【カンボジア】小学校で子どもへの暴力をなくすためには

11月は児童虐待防止推進月間です。
子どもたちが暴力やいじめに悩まず、安心して学べる場をつくるにはどうしたらよいのでしょうか。これは、日本だけでなく、世界中の国々に共通する大きな課題だと言えるでしょう。カンボジアの小学校でも同じ問題を抱えています。


カンボジアの学校の様子

<カンボジアの子どもたちが置かれた現状>
カンボジアの教育制度は、日本と同じ6・3・3制で、子どもたちは6年間を小学校で学びます。

多くの学校では、授業は午前と午後の2部交代制となっていて、子どもたちは、午前・午後のいずれかに学校で授業を受けます。国内で起こった戦闘で多くの知識人が犠牲となり、教員が不足して交代制を採らざるを得ないという事情があります¹。

カンボジアの子どもたちにとって貴重な学びの時間ですが、安全な場所であるべき学校では、子どもに対する暴力の問題が深刻化しています。

2014年に発表された調査結果では、73%の生徒が、学校で少なくとも1回の暴力を受けた経験があると答えています²。

この暴力には、身体的・精神的・性的暴力、いじめ、体罰などが含まれており、子どもたちは学校においてさまざまなかたちの暴力のリスクに晒されています。

セーブ・ザ・チルドレンは、2022年7月にカンボジア・コンポンチャム州にて、小学校での子どもに対する暴力についての調査を実施し、43校の生徒479人から回答を得ました。

その結果、調査前の1ヶ月間のみについて質問したにもかかわらず、約3.3人に1人の子どもたち(29.7%)が、何らかの暴力を経験したという結果でした。これら暴力の主な加害者は教員や同級生たちでした。この中には3.4%の性的暴力も含まれます。

また、子どもたちの養育者を対象とした調査では、7割以上が、しつけのためには体罰が必要であると考えていることが分かりました。



対象地域の小学校における暴力の内訳

<セーブ・ザ・チルドレンが取り組む小学校における暴力削減事業>
セーブ・ザ・チルドレンは、2022年3月より、コンポンチャム州のカンメア郡で、学校における子どもに対する暴力削減のための活動を3年間の計画で実施しています。この活動を通して、カンボジアの小学校で子どもに対する暴力を減らし、子どもたちにとって安心・安全に学べる場をつくることを目指します。事業では、主に3つのことに取り組んでいます。


<自分たちで理解し、自分たちの計画を立てる>
2022年9月、カンメア郡のある小学校では、子どもたちと教員が大きな模造紙を前に活発に話し合っていました。

議題は自分たちの学校での体罰、いじめ、精神的な暴力などです。簡単な話題ではありませんが、紙に書いた等身大の子どもの絵を前に、自分の経験、友だちの経験を思い出しながら、学校にはどのような暴力が存在するか書き込んでいきます。

こんな言葉を言われて傷ついた(心臓)、こんな罰にあった(手、足、顔など)、こんな光景を見た(目)。

子どもたちの声が反映されたボディ・マッピング(体の地図)が完成しました。体と関連づけることで、子どもたちにとって議論がしやすくなり、地図として可視化することで、どこにリスクがあるか俯瞰しやすくなります。

ボディ・マッピングを使って学校における暴力について話し合う子どもと教員

学校の子どもの保護担当の教員からは、「今日の活動はとても大切だと思います。これまで、どうやって子どもたちの話を聞けばよいのか分かりませんでした。今日、こうして子どもたちから話を聞くことができてとてもよかった」という声が寄せられました。

こうして把握した課題に対して、またこの取り組みだけでは把握できなかった問題にも目を向け、子どもたち、学校・地域の大人たちとともに、暴力のない安心・安全な学びの場づくりに取り組んでいきます。

本事業は皆様からのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力からの支援で実施しています。

(カンボジア)事業担当:高木 加代子

¹外務省: 世界の学校を見てみよう! カンボジア王国 (mofa.go.jp)
²Child Rights Now, “Unlocking Cambodia’s future. How child rights are the key to economic growth and development in Cambodia”, 2019, p.17


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