(公開日:2014.10.30)
【幼稚園プロジェクト(20)】子どもにやさしいトイレのコンセプト推進のためのガイダンスを制作し、引き継ぎました(2014.10.30)
- モンゴル
日本の皆様、モンゴルの山々は、すっかり緑色から茶色になりました。朝晩は、零下の日もあります。私たちに、すでに冬が近づいてきていることを告げています。
さて、2011年8月から続いていた「子どもにやさしい幼稚園」推進事業ですが、2014年9月8日をもって事業が終了しました。
セーブ・ザ・チルドレン・モンゴル事務所では、事業終了後も「子どもにやさしいモデル幼稚園」がモデルとして残り、他の幼稚園にも良い影響を与えていくことができるよう、事業終了前に様々な引き継ぎ活動を行いましたので、そのひとつを紹介します。
*前回ご報告した引き継ぎ活動の記事はこちら:
【幼稚園プロジェクト?】事業で開発した2つの新しい取り組みを、ウランバートル市に引き継ぎました。
子どもにやさしいトイレのコンセプト推進のためのガイダンス
モデルトイレの1つ ⓒSave the Children Japan
2011年、『子どもにやさしいトイレ』を推進する際に、私たちは「トイレを改修工事して、新しいきれいなトイレを提供するだけの活動はやめよう。この国にはすでに、それなりの資金源も設備工事のノウハウもある。不足しているのはコンセプトで、それを私たちの事業で普及しよう。」と決め、取り組んできました。
そして、私たちが考えたコンセプトがどのような形で具体化できるのか、6つの公立のモデル幼稚園と共に、18ヶ所のトイレルームの改修工事をしながら考えてきました。この6つの幼稚園は、私たちが提供したコンセプトを元に、大変すばらしい活動を考え出し、子どもにやさしいトイレルームを作り出してくれました。
1つのモデルトイレ ⓒSave the Children Japan
これらの活動の成果は、モンゴル教育科学省から高い評価を受け、教育科学省・保健省・財務省の3省合同で2014年内に発行する予定の新しい指針「学校、幼稚園、学校寮における衛生設備の最低基準(Minimum Standard of Water, Sanitation and Hygiene Facility in Schools, Kindergartens and Dormitories)」の中で、私たちが提案するコンセプトの多くが盛り込まれる形となりました。(現在この新しい指針は、政府による最終承認を待っているところです)
また私たちは事業の中で、上記の新しい指針に先行してモデル幼稚園のコンセプトを活用してもらえるよう、2014年7月「子どもにやさしいトイレガイダンス」という冊子を制作し、750部をウランバートル市教育課に手渡しました。
「子どもにやさしいトイレガイダンス」のユニークな特徴
ガイダンスの表紙とその一部 ⓒSave the Children Japan
1つ目の特徴は、「トイレ設備の基準」が、設計の素人である幼稚園職員にも良く理解できるように、3Dデザインの画像を多く取り入れたことです。幼稚園職員は、トイレの改修工事を行う際に、ほうきをきちんと収納できるようにしたいという気持ちは伝えられても、設計に関わる数字までは述べられません。モンゴルではこのことが、幼稚園側の意見が施工業者に受け入れらにくいという問題を招いています。
しかしこのガイダンスがあれば、画像を見せながら、「このような感じの収納戸棚を作ってほしいです。ほうきを収納するので、縦横50cm、高さは最低でも130cmは必要です」と、適切に依頼出来るようになります。
また、モンゴルの公立幼稚園の改修工事は、日曜大工ができる保護者らのボランティアによって行われることも少なくありません。その場合、施工業者が必要とする専門的な設計図よりも、3Dの画像の方が、「基準」がより理解され易い、ということもあります。
施工業者用のデザインと3Dデザインが記載されたガイダンス ⓒSave the Children Japan
2つ目の特徴は、国から出された基準を、現在使用しているトイレにどのように適応できるのか、具体的にアイデアを示したことです。基準があまりにも理想的で、柔軟性がないと、「私の幼稚園のトイレは大変狭いので、この様にはつくれません。」ということになります。
ガイダンスの中では、典型的な建築様式の公立幼稚園をいくつか選び、その幼稚園のトイレの設計に合わせて、モデルデザインを提案しています。例えば「1985年前後に建設されたEタイプのトイレの場合、このデザインを参考に出来ます」と、3つのモデルデザインを記載しています。もちろん全ての幼稚園が、このパターンに当てはまるわけではないため、「トイレがとても狭い場合/トイレが十分に広い場合」といった提案も含め、計9つのモデルデザインを掲載しています。
