(公開日:2022.06.06)
報告書『攻撃される教育 2022』発表
- アドボカシー
「新型コロナウイルス感染症のために、去年はずっと学校に行けませんでした。でも、今年はあえて行かないことにしました。学校に行きたいけれど、怖いからです。校門は閉まっているのに、そのなかには兵士がいて、その兵士が怖いのです。私たちが学校にいる間に、爆弾テロが起こるかもしれないと思うと怖いです。」ミャンマー・マグウェイ地域の少女(10歳)
セーブ・ザ・チルドレンを含む国際NGOや国連機関、教育研究機関が参加する「教育を攻撃から守る世界連合(Global Coalition to Protect Education from Attack:GCPEA)」は、教育への攻撃の実態を明らかにする報告書『攻撃される教育2022(Education under Attack 2022)』を発表しました。
この報告書は、2018年と2020年に発表された 報告書に続くもので、今年発表された報告書では、紛争の影響を受ける28ヶ国において、2020年から2021年に確認された、教育への攻撃や軍事利用について調査・報告しています。
新型コロナウイルス感染症の大流行により世界中の学校や大学が閉鎖されているなか、教育はたびたび暴力的な攻撃に晒されており、教育への攻撃や教育施設の軍事利用は、その前の2年間(2018年と2019年) と比較して増加していることが明らかになりました。
2020年と2021年、GCPEAが確認した教育への攻撃や学校・大学の軍事利用の事例は、5,000件を超えました。これらの事例で9,000人以上の学生や教育関係者が拉致されたり、一方的に逮捕されたり、負傷したり、あるいは殺害されたりしました。毎日平均6件の教育への攻撃や学校の軍事利用の事例が報告されています。
教育に対する攻撃と教育施設の軍事利用には、主に次の形態があります。
1)学校への攻撃
2)学校の生徒、教員、その他の教育関係者に対する攻撃
3)学校・大学の軍事利用
4)学校・通学路での子どもの徴兵・徴用
5)学校・大学・通学路での性暴力
6)高等教育(大学・研究等)への攻撃
上記のうち最も多いのは、1)学校への攻撃です。例えば、シリアでは、2020年から2021年に爆発性兵器を使用した学校や大学への攻撃が少なくとも70件報告されています。
シリアに暮らすローズさん(13歳)は次の通り話します。
「私は以前、町の南端にある学校に通っていましたが、紛争が続いている間に破壊されました。地下にある別の学校に移りましたが、そこも攻撃を受けて破損し、もう学ぶ場所ではなくなってしまいました。2ヶ所も学ぶ場所を失い、今は新しい学校に通っています。私は誰にも怖いとは言いませんでしたが、先生が『怖いと感じていいんだよ』と言ってくれました。今は、自分の学校がまた攻撃を受けることを恐れていると伝えることができます。」
2021年5月の戦闘で爆発物による被害を受けたパレスチナ自治区のガザ地区にある教室。イスラエル軍とパレスチナ武装勢力の敵対行為が激化した10日間、290校以上の学校が攻撃により被害を受けました。
報告対象となっている28ヶ国において、学校の生徒、教員、職員に対する攻撃事例は2020年~2021年に630件以上確認され、この攻撃で、2,400人以上の学生、教員、教育関係者が負傷や死亡、拉致、脅迫され、約2,300人が逮捕、拘束されたと報告されています。これらの事例は、2020年と2021年に、GCPEAが確認した教育への攻撃や学校・大学の軍事利用の5,000件を超える事例で、生徒や教員が死傷した事例とは別のものです。
カメルーンのある教員は、次の通り述べます。
「教員は毎日、毎時間、迫害されています。ある教員は残酷にも殺されてしまいました。また、体の一部を奪われ、地域から追い出され、国内避難民となった者もいます。職を失った者もいます。私は被害を受けた教員たちのことを考えると心が痛みます。平和が戻ってくることを祈ります。」
