯住んでいました。
一方、シリア難民テント地区の隣では、レバノン人の地元住民が、難民支援の活動に反対していました。「シリア難民が家の横に住んでいると、自分たちの衛生状態や健康面にも影響が出るんじゃないかと心配だ。シリア人ばかりが援助を受けて、我々だって豊かでないのに、私たちの“人道”はどうなるんだ。」と、レバノン人の男性が訴えてきました。
紆余曲折を経て、最終的には公立学校の使われていない教室、村のヘルスセンターに隣接している集会場所、地元のボーイ・ガールスカウト団体が所有する建物が、セーブ・ザ・チルドレンの青少年クラブの開設場所として決定しました。
青少年クラブ内部:壁のデザイン、塗装も青少年自身が行いました。
レバノンはもともと人口420万人程の小さな国。2014年9月現在、100万人を超えるシリア難民が滞在していることで、インフレなどの経済的な問題が起きるなど、レバノン社会を圧迫しています。
シリアとレバノンは隣国同士で昔から人の行き来もあり、国境を越えて親戚がいるなど、人々の間にはつながりがありました。しかし、シリア紛争開始以降、多くのシリア人がレバノンに避難してきたため、シリア人に対するレバノン人のフラストレーションも高まり、レバノン人とシリア難民間の摩擦が増えてきています。シリア人への反発が高まった結果、ベカー県にある、シリア難民が暮らすテント地区が燃やされるといった痛ましい事件も発生しました。
このような状況から、シリア難民の支援を行う際には、難民を受け入れる側である地域の人々にも、十分配慮したものでなければなりません。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが開設した青少年クラブでは、シリア難民とレバノン人コミュニティ双方の青少年に扉を開いています。両者がクラブと地域での活動を通してお互いを知り、良好な関係を築くことで、青少年たちが、国籍に関係なく、地域の一員として一緒に暮らしてしていけることをサポートしています。
クラブに参加しているシリア難民やレバノン人の青少年たち
次回は、青少年クラブの活動に参加してきた青少年たちの声をお届けします。
―シリア難民青少年支援プロジェクト―
事業場所:レバノン・ベカー県
事業概要:シリアから避難してきた10代、20代の若者たちは、レバノンの生活慣習や教育制度の違いなどから、日常の生活において社会的、経済的に様々な困難に直面しています。そこで、シリア難民が多く滞在するレバノン東部のベカー県に居住する14歳から24歳までのシリア難民青少年と受け入れコミュニティの青少年を対象に、子どもの保護や生計支援を目的とした事業を行っています。
事業期間:2013年4月9日~2014年2月28日(第1期)/2014年3月3日~2015年2月1日(第2期)
事業分類:【緊急・人道支援】【子どもの保護】【生計支援】
本事業は皆さまからのご支援と、ジャパン・プラットフォームからの助成により実施しています。
報告者:レバノン駐在員 長島麻奈
2011年3月より始まり、未だ解決の糸口が見えないシリア紛争。紛争を逃れて来たシリア難民たちのレバノンでの避難生活も、まだまだ終わりが見えません。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、シリア難民の中でも、特に支援対象から見落とされがちな14~24歳の青少年たちへの支援として、シリアと国境を接するレバノン・ベカー県内の3ヵ所に「青少年クラブ」を開設しました。
(参照:前回の活動報告ブログ)
そこでは、芸術やスポーツ等の様々なクラブ活動や研修を通して、シリア難民青少年らが避難先のレバノンのコミュニティ(ホスト・コミュニティ)に溶け込み、避難生活という厳しい環境下においても健全な社会生活を営めるような活動を提供しています。
青少年クラブは、レバノン国内でも難民数が多く、支援へのニーズの高い地域の中から、最もシリア国境に近い村マジダル・アンジャル(Majdel-Anjar)と、他2村アル・マルジュ(Al-Marj)とカブ・エリアス(QabElias)への設置が決まりました。
しかし、設置地域が決定しても、実際に青少年クラブを開設する建物の選定に、予想以上に苦労が伴いました。
レバノンには、政府が公式に認め、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が管理する難民キャンプがありません。また、物価も高く、多くの難民にとって、アパートを借りることは経済的に不可能です。そのため、シリアから逃れてきた人々の多くは、整備されていない建設途中の建物であっても家賃を払って間借りしたり、農作地の一角を地主から借りて自分たちでテントを建てたりして生活せざるを得ません。このような状況下で、土地や建物の確保は、誰もが頭を悩ます共通の課題なのです。
青少年クラブのために村長さんが提案してくれた公立高校横のスペースの一部にも、未だ住む場所が見つかっていないシリア難民の家族が数世帯住んでいました。
一方、シリア難民テント地区の隣では、レバノン人の地元住民が、難民支援の活動に反対していました。「シリア難民が家の横に住んでいると、自分たちの衛生状態や健康面にも影響が出るんじゃないかと心配だ。シリア人ばかりが援助を受けて、我々だって豊かでないのに、私たちの“人道”はどうなるんだ。」と、レバノン人の男性が訴えてきました。
紆余曲折を経て、最終的には公立学校の使われていない教室、村のヘルスセンターに隣接している集会場所、地元のボーイ・ガールスカウト団体が所有する建物が、セーブ・ザ・チルドレンの青少年クラブの開設場所として決定しました。
青少年クラブ内部:壁のデザイン、塗装も青少年自身が行いました。
レバノンはもともと人口420万人程の小さな国。2014年9月現在、100万人を超えるシリア難民が滞在していることで、インフレなどの経済的な問題が起きるなど、レバノン社会を圧迫しています。
シリアとレバノンは隣国同士で昔から人の行き来もあり、国境を越えて親戚がいるなど、人々の間にはつながりがありました。しかし、シリア紛争開始以降、多くのシリア人がレバノンに避難してきたため、シリア人に対するレバノン人のフラストレーションも高まり、レバノン人とシリア難民間の摩擦が増えてきています。シリア人への反発が高まった結果、ベカー県にある、シリア難民が暮らすテント地区が燃やされるといった痛ましい事件も発生しました。
このような状況から、シリア難民の支援を行う際には、難民を受け入れる側である地域の人々にも、十分配慮したものでなければなりません。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが開設した青少年クラブでは、シリア難民とレバノン人コミュニティ双方の青少年に扉を開いています。両者がクラブと地域での活動を通してお互いを知り、良好な関係を築くことで、青少年たちが、国籍に関係なく、地域の一員として一緒に暮らしてしていけることをサポートしています。
クラブに参加しているシリア難民やレバノン人の青少年たち
次回は、青少年クラブの活動に参加してきた青少年たちの声をお届けします。
―シリア難民青少年支援プロジェクト―
事業場所:レバノン・ベカー県
事業概要:シリアから避難してきた10代、20代の若者たちは、レバノンの生活慣習や教育制度の違いなどから、日常の生活において社会的、経済的に様々な困難に直面しています。そこで、シリア難民が多く滞在するレバノン東部のベカー県に居住する14歳から24歳までのシリア難民青少年と受け入れコミュニティの青少年を対象に、子どもの保護や生計支援を目的とした事業を行っています。
事業期間:2013年4月9日~2014年2月28日(第1期)/2014年3月3日~2015年2月1日(第2期)
事業分類:【緊急・人道支援】【子どもの保護】【生計支援】
本事業は皆さまからのご支援と、ジャパン・プラットフォームからの助成により実施しています。
報告者:レバノン駐在員 長島麻奈