【熊本地震復興支援】益城町の中学3年生263人に、給付金を支給(2017.10.17)

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは2016年7月以降、熊本地震緊急・復興支援の一環として、震災の影響により、夏休みの子どもたちの学習や文化・スポーツ活動などに支障が出ないよう、被災状況や経済的困窮といった一定の条件を満たす益城町の中学3年生を対象に、1人あたり5万円を給付(※)しました。子どもや保護者は、どのような状況におかれ、今、どのような支援が求められているのでしょうか。給付結果について、ご報告します。


※「給付型緊急サポート~夏休み応援キャンペーン~」の詳細はこちら


■給付結果■
益城町内の公立中学校に在籍する全中学3年生327人(2016年8月時点)のうち、263人(80%)に給付金を支給しました。教育委員会や中学校も、子どもたちの被災状況を正確には把握できない中での本キャンペーンの実施となりましたが、給付金を受給した子どもの数の多さから、改めて震災による益城町の子どもたちへの影響の大きさを認識しました。


■給付結果から明らかになったこと■
受給した子どものおかれた状況を分析すると、大きく3点が明らかになりました。


●公的支援がない、住居が一部損壊の世帯の子どもに対する支援ニーズが高い
受給した子ども263人のうち238人(90%)の子どもの世帯が、震災により住居が一部損壊以上と罹災証明で認定されています。被災状況をより詳しくみると、38人(16%)が全壊、13人(6%)が大規模半壊、39人(16%)が半壊、148人(62%)が一部損壊でした。


一部損壊世帯の保護者からは、「家の修理や家財の買い替えで出費が多くあり、子どもの費用の捻出に苦労している」「住む所はあっても、子どもが勉強できる環境ではない。みんな同じ被災者です」「震災により、避難生活や生活用品を買い直したりで出費が重なったのに、一部損壊ということで義援金の支給も受けられず、生活が厳しい」といった声が寄せられ、義援金の支給対象者に該当せず、震災に伴う公的支援がない、一部損壊世帯の子どもへの支援の必要性が浮き彫りになりました。


●被災により、経済的困窮に陥る可能性が高いひとり親家庭の子どもに対する支援の充実が急務
受給した子ども263人のうち48人(18%)の子どもの保護者が、ひとり親家庭であると回答しました。


保護者の就業状況は、ひとり親家庭のうち、28人の子どもの保護者(58%)が正規雇用ですが、15人の子どもの保護者(31%)は契約社員、パート等の非正規雇用でした。また39人の子どもの保護者(81%)が児童扶養手当を受給していました。
保護者からも、「地震の影響で職場に通行止めなどで行けず、給料もとても少なくて不安」「(体調不良で休職していて)母子家庭で最近働きはじめたので、夏期講習に行かせるのを、あきらめていた」「3人の子どもたちが夢や目標を持てる環境だけは作ってあげたいと思っているが、そのためにはそれなりの費用もかかり、私の収入だけでは難しい」といった声があがりました。


厚生労働省によれば、日本のひとり親家庭の相対的貧困率は54.6%であり、平均年間就労収入が約181万円であることを考慮すると、ひとり親家庭は被災の影響を受けやすく、経済的困窮に陥る可能性が高いといえます。そのため、ひとり親家庭の子どもに対する支援の充実が求められます。


●被災直後であっても、子どもの学習、文化・スポーツ活動への参加の機会を保障すべき
給付金の使途として、227人(86%)が「学習塾の経費」、90人(34%)が「参考書などの教材の購入費」、29人(11%)が「習い事や課外活動の経費」、28人(11%)が「学習塾や習い事、夏休みの課外活動に参加するための交通費」という回答を選択しました。 


保護者からも、「震災で学校再開が他の市町村より遅れ、子どもの学習能力・意識の低下を心配し、少しでも学習環境を与えたい」「受験生でもあり休校した分の学力を取り戻させたいと思っていたが、塾の費用もなかなか高額で頭を抱えていた」「少しでも地震前のようにサッカーがしてほしい」といった声があがり、震災による子どもの生活への影響に不安を抱え、震災前と同じように子どもが学校外での学習、スポーツ・文化活動をできるよう希望する保護者の姿が明らかになりました。


文部科学省がまとめた「平成26年度子供の学習費調査」によれば、公立中学校に通う子どもの場合、家庭の学校外活動費の負担は年間約31万円強となっています。日本は子どもの教育費に対する家庭の負担が高いと言われる中、被災による家庭の経済的状況が子どもの学習、文化・スポーツ活動への参加に影響しないよう、適切な支援が必要となっています。


「給付型緊急サポート~夏休み応援キャンペーン~」実施結果報告はこちら


熊本地震発生から半年が経ちましたが、復興の歩みはまだ続きます。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、今回の実施結果を受け、現在、中学2年生や定時制高校3年生を対象に、修学旅行費用を給付する活動も始めています。被災による家庭の経済的困窮が懸念される中、今後も活動を続けていきますので、応援・ご協力をよろしくお願いいたします。


(報告:東京事務所 津田知子、瀬角南)
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