モデルデザインを参考にしてもらうことで、狭いトイレであれば狭いなりに、広いトイレであれば広いなりに、基準を満たすトイレに改修することができます。
広い面積のトイレの場合のデザイン ⓒSave the Children Japan
狭い面積のトイレの場合のデザイン ⓒSave the Children Japan
最後となる3つ目の特徴は、幼稚園管理者が、改修工事前、改修工事中、改修工事後に、工事に直接関わること以外に配慮しなければならないことをまとめたことです。特に安全管理は、国が出した基準には含まれていませんが、大変重要なことです。
モンゴルでは、残念なことに安全管理への関心が大変低いのが現状で、改修工事現場で使用されるタイルや板などが、園児がいる園内に散乱していることがよくあります。幼稚園側が「仕方がない」と受け入れてしまっていることもこの問題の解決を遅らせています。このガイダンスには、保護者や子どもの安全を守るために、施工業者と事前にどんな話し合いをしておく必要があるのか、改修工事の間にどんなアレンジをしなければならないのかをまとめました。また、モデル幼稚園が実際に使用した安全管理に関するポスターも記載されていますので、何をしたらよいのかわからなくとも、まずその事例を真似ることからはじめられます。
安全管理のためのポスターが記載されたガイダンス ⓒSave the Children Japan
私たちの事業では、6ヶ所の幼稚園でモデルトイレを作り、同時に、モデルの普及活動も行いました。その結果、35ヶ所の幼稚園で、モデルトイレのコンセプトを反映させた改修工事が、ウランバートル市教育課や保護者の支援によって行われました。このガイダンスと共に、「子どもにやさしいトイレ」の実践が、さらに広がっていく様子を見守っていきたいと思います。
―子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクト―
対象地区の幼児(2歳~5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになりました。
事業期間:2011年8月23日~2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しました。
(報告;モンゴル事務所 柴田)
伝統衣装を着た子どもたち ⓒSave the Children Japan
さて、2011年8月から続いていた「子どもにやさしい幼稚園」推進事業ですが、2014年9月8日をもって事業が終了しました。
セーブ・ザ・チルドレン・モンゴル事務所では、事業終了後も「子どもにやさしいモデル幼稚園」がモデルとして残り、他の幼稚園にも良い影響を与えていくことができるよう、事業終了前に様々な引き継ぎ活動を行いましたので、そのひとつを紹介します。
*前回ご報告した引き継ぎ活動の記事はこちら:
【幼稚園プロジェクト?】事業で開発した2つの新しい取り組みを、ウランバートル市に引き継ぎました。
子どもにやさしいトイレのコンセプト推進のためのガイダンス
モデルトイレの1つ ⓒSave the Children Japan
2011年、『子どもにやさしいトイレ』を推進する際に、私たちは「トイレを改修工事して、新しいきれいなトイレを提供するだけの活動はやめよう。この国にはすでに、それなりの資金源も設備工事のノウハウもある。不足しているのはコンセプトで、それを私たちの事業で普及しよう。」と決め、取り組んできました。
そして、私たちが考えたコンセプトがどのような形で具体化できるのか、6つの公立のモデル幼稚園と共に、18ヶ所のトイレルームの改修工事をしながら考えてきました。この6つの幼稚園は、私たちが提供したコンセプトを元に、大変すばらしい活動を考え出し、子どもにやさしいトイレルームを作り出してくれました。
1つのモデルトイレ ⓒSave the Children Japan
これらの活動の成果は、モンゴル教育科学省から高い評価を受け、教育科学省・保健省・財務省の3省合同で2014年内に発行する予定の新しい指針「学校、幼稚園、学校寮における衛生設備の最低基準(Minimum Standard of Water, Sanitation and Hygiene Facility in Schools, Kindergartens and Dormitories)」の中で、私たちが提案するコンセプトの多くが盛り込まれる形となりました。(現在この新しい指針は、政府による最終承認を待っているところです)
