【福島:子どもの場所づくり支援(8)】 NPOの運営強化 ~長期的な運営のための計画作り~(2015.01.05)

サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクト(以下、フクシマ ススム)の一環として展開する「子どもの場所づくり支援」に参加する団体の最新活動紹介。いよいよ最終回です。

「子どもの場所づくり支援」は、地元のNPO団体とともに、福島県の子どもたちが安心して学び、遊べる環境づくりを目的として、県内で展開する7つの取り組みです。このプロジェクトは、?資金支援による活動の質の向上、?技術支援による運営強化という2つの柱からなります。

第6弾のこのブログでは、フクシマ ススム「子どもの場所づくり支援」がパブリックリソース財団(以下PRF)と協力して進めている技術協力の中から、長期的な運営に向けた計画づくりに取り組む「ビーンズふくしま」(以下ビーンズ)の活動をご紹介します (1回目のブログ2回目のブログ3回目のブログ4回目のブログ5回目のブログはこちら)。

中期的・長期的な計画を作る~現状の課題を把握して、5年後、10年後を考える~
ビーンズは、1999年に設立された子ども支援の団体で、これまで、フリースクールや就労支援を通じて、子どもや若者を支えてきました。東日本大震災の発生後、復興支援活動が急速に拡大し、職員も増えました。そして、2014年。震災から3年以上が経ち、同時に創立15周年を迎えたビーンズは、変化した状況を踏まえつつ、今後の中期的・長期的な計画を作る必要を強く感じていました。そこで、フクシマ ススムでは、以下のような手順で、組織基盤強化を進めていきました。
   

<ビーンズの組織基盤強化>
? 「組織診断」をして、団体の現状を把握する
?    診断結果に基づいて、課題を明確にする
?    課題を絞り、重要課題への取り組み方を考える

?    中・長期計画を作る


? 組織診断をして、団体の現状を把握する
まず最初のステップは「組織診断」です。「スタッフの意見が積極的に活用されているか」「各事業には、目標達成のための指標があるか」など、PRFが作成した質問票に、リーダーと中堅職員が、それぞれ答えていきます。これによって、事業 管理、人事、活動の現状や透明性、説明責任の度合いについて、ビーンズの強みや課題を診断します。集計結果は?のワークショップで共有され、組織基盤強化の土台となっていきます。

? 診断結果に基づいて、課題を明確にする
続いては、?の質問票の結果に基づいて、PRFが講師となり、計6回のワークショップを実施しました。1回目と2回目は、組織診断の結果を共有し、ビーンズの強みの活かし方や弱みの改善策を出し合いました 。

強みとしてあげられたのは、「職員の専門性や能力が高く、資質が活かされている」「地域を巻き込んだ取り組みや各地域での地域連携ができている」「子どもたちに安心を提供できる」などです。反対に弱みとしてあげられたのは、「これまで資金調達はできていたが、財源が委託や助成金に偏っている」「個人の評価やキャリア形成の視点が不足」「事業が縦割りで事業間連携が弱い」「情報共有の範囲と優先順位が不明瞭」というものでした。

客観的な診断を基にし、職員同士が考えや意見を出し合うことで、ビーンズが直面する課題を明確にしていきました。3回目のワークショップでは、外部条件も視野に入れて議論を深めていきました。地域からはどんな要求があるのか、今後どのように外部に強みをアピールしていけばよいか、子どもたちや福島県の状況の変化、法律や制度の改正など…、ひとつ、ひとつ掘り下げて考えていきました。

           ワークショップを重ねるにつれて、話し合いが深くなっていきます 。

? 課題を絞り、重要課題への取り組み方を考える
その後のワークショップでは、ビーンズにとって、特に重要な課題に絞って、議論しています。中堅職員を巻き込んで、団体として大切にしている価値や重点方針を明確にすることで組織を担う人材の育成や、話し合う仕組み作りを図りました。また同じ期間に第3弾のブログで紹介した、人材育成のための他団体での視察研修も実施していたので、その学びを共有することでより充実したワークショップになりました。

? 中・長期計画を作る
そして、いよいよ「中・長期計画」作りに入ります。計画づくりは、現在、進行中で、中期目標やそのための戦略や活動などを具体化する段階に入っています。今後も、時間をかけて完成に向けて議論を続けていく予定です。

ワークショップを始めたばかりの頃は、「職員が、お互いにどんな取り組みをしているかよくわからない」、「組織全体としてというより、個別の事業担当者が大きな決定をすることが多い」という声があげられていました。しかし、ワークショップを重ねるうちに、職員が議論できる仕組みができ、事業間の連携強化や「組織」としての対応力が強まるなどの変化が生まれつつあります。人材育成と計画づくりという2つの車輪が同時に回ることで、組織基盤強化が進んでいるのです。

運営力の強化は時間もかかりますが、どの団体も、1年間の取り組みの成果が出てきました。ここでご紹介した取り組みはほんの一部ですが、参考になれば幸いです。また各団体の今後の活動にも注目です!是非、それぞれのホームページやブログでご覧ください。

 (報告:福島事務所 佐々木未央)



【サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクト】
「サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクト」は、サントリーホールディングス株式会社と公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとが取り組む福島の子ども支援事業です。東日本大震災発生後、福島の子どもたちは、多くの困難に直面しながら、少しずつ前に進んでいます。学童保育クラブ支援や子ども支援に取り組むNPOとの協働や助成事業を通じて、福島の子どもたちが安心して学び 遊べる環境をハード、ソフト両面からきめ細やかにサポートし、フクシマススムは「ススムっ子」の健やかな成長と明るい未来を支えます。
サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクト

【子どもの場所づくり支援】
サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクトの一環として支援する取り組みで、福島県の子どもを支援する地域のNPOが協働し、子どもたちの発達にかかすことのできない「日常的な遊び場、居場所」活動の質を向上させ、継続的かつ安定した活動を展開し、さらなる子どもたちの成長環境の改善を目指します。子どもの健全な成長発達や子どもたちの安心安全を考慮したモデル事業として、福島の子どもたちの遊び場・居場所全体の質向上を実現していきます。

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