ロヒンギャ危機から3年:平和と帰還への道筋いまだ見えず

セーブ・ザ・チルドレン バングラデシュ事務所代表 オノ・バン・マネン

2020年8月25日、ミャンマーに暮らすロヒンギャの人々が隣国バングラデシュに避難を強いられてから3年が経ちました。3年前、約50万人の子どもを含む70万人を超えるロヒンギャの人々がミャンマー西部ラカイン州で起こった恐ろしい暴力と人権侵害から逃れるため故郷にすべてを残したまま、バングラデシュに避難しました。

コックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプは米国ニューヨーク市の4倍の人口密度があるとされ、人々は新型コロナウイルス感染症の感染リスクと隣り合わせの日々を過ごしている。

2017年以降、バングラデシュ南東部コックスバザールにある難民キャンプでは7万5,000人を超える新しい命が誕生しました。
難民キャンプで誕生した子どもたちは、知らない土地で最初の1歩を踏み出し、自身が話す言葉が外国語とされる国で最初の一言を発したでしょう。そして、故郷ミャンマーのことについては親からの聞き伝えからでしか知ることはできません。
子どもたちにとって、コックスバザールの広大な難民キャンプでの生活がすべてなのです。
一方、国境の反対側にあるミャンマーでも、紛争と虐待で人々が国内避難民となった2012年以降、21ヶ所の国内避難民キャンプで、3万人以上の子ども(ほとんどはロヒンギャであるが、一部はカマン)が生まれました。


国内避難民として生活している人々に将来に関する有意義な提言をしたり、この危機をもたらした根本原因であるミャンマーにおけるロヒンギャの人々への差別や組織的な排除に対処することなく、これらのキャンプのうち数ヶ所は閉鎖される予定となっています。

10万人以上の子どもたちがキャンプで暮らしている現状は、国際社会が子どもたちを保護し、最終的に故郷と呼べる場所での子どもたちの未来を保証することができていないことを意味しているのです。 ロヒンギャの子どもたちが家に帰るには、現状を引き起こした根本原因に対処することが重要です。


ミャンマー政府は、ロヒンギャの人々がラカイン州で直面している差別、暴力、虐待に直ちに対処し、市民権、移動の自由、基本的なサービスへのアクセスをはじめとする権利が平等に保障されるよう担保することが求められます。 国際社会もまた、コックスバザールとラカイン州での人道支援に資金を拠出し続ける必要があります。
ロヒンギャの子どもたちに、高等教育までの教育機会、保健医療や、健やかな成長に必要なその他のサービスの利用が確保されていなければ、ロヒンギャの子どもたちに明るい未来はないでしょう。 


ロヒンギャの人々を苦しめている犯罪について法的な責任を問うことも重要です。 しかし、国連安全保障理事会の恥ずべき不作為により、過去3年間人権侵害や人道に対する罪を犯した加害者は放置されています。


ロヒンギャの子どもたちは、「家に帰りたい、学校に行きたい、友だちや家族に会いたい」といいます。そして何よりも自分と愛する人の安全を願っています。 しかし、キャンプでの生活しか知らない彼らにとって、今の状況が続けば希望や夢の多くは手が届かないものだとあきらめるしかなく、夢は夢のままで終わってしまうでしょう。


また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のためにコックスバザールとラカイン州の両方で実施されたロックダウン(都市封鎖)は、人々のおかれている状況を悪化させ、命を救う支援の提供にも影響を及ぼしています。ラカイン州では終わりが見えない武力紛争により状況はさらに悪化し、子どもたちとその家族は甚大な被害を受けています。


さらに、新たな問題も浮上しています。バングラデシュとミャンマー両方の難民キャンプにある学習センターが一時的に閉鎖され、少女や子どもが安心・安全に過ごすことができるスペースがなくなったため、両国のロヒンギャの子どもたちは暴力、虐待、および人身売買のリスクに晒されています。彼らにとってこのような安全なスペースがなくなれば、メンタルヘルスやその他の支援への重要なアクセスを失うことになるのです。


現在の状況から何も変わることなく、さらに1年が経過することは許されません。ロヒンギャの子どもたちの権利を守るため、 国連安全保障理事会やASEAN(東南アジア諸国連合)を含む国際社会が断固たる行動を取り、世界で最も脆弱な子どもたちを守り、誰ひとり取り残さないよう責任を果たすまで、私たちの活動は終わることはないのです。
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