【ロヒンギャ難民支援 事業開始】生活環境改善事業

ミャンマーのラカイン州北部における大規模な暴力および人権侵害を逃れ、多くのロヒンギャの人たちがバングラデシュに避難してから5年が経ちました。ロヒンギャ難民のミャンマーへの帰還の目途は立っておらず、バングラデシュ・コックスバザールに位置するロヒンギャ難民キャンプには2022年7月時点で93万6,733人が暮らしています¹。居住している人口に対し難民キャンプは狭く、人口過密状態です。


住居(シェルター)同士が密集しているロヒンギャ難民キャンプ 

さらに、ロヒンギャ難民は、バングラデシュの市民権を持っていないため、就労や難民キャンプ外への移動が認められておらず、教育や医療など生きるために必要な基本的なサービスの利用に制限があります。また、住居(シェルター)の建設に使用できる資材も竹やビニールシートのみと制約があり、耐久性の低いシェルターに住んでいます。こうした状況のため、ロヒンギャ難民の力だけでは生活を営んでくことは難しく、人道支援にも頼らざるを得ない状態にあります。

しかし、ロヒンギャの人たちが生きるための支援を継続的に必要としている一方で、新型コロナウイルス感染症拡大やウクライナ危機などの影響により国際的な関心や支援は縮小傾向にあり、一層困難な状況に置かれています。


モンスーンの影響で洪水となったロヒンギャ難民キャンプ

セーブ・ザ・チルドレンは2022年9月1日より、ロヒンギャ難民の命や生活を守るために水・衛生支援とシェルター支援事業を開始しました。

この事業では、命を守る基本的な支援に加えて、ロヒンギャ難民を含む地域の人たちが中心となってキャンプ内の生活環境を改善していけるように、能力強化にも注力していきます。

<水・衛生支援>
事業対象地域において給水システムや深井戸、手洗い場、トイレ、水浴び場といった水・衛生施設の修繕・維持管理を行います。同時に、大勢の人たちが避難してきたことにより影響を受けているホストコミュニティ*の学校の手洗い場やトイレの修繕も計画しています。
*ホストコミュニティとは、難民が避難してくる前から地域に住んでいる人たちのことを意味し、難民の人たちが避難してきたことにより社会的、経済的な影響を受けています。(ホストコミュニティでの支援に関してはこちらのブログをご覧ください。)


給水施設を修繕している様子 

また、地域住民で構成されている「水・衛生委員会」や「衛生促進ボランティア」の活動支援を通して、難民の人たちが主体となって水・衛生施設の管理ができるように支援していきます。

難民キャンプとホストコミュニティの両方で、子どもを含む地域に暮らす人たちが、新型コロナウイルス感染症や下痢症などの感染症から自身や家族を守ることができるように、手洗いやごみの管理など基本的な衛生習慣について衛生啓発セッションを実施します。そのほかにも、思春期の女子を対象とした月経衛生管理セッションも行います。


衛生啓発セッションの様子 

<シェルター支援>
シェルターの設置に使用できる資材が竹やビニールシートなどに限られるため、ロヒンギャ難民の人たちは、耐久性の低いシェルターに住まざるを得ない状況にあります。さらに、難民キャンプは丘陵地にあり、毎年モンスーンの季節には洪水や土砂などによる被害が多発しています。


洪水の影響で倒壊の危険があるシェルター 

そのため、難民の人たちが主体となってシェルターの設置・修繕を行うことができるように能力強化を行います。特に、今回の支援では女性を対象に能力強化を行います。

難民キャンプでは、今までシェルター関連の作業は男性の仕事と考えられており、女性には能力強化の機会がありませんでした。しかし、女性を対象とすることで、特に脆弱な立場に置かれやすい女性や、女性が世帯主の世帯のエンパワーメントにつながります。


シェルターの設置・修繕に従事する女性 

これらの活動を通して、ロヒンギャ難民の命や生活を守り、かつ地域住民が主体となって生活環境を改善していけるように支援を行っていきます。

本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

(海外事業部 田部井梢)

¹UNHCR, Joint Government of Bangladesh – UNHCR Population Factsheet
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