(公開日:2020.04.21)
新型コロナウイルス感染症:命を救うために、携帯電話やテレビ、インターネットへのアクセスの保障を-ミャンマーとバングラデシュで支援活動をする26団体による共同提言
- バングラデシュ
4月16日、国際人道支援団体はミャンマーとバングラデシュ両政府に対し、多くのロヒンギャ難民が暮らすバングラデシュ南東部コックスバザールと、ミャンマー西部ラカイン州とチン州でモバイルデータと情報通信の常時利用を再開[1]し、ロヒンギャ難民や避難民のみならず、紛争の影響を受けた人々、そして難民や避難民を受け入れているコミュニティの人々が、新型コロナウイルス感染症感染予防のための情報を確実に手に入れられるよう要請しました。
情報へのアクセス保障は、新型コロナウイルス感染症により起こりうる壊滅的な影響から脆弱なコミュニティを守り、命を救う人道支援において必要不可欠です。
コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプでセーブ・ザ・チルドレンが運営する保健医療センター
コックスバザールの難民キャンプには、約100万人のロヒンギャ難民が暮らしており、女性、子ども、障害のある人、そして高齢者といった脆弱な人々も数多くいます。難民キャンプでは、人々は密集して暮らしており、ソーシャルディスタンス(他者と一定の距離を保つこと)や隔離などは非常に難しい状況です。
また、ミャンマーのラカイン州政府の発表によると、同州では2012年以降に避難を余儀なくされた12万8,000人に加え、現在もつづく武力衝突により、さらに6万4,658人が国内での避難を余儀なくされています。
国境を接するミャンマーとバングラデシュの両国で、難民と避難民は共通の困難に直面しています。人々はひしめき合って暮らし、安全な水や衛生用品を手に入れることは難しく、また、新型コロナウイルス感染症の検査や治療ができるような質の高い医療機関にアクセスすることはできません。
ラカイン州でもコックスバザールでも、人工呼吸器は圧倒的に不足しています。こうした状況では、短期間での感染拡大と、高死亡率となる危険性が著しく高くなります。バングラデシュの人々、ロヒンギャの人々、そしてラカイン州のコミュニティに暮らす人々を、新型コロナウイルス感染症の破壊的な影響から守るためには、感染拡大予防のためのあらゆる措置をとることが非常に重要です。
人工呼吸器などの設備がない(保健医療センター)
現在、情報通信へのアクセスが制限されていることにより、感染スピードを遅らせ、適切な治療を行うためのさまざまな対策の実施が阻まれています。コックスバザールのロヒンギャ難民は、SIMカードを合法的に手に入れることができません。また、2019年9月以降、通信事業者は、ロヒンギャ難民キャンプでのインターネットの接続を制限するよう指示されており、こうした制限により、難民キャンプ周辺のバングラデシュのコミュニティにも影響が出ています。
さらに、2020年2月以降、ミャンマー・ラカイン州とチン州のなかで紛争の影響を受けている9つの行政区にあるすべてのコミュニティにおいて、モバイル機器によるインターネットアクセスが不可能となってしまいましたが、うち4つの行政区では2019年4月からアクセスがない状態が続いています。こうしたアクセス制限により、衛生に関する情報や、新型コロナウイルス感染症のリスク、症状、予防法などに関する情報を人々に効果的に届けることが困難になっています。結果として、人々がウイルスにり患し命を落とす危険性が高まることになります。
インターネットや他の情報通信に効果的にアクセスすることで、新型コロナウイルス感染症の症状が出てしまった場合、自分で感染に気付き、どのように自らを隔離し、家族や医療従事者、介護者にうつすリスクを減らすことができるのかを知ることができます。
また、適切な情報があれば、集中治療の必要のある患者を対応可能な病院に搬送するといった医療上の措置を迅速に行うことができるでしょう。加えて、全国規模で新型コロナウイルスの感染拡大を防止する措置の一環として、人道支援団体によるコミュニティへの移動やアクセスが減少していることにともない、バングラデシュやロヒンギャの人々、ラカイン州のコミュニティに対し、遠隔から緊急支援を提供する必要性が高まっています。モバイルデータへのアクセスなしに、遠隔から衛生、保護、教育、そして心理社会的支援やサービスを効果的に提供することは不可能です。
難民キャンプで支援にあたるスタッフ
新型コロナウイルス感染症の抑制に実績をあげている国々は、人々が、即時的に最新かつ科学的な証拠と情報にアクセスできています。新型コロナウイルスは、私たち全人類に影響を与えています。この感染症の世界的大流行が一日も早く収束し、誰一人取り残されないために、脆弱なコミュニティを守るためにあらゆる対策を講じることが必要です。
提言賛同団体(計26団体)Action Aid Bangladesh、Action Contre la Faim、ADI Humanitarian Assistance、CARE International、CBM International、Christian Aid、Community Partners International、Danish Refugee Council、EDUCO、Humanity and Inclusion、International Rescue Committee、Lutheran World Federation、Medecins Du Monde Japan、Medecins Du Monde Switzerland、Migrant Offshore Aid Station、Médecins du Monde France、Norwegian Church Aid、Norwegian Refugee Council、Peace Winds Japan、People in Need Myanmar、Plan International Bangladesh、Save the Children、Terre Des Hommes、United Purpose、Volunteer Services Overseas、World Vision
[1]私たちは、文字が読めない大人や子どもたちにも公共感染防止メッセージを音声と映像で届けるために、最低100キロバイト/秒の通信速度があることをインターネットの常時アクセスが可能な状態と定義します。
[2]https://www.rfa.org/english/news/myanmar/bangladesh-rohingya-covid19-03272020195432.html