【ベトナム栄養事業:事業完了報告】山岳地域の子どもたちの健康的な食と栄養を確保するために(3)


2021年12月に日本政府が開催した東京栄養サミットでは、各国政府、ドナーをはじめ多様なステークホルダーより多くのコミットメントが発表されました。セーブ・ザ・チルドレンも今後3年間で約5億米ドル(約567億円)の資金拠出を行うことを発表し、子どもたちの栄養不良対策への取り組みのさらなる強化を目指します。

2017年に事業を開始し、2021年12月末に終了したセーブ・ザ・チルドレンがベトナム北部の山岳地域で実施した栄養事業では、食料確保の支援(農業支援)と母子保健サービスの改善(保健支援)の両面からの支援を通じて、母親と5歳未満の子どもの栄養不良の改善を目指し、約3万6,000人に支援を届けました。

食料確保の支援では、コメ栽培や養鶏指導、家庭菜園の普及、たい肥作りを伝えました。また、母子保健サービスの改善では、保健医療施設での妊婦の産前健診の受診を促進し、母親の健康管理についての研修を行い、また、出産後の母乳育児の促進や離乳食の調理指導も行いました。

活動では、子どもの父親や祖父母も理解が深まるよう母子の健康や栄養摂取の重要性について研修への参加や、家庭内で共有する機会をつくりました。

具体的には、妊娠期間中の母親の健康管理や子どもが産まれたあと6ヶ月間は母乳のみで育児をすることなどがあげられます。これにより、母親の産前・産後の期間での農業や家事をはじめとする労働の負担が、家庭内での協力により軽減されました。また、母親の産前健診の受診頻度の向上や母乳育児を行うための健康や時間の確保につながりました。


栄養に関する意見交換の会議

活動に参加した母親からは、「(子どもにとっての)祖父母は、生後間もない私の子どもにおかゆを与えるようにいつも話していましたが、研修受講後、乳幼児には生後早い時期におかゆをあげるのは健康によくないことを知ることができました」といった声や、「家庭内の仕事の負担を軽減してくれたり、休みの時間を確保してくれたり、栄養のある食事を摂るように勧めてくれたりしました」といった声があがりました。


父親が子どもに離乳食を食べさせている様子


2021年の事業終了前には、事業開始前と後での変化をみるための調査(エンドライン調査)を行い、これまでの活動の達成状況を確認しました。

生後6ヶ月までの完全母乳育児の実践状況、6ヶ月以降での少なくとも4種類以上の食品群を含む離乳食の摂取状況、産前健診の受診率を向上させることを栄養改善に向けた行動変容について調べました。

下記表にある通り、それぞれが大きく改善し、今後も、対象地域での子どもの栄養不良の改善がなされることが期待されます。


事業は2021年12月末で終了しましたが、現地の行政機関が中心となり、継続して活動を実施することが期待されます。

活動期間を通して、地方行政機関が研修に参加したり、活動の進捗をモニタリングしたりしました。また、関係者で定期的な会合の開催も行いました。これにより、現地の行政機関の活動の主体性を確保し、子どもの慢性栄養不良の問題や栄養に配慮した農業(家庭菜園や養鶏による卵の確保など)を推進することが、活動地域の地方行政機関の活動計画に盛り込まれました。

本事業は、皆さまからのご寄付と、世界銀行の日本社会開発基金(Japan Social Development Fund)からの助成、また、2021年には日本の民間企業6社(株式会社資生堂、株式会社ポケモン、株式会社ウェルカム、株式会社魚国総本社、イオン株式会社、エースコック株式会社)からのご支援により実施しました。

(海外事業部 梛野耕介)






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