(公開日:2022.02.28)
【イエメン教育支援 事業完了報告】学習継続のための教育支援
- イエメン
イエメンで紛争が激化してから、約7年が経過しました。人口の66%にあたる2,070万人が支援を必要としており、そのうち54%が18歳未満の子どもたちです¹。紛争や新型コロナウイルス感染症の影響により生じた教員、衛生施設や学用品の不足、空爆によって破壊された校舎、学校閉鎖などの理由で、2021年には約550万人の子どもが教育支援を必要としていました²。
これらの状況に対応するために、セーブ・ザ・チルドレンは、2020年10月1日から2021年10月31日にかけて紛争の影響を強く受けているイエメン北部のハッジャ県にて、公立学校の校舎や水・衛生施設の修繕・整備、学習継続のための支援活動を実施しました。約1年間実施した支援事業について報告します。
ハッジャ県はイエメン北部に位置し、隣国サウジアラビアと国境を接しています。
(出典: Berghof Foundation and Political Development Forum Yemen, Local Governance in Yemen: Resource Hub)
ハッジャ県はイエメン北部に位置し、隣国サウジアラビアと国境を接しています。
(出典: Berghof Foundation and Political Development Forum Yemen, Local Governance in Yemen: Resource Hub)
事業では、紛争の影響による校舎の損壊が特に大きく、学習環境に多大な影響を受けているハッジャ県内の公立学校4校にて、校舎の修繕およびトイレや手洗い場などの修繕・整備工事を実施しました。また、修繕されたこれら水・衛生施設の維持管理、配管設備に問題が生じた際に対処ができるよう、各校2人ずつ、計8人の設備管理者に研修を実施し、修繕キットを配布しました。
また、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、学校での感染予防策を万全にできるよう、事業対象校4校に対し、石けんやトイレの清掃用具、ごみ箱などの衛生用品を配布しました。そして、対象校に通う生徒の家族と教員など800世帯に対しても石けん、手洗い用バケツ、手洗い用タオルなどが入った世帯用感染予防キットを提供しました。
校舎の環境改善に加えて、子どもたちが継続的に学習を行えるよう、あわせて1,510人の生徒にバックパックや鉛筆、消しゴム、鉛筆削り、定規、筆箱、ノートなどが入った学習キットを、計66人の教員に成績記録簿や出席登録簿、授業立案ノート、チョーク、マーカーなどが入った教員用キットを支援しました。
また、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、学校での感染予防策を万全にできるよう、事業対象校4校に対し、石けんやトイレの清掃用具、ごみ箱などの衛生用品を配布しました。そして、対象校に通う生徒の家族と教員など800世帯に対しても石けん、手洗い用バケツ、手洗い用タオルなどが入った世帯用感染予防キットを提供しました。
これら学習環境を整える活動に加え、教育の質の向上を目指し、教員の能力強化研修も行いました。対象4校から66人の教員が研修を受講しました。
研修を受けた教員は、新型コロナウイルス感染症による学校閉鎖の影響で学習が継続できていない子どもたちや、学校閉鎖以前から通学していなかった子どもたちに対して補習授業を行いました。その結果、事業完了時までに1,120人の子どもたちが補習授業を受講しました。
研修を受けた教員は、新型コロナウイルス感染症による学校閉鎖の影響で学習が継続できていない子どもたちや、学校閉鎖以前から通学していなかった子どもたちに対して補習授業を行いました。その結果、事業完了時までに1,120人の子どもたちが補習授業を受講しました。
さらに、保護者を代表して活動する保護者会を各校1グループずつ形成し、計44人が参加しました。保護者会は補習授業を受ける子どもたちのサポートや校舎の修繕工事の様子を監督し、意見を出すなど、重要な調整役として事業が終わった後も活動しています。
ここで、私たちの活動に参加したリマさんを紹介したいと思います。リマさんは事業対象校の1つに通う13歳の少女です。家族と一緒に市街地の洞窟に住んでいます。以前は家族でイエメン南西部のタイズ県に住んでいましたが、紛争が始まって父親が職を失い、家族で避難生活を送る中、この洞窟にたどり着きました。両親に収入はなく、経済的に困窮しています。セーブ・ザ・チルドレンの支援で学習キットを得て、再び学校に通えるようになりました。
リマさんが住む洞窟
リマさんが住む洞窟内部
ここで、私たちの活動に参加したリマさんを紹介したいと思います。リマさんは事業対象校の1つに通う13歳の少女です。家族と一緒に市街地の洞窟に住んでいます。以前は家族でイエメン南西部のタイズ県に住んでいましたが、紛争が始まって父親が職を失い、家族で避難生活を送る中、この洞窟にたどり着きました。両親に収入はなく、経済的に困窮しています。セーブ・ザ・チルドレンの支援で学習キットを得て、再び学校に通えるようになりました。
リマさんが住む洞窟
「私は4人のきょうだいの中で一番年上です。以前はすてきなアパートに住んでいましたが、戦争のせいでお父さんが職を失ったため、町を離れることを余儀なくされ、この洞窟にたどり着きました。とても貧しくなり、1日1食しか食べていません。以前のようなアパートに住んで、自分の部屋、自分のクローゼットや洋服を持てたらいいのにと思いますが、お金がありません。
リマさんが住む洞窟内部
今は学校に行けてうれしいです。セーブ・ザ・チルドレンの活動で、私ときょうだいは学校かばんをもらい、学校も改装されました。毎朝、妹と一緒に水をくみに行き、それから学校に行きます。午後に家に帰ってきて、母を手伝ったり宿題をしたりして、夕食に何か食べるものがあれば食べ、日没には寝ています。大きくなったら医者になって、貧困の状況にある人を無料で治療したいです。」
イエメンにおいて紛争が長期化する中、子どもたちが継続的に学習できる環境を整備することは喫緊の課題となっています。セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下および感染症拡大の緊急下においても、子どもたちが安心して学習を継続できるよう、イエメンにおける教育支援を実施していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
海外事業部イエメン事業担当 宮脇麻奈、小山光晶
¹OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.4
²Global Education Cluster Yemen YEMEN_2021HNO.pdf | Powered by Box