2020年から2021年に確認された学校の軍事利用の事例は約570件にのぼり、前回の報告書の2倍以上になります。軍事目的で使用された教育施設が最も多かったのはミャンマーで、少なくとも200件が報告されています。国連は、軍事クーデターが発生した2021年2月から9月までの間に、治安部隊が176の学校や大学を使用したと報告しています。
また、学校・通学路での子どもの徴兵・徴用や性暴力、高等教育に対する攻撃についても、同報告書は述べています。
ナイジェリアの国立女子中等教育学校襲撃事件の目撃者は次の通り語っています。なお、279人の女子生徒たちは後に解放されました。
「襲撃者たちが学校の門を破って、警備の男を撃ちました。それから彼らは寮に移動し、祈りの時間だと言って女子生徒を起こしました。全員が集められた後、少女たちは泣きながら、森に連れて行かれました。彼らは森に向かうときにも空中に向けて銃を撃っていました。」
教育への攻撃を止めるために、国際社会はこれまで取り組みを進めてきました。2015年に策定された、学校を攻撃から守り、軍事利用をやめるための政治宣言である「学校保護宣言」 もその一つです。
2022年5月時点で、114ヶ国が賛同していますが、日本政府はまだ賛同を表明していません。また、国連安全保障理事会は、2020年9月に「学校への攻撃に関する議長声明」 を、2021年10月に「学校保護宣言」に明示的に言及した「教育への攻撃に関する決議第2601号」 を採択し、教育への攻撃や軍事利用について強い非難の姿勢を示しています。
しかし、ウクライナ をはじめとして世界各地で学校への攻撃や軍事利用は現在も行われています。学校を攻撃から守るための解決策として、GCPEAは、以下を提言しています。
・教育への攻撃を終わらせ、「学校保護宣言」に賛同し、「武力紛争時の軍事利用から学校および大学を保護するためのガイドライン」を実施すること
・教育への攻撃を監視し報告すること
・加害者の責任を追及し、被害者に支援を提供すること
・教育への攻撃を防止するための計画を立て、攻撃による影響を軽減すること。
Global Coalition to Protect Education from Attack (GCPEA)の報告書特設サイト(英語)はこちら
報告書全文(英語)はこちら
報告書概要(日本語)はこちら ※簡易版WORD、印刷はこちらが適しています。
報告書概要(日本語)はこちら ※フォーマット版
セーブ・ザ・チルドレンを含む国際NGOや国連機関、教育研究機関が参加する「教育を攻撃から守る世界連合(Global Coalition to Protect Education from Attack:GCPEA)」は、教育への攻撃の実態を明らかにする報告書『攻撃される教育2022(Education under Attack 2022)』を発表しました。
この報告書は、2018年と2020年に発表された 報告書に続くもので、今年発表された報告書では、紛争の影響を受ける28ヶ国において、2020年から2021年に確認された、教育への攻撃や軍事利用について調査・報告しています。
新型コロナウイルス感染症の大流行により世界中の学校や大学が閉鎖されているなか、教育はたびたび暴力的な攻撃に晒されており、教育への攻撃や教育施設の軍事利用は、その前の2年間(2018年と2019年) と比較して増加していることが明らかになりました。
2020年と2021年、GCPEAが確認した教育への攻撃や学校・大学の軍事利用の事例は、5,000件を超えました。これらの事例で9,000人以上の学生や教育関係者が拉致されたり、一方的に逮捕されたり、負傷したり、あるいは殺害されたりしました。毎日平均6件の教育への攻撃や学校の軍事利用の事例が報告されています。
教育に対する攻撃と教育施設の軍事利用には、主に次の形態があります。
1)学校への攻撃
2)学校の生徒、教員、その他の教育関係者に対する攻撃
3)学校・大学の軍事利用
4)学校・通学路での子どもの徴兵・徴用
5)学校・大学・通学路での性暴力
6)高等教育(大学・研究等)への攻撃
上記のうち最も多いのは、1)学校への攻撃です。例えば、シリアでは、2020年から2021年に爆発性兵器を使用した学校や大学への攻撃が少なくとも70件報告されています。
