【報告】「子どもとの向き合い方を考えるオンラインセミナー3~子どもの『今』によりそい、『未来』につなげる~」を実施しました

セーブ・ザ・チルドレンは、2021911日、「子どもとの向き合い方を考えるオンラインセミナー3~子どもの発達の『今』によりそい、『未来』につなげる~」を開催しました。メイン講義のゲストには6月に実施した前回のセミナーに続き、常磐大学人間科学部教授の秋山邦久さんを迎え、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフからは特設サイト「おやこのミカタ」を紹介しました。セミナーには子育て中の方、子どもと仕事やボランティアで関わりがある方など、252人が参加しました。


セミナーのメインテーマは子どもの発達。子どものそれぞれの発達段階の知識を得て、子どもの「今」と適切に向き合っていけるようになることを参加者とともに学びました。また、子どもをどのように育てていきたいのかといった「未来」の姿を見通した子育ての重要性も講師から紹介されました。

セミナーの冒頭では、投票機能を使い「子どもの発達について悩みを感じることはありますか?」と参加者へ問いかけました。「ときどき悩む」という人が
57%と一番多く、「よく悩む」と答えた人と会わせると、75%にも上りました。つまり4人中3人は、子どもの発達について「ときどき」あるいは「よく」悩んでおり、多くの方が「発達の悩み」を抱いていることが分かります。


続いて、秋山さんが「子どもの発達の『今』によりそい、『未来』につなげる」と題して講演しました。

【子育ては点ではなく線で捉えよう】

秋山さんはまず、子どもの成長を「点」で捉えるのではなく、「線」で捉えることが大切であると説明しました。親や教員は、子どもの今だけを捉えて子育てや教育をする傾向があります。しかし、自立を子育ての目標において、子どもの将来を見通しながら、どう自立に導いていくかを考える子育てが重要です。

そのために、「子育てを生物・心理・社会的側面で捉える」ことを秋山さんは提案します。これまでは、「愛情をもって」や、「愛情があれば大丈夫」といった心にフォーカスする子育て支援が多くありましたが、今は子育ての社会的な側面と生物学的な側面、それぞれをあわせて考える必要があります。

秋山さんは、社会的な側面に関しては、急激な社会の変化に対応していくことをあげました。現在、ネット化、情報化、新型コロナウイルス感染症によるニューノーマルな生活など、子育てをめぐる状況は日々変わっていきます。社会の多様な価値観の中で、子どもたちの文脈
(注)に合わせながら子育てしていくことも必要だとの説明がありました。

注:子どもの文脈に合わせることについては、前回のセミナー報告
 をご参照ください。

【子どもの発達段階ごとの関わり方を知ろう】

一方、子育てを生物学的側面から捉えるということはどういうことでしょうか。秋山さんは、ひとつの要素として「発達」があると言います。発達の側面から子どもが、今どの時期にいるのかを見ていくことは子どもの成長を俯瞰的に捉えることになります。

たとえば、幼児期前期の子どもたちは、自分の生物としての欲求と生活上の親のしつけとのぶつかり合いを経験します。そのぶつかり合いの中で自分なりの「折り合い」を見つけ、それが「わたし」という意識や個性へとつながっていきます。ぶつかり合いのとき、親は攻撃的になる必要はなく、根気強く生活について伝えていくことが大切です。

一方、そうしたぶつかり合いがなく、子どもの欲求をすべて肯定したり、養育放棄で子どもの欲求を無視し続けたりすると、子どもの心は未熟なまま年を取ってしまう可能性があると説明されました。


そのほか乳児期や学童期、思春期の発達についてもその特徴や大人の関わり方について詳しく紹介がありました。子どもの発達段階とそれぞれの関わり方については、おやこのミカタのこちらでも紹介しています。

現在は、子どもと関わる経験を持たないまま親になる方も多いため、スキルとして子育てを学ぶこと、また同時に、どの年代であっても、親が子育てを工夫しながら楽しむことが大事である、と秋山さんは言います。

セミナー参加者からのアンケートでは、「講義がとてもわかりやすく、子どもとの関わりの中で取り入れたいものばかりだった」、「目から鱗の情報がたくさんあり、本当に興味深く最後まで楽しく見ることができました」などの感想が寄せられ、日々の子育てへの学びに繋がった様子でした。

今回のオンラインイベントは、後日動画で視聴することができます(
10月中公開予定)。
動画視聴はこちら

セーブ・ザ・チルドレンでは、今後もウェブサイト「おやこのミカタ」を基に、専門家と連携しながらポジティブな子育てを広める活動を続けていきます。

セミナーゲスト: 常磐大学人間科学部心理学科教授秋山邦久さん
大阪市立大学大学院修了後、秋田県職員として児童相談所や福祉事務所の心理判定員を16年務めた後、文教大学大学院、桜美林大学大学院、弘前大学大学院、常磐大学大学院などで臨床心理士の養成に携わる。専門は家族心理学や児童福祉臨床で、大学での講義のほか、全国の児童相談所や病院、教育センター、越谷心理支援センターなどで心理支援やカウンセリングを行っている。

(報告:国内事業部 岩井さくら)

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