【インドネシア交通安全事業】新型コロナウイルス感染症感染拡大防止キャンペーンを実施しました

インドネシアの都市部では、増え続ける人口に対して電車やバスなどの公共交通サービスが不十分であること、また、歩道橋などの交通インフラ設備が十分に整備されていないことや、人々の交通安全に関する正しい知識と意識が十分でないことから、交通事故の多さが問題となっています。インドネシア警察によれば、国内の交通事故による死者数は、2013年から2018年の6年間で17万人を超え、交通事故に巻き込まれる子どもも少なくありません。

子どもたちが安全に学校に通うことができるように、セーブ・ザ・チルドレンは、特に子どもが巻き込まれる交通事故が多く発生している北ジャカルタ市と東ジャカルタ市にて、2018年4月より、子どもと青少年のための交通安全事業を実施しています。

この事業は、この2地域の子どもの交通安全状況を改善し、子どもたちの命を守ることを目的としています。生徒、学校教師、保護者や地域住民の交通安全に関する知識を深め行動を改善し、さらに、交通省や教育省、警察などに対し、学校周辺の交通インフラ設備の整備や通学時間帯の交通整理など、子どもたちの交通安全のための取り組みを強化するようはたらきかけています。

しかし、2020年2月頃から、首都ジャカルタを中心に新型コロナウイルス感染症の感染者が急激に増え始めたため、3月には政府が非常事態宣言を発令し、人々の外出や移動が大きく制限されています。学校も3月より休校となり、7月上旬現在、再開の見通しは立っていません。


警察官が講師となり学校で実施した交通安全に関する講習の様子

5月1日からの4週間は、イスラム教の断食月「ラマダン」にあたる期間となりました。イスラム教徒の人口が多いインドネシアでは、この断食月の期間中、そして断食月明けの祝日期間に、都市部で働いている人たちとその家族が故郷へ帰省することが慣習となっています。

多くの人たちがインドネシア国内を移動するため、この期間中は毎年、都市部を中心に交通事故が増加します。そのため、本来この時季には、交通ルール順守のメッセージを広める交通安全キャンペーンを実施する予定でした。

しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防措置として、政府がラマダン中とその後の休暇中の移動も控えるよう通達したため、各政府機関と調整のうえ、急遽、このキャンペーンのメッセージを、「帰省を控えましょう」という内容に変更して実施することになりました。


幹線道路や公園、学校等の施設の前にバナーが掲げられました

このキャンペーンは、ジャカルタ市警察の全面的な協力を得て実施しました。ジャカルタ市警察はこの事業において、学校周辺の道路が混雑する時間帯に交通整理を行ったり、また、生徒たちに対して交通安全に関する講習を実施したりするなど、重要な役割を担っています。

今回、感染拡大予防措置の影響で生徒たちが道路上でのキャンペーン活動に参加することができないため、警察官たちが、駅や主要な道路など公共のスペースに大きなバナーを掲げたり、また、道行く人々にリーフレットを渡したりして、感染拡大予防のための啓発活動を実施しました。

バナーやリーフレットには、今年は帰省を控えるように促す内容や、また、こまめな手洗い、マスクの着用、周囲の人と距離を保つことなど、感染予防のためのメッセージがイラストで描かれました。このキャンペーンは、ジャカルタ市警察のTwitterを通しても発信され、メッセージは多くの人々に届けられました。リーフレットを受け取った人からは、「分かりやすいイラストなので、子どもにも見せたいと思います」というコメントもあったそうです。




感染拡大防止のために帰省を控えるよう促すリーフレットと、
道路で運転手にリーフレットを手渡す警察官

学校の再開の見通しが立たない中、各学校における啓発活動や交通安全講習などは現在中断していますが、国内の状況が落ち着き、子どもたちが安心して学校に通うことができる日が一日でも早く来るよう、事業チームは工夫を凝らしながら事業を続けていく予定です。

この事業は、皆様からのご寄付および損害保険ジャパン株式会社のご支援により実施しています。

(海外事業部 インドネシア事業担当 福田直美)
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