シリアに暮らすローズさん(13歳)は次の通り話します。
「私は以前、町の南端にある学校に通っていましたが、紛争が続いている間に破壊されました。地下にある別の学校に移りましたが、そこも攻撃を受けて破損し、もう学ぶ場所ではなくなってしまいました。2ヶ所も学ぶ場所を失い、今は新しい学校に通っています。私は誰にも怖いとは言いませんでしたが、先生が『怖いと感じていいんだよ』と言ってくれました。今は、自分の学校がまた攻撃を受けることを恐れていると伝えることができます。」
2021年5月の戦闘で爆発物による被害を受けたパレスチナ自治区のガザ地区にある教室。イスラエル軍とパレスチナ武装勢力の敵対行為が激化した10日間、290校以上の学校が攻撃により被害を受けました。
報告対象となっている28ヶ国において、学校の生徒、教員、職員に対する攻撃事例は2020年~2021年に630件以上確認され、この攻撃で、2,400人以上の学生、教員、教育関係者が負傷や死亡、拉致、脅迫され、約2,300人が逮捕、拘束されたと報告されています。これらの事例は、2020年と2021年に、GCPEAが確認した教育への攻撃や学校・大学の軍事利用の5,000件を超える事例で、生徒や教員が死傷した事例とは別のものです。
カメルーンのある教員は、次の通り述べます。
「教員は毎日、毎時間、迫害されています。ある教員は残酷にも殺されてしまいました。また、体の一部を奪われ、地域から追い出され、国内避難民となった者もいます。職を失った者もいます。私は被害を受けた教員たちのことを考えると心が痛みます。平和が戻ってくることを祈ります。」
2020年から2021年に確認された学校の軍事利用の事例は約570件にのぼり、前回の報告書の2倍以上になります。軍事目的で使用された教育施設が最も多かったのはミャンマーで、少なくとも200件が報告されています。国連は、軍事クーデターが発生した2021年2月から9月までの間に、治安部隊が176の学校や大学を使用したと報告しています。
また、学校・通学路での子どもの徴兵・徴用や性暴力、高等教育に対する攻撃についても、同報告書は述べています。
ナイジェリアの国立女子中等教育学校襲撃事件の目撃者は次の通り語っています。なお、279人の女子生徒たちは後に解放されました。
「襲撃者たちが学校の門を破って、警備の男を撃ちました。それから彼らは寮に移動し、祈りの時間だと言って女子生徒を起こしました。全員が集められた後、少女たちは泣きながら、森に連れて行かれました。彼らは森に向かうときにも空中に向けて銃を撃っていました。」
教育への攻撃を止めるために、国際社会はこれまで取り組みを進めてきました。2015年に策定された、学校を攻撃から守り、軍事利用をやめるための政治宣言である「学校保護宣言」 もその一つです。
2022年5月時点で、114ヶ国が賛同していますが、日本政府はまだ賛同を表明していません。また、国連安全保障理事会は、2020年9月に「学校への攻撃に関する議長声明」 を、2021年10月に「学校保護宣言」に明示的に言及した「教育への攻撃に関する決議第2601号」 を採択し、教育への攻撃や軍事利用について強い非難の姿勢を示しています。
しかし、ウクライナ をはじめとして世界各地で学校への攻撃や軍事利用は現在も行われています。学校を攻撃から守るための解決策として、GCPEAは、以下を提言しています。
・教育への攻撃を終わらせ、「学校保護宣言」に賛同し、「武力紛争時の軍事利用から学校および大学を保護するためのガイドライン」を実施すること
・教育への攻撃を監視し報告すること
・加害者の責任を追及し、被害者に支援を提供すること
・教育への攻撃を防止するための計画を立て、攻撃による影響を軽減すること。
Global Coalition to Protect Education from Attack (GCPEA)の報告書特設サイト(英語)はこちら
報告書全文(英語)はこちら
報告書概要(日本語)はこちら ※簡易版WORD、印刷はこちらが適しています。
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