(公開日:2016.07.22)
「G20子どもの豊かさランキング」 1位はドイツ、日本は3位-G20諸国の子どもの生活実態に関する比較調査の報告書を発表
- プレスルーム
子ども支援の国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは、7月23、24日に中国で開催される主要20ヶ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、新報告書「経済の広場で:G20諸国の子どもの生活実態に関する比較調査(Economic Playgrounds: Comparing the lives of children in G20 countries)」を公開し、G20に国として参加している19ヶ国の子どもの豊かさを、8つの分野ごとに比較し総合的に評価する「G20子どもの豊かさランキング(Child Prosperity Index)」*1を発表しました。同報告書は2014年に続く2回目となります。今回の総合順位では、所得、雇用、ジェンダーの平等の分野でいずれも最も高い得点を得たドイツが前回同様に1位を獲得し、フランスが2位、日本が3位という結果となりました。
*1 次の8つの分野での比較、順位付けを基に、子どもの豊かさを総合的に評価
1)保健(出生時の平均余命、子どもの死亡率、子どもの肥満率)、2)教育(就学年数、OECD学習到達度調査(PISA))、3)所得(国民一人あたりのGDP、所得分配の不平等度(ジニ係数))、4)安全(人口10万人あたりの殺人発生件数、人口10万人あたりの交通事故死者数)、5)雇用(若者の失業率、世界奴隷指数)、6)ジェンダー平等(UNDPジェンダー不平等指数)、7)インフラ(電力供給の安定性、安全な飲み水と衛生施設の利用)、8)環境(自然保護区の割合、大気汚染、国民一人あたりのCO2排出量)
前回の4位から順位をあげて3位となった日本は、G20の他の高所得国と比較して、子どもの死亡率や肥満率、若者の失業率、そして人口10万人あたりの殺人発生件数や交通事故死者数が低いことから、保健の分野で1位、雇用の分野で2位、安全の分野で3位という結果となりました。一方、環境の分野では自然保護区の割合が低いことや、国民一人あたりのCO2排出量が比較的多いことから平均以下の11位、所得については8位、ジェンダー平等は7位とふるいませんでした。
今回の報告書では、1位と2位のドイツやフランスよりも国民一人あたりのGDPが高いアメリカやサウジアラビアの総合順位がそれぞれ9位と15位であり、所得の高さが子どもの豊かさにつながっていないことが明らかになりました。
また、ジェンダーの不平等は、インドやインドネシア、ブラジルなどにおける高い妊産婦死亡率に結果として現れるなど、多くの国で、子どもにとっての豊かさを阻害する要因となっています。ジェンダーの不平等を是正し、女性や少女が教育や就労の機会を平等に得られるようにすることで、これらの国では更なる経済成長の促進が見込めます。
「日本の高順位は、国民皆保険制度が整っていることや、安全性の高さが大きな要因です。ただし、注意が必要なのは、こうした国際比較における日本の優位性を、そのまま国内の状況にあてはめることができないということです。特に日本は、6人に一人の子どもが相対的貧困の状態にあり、ひとり親世帯の子どもの貧困率は、先進国で最悪の水準にあります。国内における格差の実態を把握し、子どもたちの貧困問題等の解決に向けた喫緊の取り組みが求められます。
今回の報告書では、全ての子どもが自らの可能性を発揮できる社会を築くためには、経済的に最も豊かで繁栄した国にも改善が必要な分野があることが明らかになりました。経済の成長には、並行して、包括的な貧困削減に対する取り組みが行われなければなりません。」セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 政策提言スペシャリスト 大野容子
セーブ・ザ・チルドレンは、今回の主要20ヶ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を、国や地域を超えて世界の子どもたちの生活を改善するための好機と捉え、世界の政治と経済を牽引するG20諸国の指導者に対し、子どもたちの健やかな成長(Well-being)を促進するために、貧困の削減や、税の公平性のための政策を採択するよう求めています。
*「経済の広場で:G20諸国の子どもの生活実態に関する比較調査」全文(「G20子どもの豊かさランキング」含む、英語)はこちら
*プレスリリースのダウンロードはこちら