(公開日:2016.03.17)
セーブ・ザ・チルドレンの写真家となったあるシリア難民のストーリー
- シリア危機
世界はまだ、シリアを見捨ててはいない
レンズを通じて、見えたこと
レンズを通じて、見えたこと
アハマド・バロゥディは、セーブ・ザ・チルドレンでシリア人道支援に携わるシリア人スタッフとして、シリア危機で被害を受けた子どもたちの写真を撮影しています。他の何百万人のシリア人と同じく、2013年にレバノンへ逃れてきたアハマドが、自らの経験を語ります。
ツアーガイドからセーブ・ザ・チルドレンの写真家へ
私は、シリア危機の前まで、シリアでツアーガイドをしていました。レバノンに移ってしばらくは、シリア危機を報道する写真家やメディアの通訳兼コーディネーターとして働いていたのですが、幸運にも偉大な写真家たちと出会い、写真の基礎を学び、セーブ・ザ・チルドレンの写真家として、難民キャンプでの撮影を始めました。
間もなく私は、子どもは、自らの境遇を写す鏡だということに気付きました。彼らは正直で率直で、大人たちより格段に上手に自分の意見を述べることができます。子どもの1枚の肖像写真は、千のレポートに勝ることもあります。彼らの目は、写真を見る側の人と絆をつくり、事情を知らない人たちに対しても、気持ちを伝えることができるのです。
「死と向き合い、生き返る」―13歳の少年の言葉
子どもと一緒に働いていると、時として心を打つ話を聞くことがあります。私が思い出す少年の一人が、アブドゥルサラーム。13歳だったと思います。彼は、この5年間で10回以上もシリア国内で避難先を変え、空爆や砲撃を何度も切り抜けました。空爆について、「それは死と向き合い、生き返るみたいなものです」と、わずかな言葉で言い切る姿に、衝撃を受けました。
彼は、絵を描くことが大好きで、とても才能があります。絵を描くことは安らぎで、描き始めると周りのことはすっかり忘れ、自分の世界に浸ってしまいます。そんな時、彼には爆弾が、破壊をもたらすものには見えなくなっています。彼の絵には、飛行機もミサイルも描かれているのですが、まるで空爆が家を彩るかのように、花も舞っています。彼には、平和だったころどのように過ごしていたのか、その思い出がほとんどありません。紛争で、子どもたちは5年の間に50歳も年をとってしまったと、私は感じます。
世界の人たちは、まだ私たちを見捨ててはいない
状況は、良くなっていると言えたらいいのに、と思います。しかし、望みもあります。5年を経て、まだ私たちは見捨てられていないことに気づきました。シリアからのニュースは、いつももどかしく、人々は、そんな状況に飽きているかもしれません。ただ、毎日のように、ソーシャルメディアや署名を通して支援や連帯を表明する人も増えています。そこに私は、希望を感じます。私の願いは、写真を見て「自分の子どもにも起きてしまうことかもしれない」と感じてくれる人々がいることなのです。
シリア危機が始まり5年を迎えました。セーブ・ザ・チルドレンでは、包囲地域に住む父母と子どもたち125人に実施した調査の報告書「包囲下の子ども時代」を発表しました。