【報告書】『パンデミック条約―レジリエントな保健システムを構築し、子どもたちの健康への権利を実現するための重要な機会』発表

セーブ・ザ・チルドレンは、英国ユニセフ協会と共同で、報告書『パンデミック条約―レジリエントな保健システムを構築し、子どもたちの健康への権利を実現するための重要な機会』を発表しました。本報告書では、パンデミック条約の採択が、子どもにとって何を意味するのかについて、4つのテーマ(1)保健システムのレジリエンスとキャパシティ、(2)保健医療人材、(3)コミュニティの参加とガバナンス、(4)資金調達、に沿って議論を展開しています。

 
                  


(1)        保健システムのレジリエンスとキャパシティ

プライマリーヘルスケアは、保健上の危機に対する第一の、そして最も重要な予防線です。保健システムの脆弱性は、人々の命を救うために不可欠なサービスの維持や、緊急事態に対処する能力を妨げています。

 

プライマリーヘルスケアを中心としたレジリエントな(回復力のある)保健システムを構築し、健康安全保障を実現しなければなりません。そのためには、子どもの健康にかかわるすべてのサービスをあらゆるレベルで優先させることが必要です。

 

これには緊急時に質の高いプライマリヘルスケアサービスと、予防接種システムのレジリエンスを強化すること、またコミュニティベースのサーベイランスと情報管理システムの強化、早期警戒、早期の症例確認などの迅速な対応が含まれます。

 

(2)        保健医療人材

保健医療従事者は、保健上の緊急事態に効果的に対応し、子どもたちの健康に対する権利を実現するために不可欠です。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の大流行(パンデミック)の間、その重要性に対する十分な認識と支援を受けられていませんでした。

 

すべての子どもに保健医療サービスを提供するためには、コミュニティ・ヘルスワーカー(CHW)を含む保健医療従事者に十分な資源や装備、保護が提供されることが必要です。そして、CHWの雇用、支援、維持を優先させることで、地域医療の人材と能力の制約に対処することが重要です。

 

(3)        コミュニティの参加とガバナンス

パンデミックはコミュニティで始まり、コミュニティで終わります。コミュニティと市民社会の参加は、信頼関係が築かれ、知識と専門性が提供され、子どもたちが取り残されないことを確かにする上で中心となるものです。

 

保健上の緊急事態の予防、準備、対応(PPR)において、真に効果的で権利に基づいたアプローチを進めるためには、コミュニティと市民の専門性を最大限に活用することが不可欠です。

 

(4)        資金調達

保健上の緊急事態の影響を軽減するためには、予測可能で持続可能な資金調達が鍵となります。

 

資金の欠如は、保健上の緊急事態の予防、準備、対応(PPR)における足かせとなってきました。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと健康安全保障という二つの目標を達成するためには、あらゆる資金源と手段を活用することが重要です。

 

また、PPR能力開発とレジリエントな(回復力のある)保健医療システムのための明確な資金調達計画を策定する必要があります。保健上の緊急事態の予防、準備、対応に十分な投資をすることができるよう、パンミック条約における資金調達と、その他のPPR関連の資金調達との関係性を明確にしなければなりません。

 

新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその対応において、子どもの権利を優先し、プライマリーヘルスケアのアプローチを通じてレジリエントな保健システムに投資することができなかったことが、深刻な結果を招いたことは明確になっています。

 

保健システム強化を優先すること、コミュニティや市民社会の参加を確保することが、パンデミックの予防と準備の取り組みに不可欠な要素です。

 

この報告書では、加盟国の支持を受け、新しいパンデミック条約に採用されれば、国際保健体制に決定的な変化をもたらす可能性のある、明確な条項と対策を示しています。

 

以下は、報告書で示している提言のまとめです。

 

I. 保健システム強化

1. 強固でレジリエントな保健システムを構築する

強固なプライマリーヘルスケアと予防接種サービスを中心とする、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと世界的な健康安全保障を達成するため、また、保健上の危機に備え、それに対応するための各国の準備に対し投資する。

 

2. 保健医療従事者の雇用、維持、支援、報酬を優先する。

コミュニティ・ヘルスワーカーを含む保健医療従事者の雇用、維持、支援、報酬を優先し、常に保健医療ケアを提供することができる、訓練された意欲的な保健医療人材を確保する。

 

3. 地域保健医療従事者が保健システムの一部として機能するための障壁を取り除く

緊急時においても、保健・栄養サービスへの公平なアクセスを維持できるようにする。

 

II.資金調達

4. 長期的かつ持続可能な資金調達を確保する

保健システムを強化し、保健上の危機に備え、各国政府は、パニックとネグレクトの連鎖を断ち切るためにレジリエントなシステムの基盤を構築する。

 

5. 政府開発援助(ODA)を維持し、優先順位をつける

保健分野への政府開発援助(ODA)を維持、優先させる。しかし、パンデミック対策基金への投資とは分けること。

 

?参加

6. コミュニティと市民社会がグローバル・ヘルス・ガバナンスのプロセスに組み込まれるようにする

保健上の緊急事態の影響を最も受ける人々の声を聞き、彼/彼女らのニーズを理解することが重要。その上でパンデミック対策の優先順位が決定されるべきである。

 

7. 透明性のある情報共有と包括的なプロセスを提供する

市民社会の有意義な関与と統合を可能にする透明性の高い情報共有と包括的なプロセスを提供する。

 

8. 低・中所得国政府および市民社会の正式な参加を要請する

すべてのパンデミック対策機関やメカニズムのガバナンスに、低・中所得国政府および市民社会が正式に参加できるようにすることを要請する。

■報告書の全文はこちら

PAGE TOP

〒101-0047 東京都千代田区内神田2-8-4 山田ビル4F