また私たちは事業の中で、上記の新しい指針に先行してモデル幼稚園のコンセプトを活用してもらえるよう、2014年7月「子どもにやさしいトイレガイダンス」という冊子を制作し、750部をウランバートル市教育課に手渡しました。
「子どもにやさしいトイレガイダンス」のユニークな特徴
ガイダンスの表紙とその一部 ⓒSave the Children Japan
1つ目の特徴は、「トイレ設備の基準」が、設計の素人である幼稚園職員にも良く理解できるように、3Dデザインの画像を多く取り入れたことです。幼稚園職員は、トイレの改修工事を行う際に、ほうきをきちんと収納できるようにしたいという気持ちは伝えられても、設計に関わる数字までは述べられません。モンゴルではこのことが、幼稚園側の意見が施工業者に受け入れらにくいという問題を招いています。
しかしこのガイダンスがあれば、画像を見せながら、「このような感じの収納戸棚を作ってほしいです。ほうきを収納するので、縦横50cm、高さは最低でも130cmは必要です」と、適切に依頼出来るようになります。
また、モンゴルの公立幼稚園の改修工事は、日曜大工ができる保護者らのボランティアによって行われることも少なくありません。その場合、施工業者が必要とする専門的な設計図よりも、3Dの画像の方が、「基準」がより理解され易い、ということもあります。
施工業者用のデザインと3Dデザインが記載されたガイダンス ⓒSave the Children Japan
2つ目の特徴は、国から出された基準を、現在使用しているトイレにどのように適応できるのか、具体的にアイデアを示したことです。基準があまりにも理想的で、柔軟性がないと、「私の幼稚園のトイレは大変狭いので、この様にはつくれません。」ということになります。
ガイダンスの中では、典型的な建築様式の公立幼稚園をいくつか選び、その幼稚園のトイレの設計に合わせて、モデルデザインを提案しています。例えば「1985年前後に建設されたEタイプのトイレの場合、このデザインを参考に出来ます」と、3つのモデルデザインを記載しています。もちろん全ての幼稚園が、このパターンに当てはまるわけではないため、「トイレがとても狭い場合/トイレが十分に広い場合」といった提案も含め、計9つのモデルデザインを掲載しています。
モデルデザインを参考にしてもらうことで、狭いトイレであれば狭いなりに、広いトイレであれば広いなりに、基準を満たすトイレに改修することができます。
広い面積のトイレの場合のデザイン ⓒSave the Children Japan
狭い面積のトイレの場合のデザイン ⓒSave the Children Japan
最後となる3つ目の特徴は、幼稚園管理者が、改修工事前、改修工事中、改修工事後に、工事に直接関わること以外に配慮しなければならないことをまとめたことです。特に安全管理は、国が出した基準には含まれていませんが、大変重要なことです。
モンゴルでは、残念なことに安全管理への関心が大変低いのが現状で、改修工事現場で使用されるタイルや板などが、園児がいる園内に散乱していることがよくあります。幼稚園側が「仕方がない」と受け入れてしまっていることもこの問題の解決を遅らせています。このガイダンスには、保護者や子どもの安全を守るために、施工業者と事前にどんな話し合いをしておく必要があるのか、改修工事の間にどんなアレンジをしなければならないのかをまとめました。また、モデル幼稚園が実際に使用した安全管理に関するポスターも記載されていますので、何をしたらよいのかわからなくとも、まずその事例を真似ることからはじめられます。
安全管理のためのポスターが記載されたガイダンス ⓒSave the Children Japan
私たちの事業では、6ヶ所の幼稚園でモデルトイレを作り、同時に、モデルの普及活動も行いました。その結果、35ヶ所の幼稚園で、モデルトイレのコンセプトを反映させた改修工事が、ウランバートル市教育課や保護者の支援によって行われました。このガイダンスと共に、「子どもにやさしいトイレ」の実践が、さらに広がっていく様子を見守っていきたいと思います。
―子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクト―
対象地区の幼児(2歳~5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになりました。
事業期間:2011年8月23日~2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しました。
(報告;モンゴル事務所 柴田)
伝統衣装を着た子どもたち ⓒSave the Children Japan