【レバノン教育支援事業】子どもたちの学びの継続を目指して-ジャドさんの体験-

セーブ・ザ・チルドレンは、レバノン北部で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休校や経済状況の悪化などの理由で学校に通えないシリア難民とレバノン人の子どもたちに、2020年10月より教育支援を実施してきました。2021年11月からは北レバノン県で、この活動を引き継ぎ、教育事業2期を開始しました。今回は、シリア危機の影響を受け家族でレバノンに逃れてきてから、長期間学校に通うことができなかったジャドさん(14歳)の状況を紹介します。


ジャドさん

ジャドさんは、父と母、姉2人と一緒に2013年にシリアからレバノンへ避難してきました。その後、父と母が別居し、ジャドさんと姉2人は母と暮らしはじめました。父親からの経済的なサポートはなく、レバノンも経済危機に陥る中、ここ5年ほどは毎月違う親戚の家を転々とする生活を送っています。

幼い時から自分の家と呼べる場所がなく、周囲に気を遣いながら生活をしなければならなかったジャドさん。ある時、親戚の家に滞在し、一緒に食事をしているときに、いとこたちが「私たちのごはんを(ジャドさんたちは)タダで食べている」と話す会話が聞こえてきました。

それ以来、ジャドさんは食事もしっかり取れなくなり、周囲に迷惑をかけないよう、不満を言われないようにと、家計の支えになるため働き始めました。そのため、4年ほど学校に通っていません。

ジャドさんの母親は、「住む場所を転々として肩身の狭い思いをしながら生活し、家計を助けるために学校に通わず働く(ジャドさんの)姿を見て、彼の大事な幼少期を奪ってしまったのかもしれない」と話していました。

そんな中、ジャドさんの母親は、トリポリ市内で実施されるセーブ・ザ・チルドレンの教育支援について知り、参加を申し込みました。学習の遅れに不安を感じているジャドさんは、母親の励ましを受けながら、基本的な読み書き・計算の授業を受けることとなりました。


授業を受けた体験をスタッフに語る様子

 「最初の授業では、自分の読み書きの力に自信がなく、他の生徒や教員に笑われるのではないかと心配で、とても緊張しました。しかし、母が励まし応援してくれ、クラスを受け続けることができ、だんだん授業に参加することがとても楽しくなりました」とジャドさんは話します。

アラビア語、英語、そして数学の授業を受け、「今では英語で100まで数えることもできます」とうれしそうに話してくれました。

また、ジャドさんの母親は、「授業を受け始めてから、ジャドがたちまち自信をつけ、希望を持って成長していく姿を目の当たりにしました。自分自身の考えを以前より表現するようになり、自分に誇りを持つようになりました」と話しています。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、遠隔式(オンライン)での授業となりましたが、ジャドさんは積極的に楽しみながら受講し、無事修了することができました。

長期化する新型コロナウイルス感染症やレバノン経済危機の影響で、ジャドさんのような脆弱な状況に置かれている多くの子どもたちは、学びの機会を奪われています。このような状況に対応するため、セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちが安心して、質の高い教育を受けられるよう、支援を継続していきます。

本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

(海外事業部 レバノン教育事業担当 佐藤秀美)
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