【報告】院内イベント 『すべての女性と子どもの健康のために―グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)が果たす役割とは?』 開催

セーブ・ザ・チルドレンは、2023622日、衆議院第一議員会館にて日本国際交流センター(JCIE)との共催により、イベント 『すべての女性と子どもの健康のために―グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)が果たす役割とは?』 を開催しました。イベントには、エチオピア全権公使、国会議員、関連各省庁、国際保健に関心のあるユース、財団、NGOなど、40人以上が参加しました。




「女性・子ども・青少年のためのグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(Global Financing Facility for Women, Children and AdolescentsGFF)」は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、母子・青少年の健康・栄養(RMNCAH+N)の改善を目的とし、世界銀行内に設立された資金調達のための国際機関です。

 

2015年の設立以来、GFFは各国主導の国家保健計画の策定・実行を支援してきました。特に、各国におけるマルチステークホルダー・プラットフォームを通じて、国家保健計画の達成に向けた、政府、開発パートナー、市民社会、民間企業などの連携の推進に力を入れています。

 

またGFFは、事業実施国に対して成果主義に基づき世界銀行による新たな資金を供与することに加え、既存の資金を効果的に保健分野に動員するための「触媒」としての役割を果たす点が最大の特長と言えます。

 

このイベントの目的は、特に新型コロナウイルス感染症の影響により、母子保健分野における改善に後退が見られる低・中所得国において、GFFがすべての女性と子どもの健康の増進、またUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成に向けていかに貢献しうるのか、参加者の理解を促進することです。

 

GFF が、国レベルでのプライマリーヘルスケアや保健システム強化、資金動員において果たすユニークな役割について、そのインパクトを調査した事例研究報告や現場で活動するユースの活動報告を通じて伝えるとともに、株式会社PoliPoliの協力を得て、特に国際保健に関心のあるユースと連携し、母子・青少年の健康と栄養に取り組んでいくことの重要性を発信しました。

 

日本国際交流センター(JCIE)理事長 狩野功氏のあいさつによって開会したイベントには、オンラインと対面をあわせて計7人が登壇しました。

 

まず、パリからオンラインで参加したGFF戦略・ドナー担当リード ブルーノ・リヴァラン氏より、UHC達成に向けてGFFが果たす役割と、2021年から2025年の戦略の概要について説明がありました。

 

GFFは、家族計画やワクチンなどのアクセスの改善や、人的資本やサプライチェーンを含む保健システムの強化、また追加的資金の動員などに取り組んできました。

 

2025年までの戦略として、1) 支援国のリーダーシップの支援、2) 特にジェンダー間、地理的、経済的な不均衡への対応、3) 健康危機下においても強固な必須保健サービスの確保、4) コミュニティレベルにも資金が届くような財政改革、5) 意思決定のための適切なデータシステムの構築などにさらに注力していくことが明言されました。


次に、セーブ・ザ・チルドレン 島村由香より、20233月にエチオピアで実施したGFFに関するインパクト調査の主な結果を共有しました。

 

エチオピアでは、保健省が管理するプール基金へのGFFからの資金投入を通して、保健分野に振り向けられる資金規模の拡大や、保健省の財政管理能力の向上、医療人材の育成などに貢献していることを報告しました。

 

JCIE 鈴木智子氏からは、ベトナム、タジキスタン、コートジボワールの事例研究の中でも、特にコートジボワールのケースを取り上げ、GFFが保健サービスの質やアクセスの向上、サービス提供体制の改善、またジェンダーに基づく医療保険加入の障壁の分析などを通じて、プライマリーヘルスケア(PHC)の強化に貢献していることが報告されました。



国際協力機構(JICA)人間開発部審議役兼保健第二グループ長 吉田友哉氏からは、これまでのJICAGFFとの関わりや、将来の展望が述べられました。

 

JICAGFFのインベスターズグループのメンバーであり、これまでも現場レベル、グローバルレベル双方で、GFFとの調整・協調を図ってきました。ケニアを始めとする各国において、国家保健戦略策定過程での技術協力の提供、UHC達成に向けた開発政策借款などを通じてその戦略の実行を後押ししてきたことが紹介されるとともに、現場レベルで母子保健やプライマリ―ヘルスケアの分野でパラレルファイナンシングや技術協力を通じて連携し、JICAがモデル地域で育てた芽を、今後GFFを通してスケールアップしていきたいと述べられました。



また、ジュネーブからオンラインで参加したGFF市民社会組織(CSO)連携上級専門家 マティ・ディア氏より、GFFと市民社会やユースとの連携の重要性が強調されました。

GFFは、設立当初から市民社会やユースとのパートナーシップ構築を戦略の中核に据え、ユースグループや市民社会の政策提言活動や、GFFやそのパートナーの取り組みのモニタリング活動などを支援していることが紹介されました。


現場についての高い専門知識や経験を有した市民社会や、トレーニングを受けたユースは、コミュニティが直面する課題やニーズに精通しており、グローバル・国・コミュニティの各レベルで保健課題に取り組むパートナーとして、政府からもその重要性を認められており、今後の更なる進展への期待が述べられました。


 

 

ウガンダよりオンラインで参加したGFFグローバルユース代表、ナグル・ユース・ヘルス・ネットワーク(NYHN)プログラムマネージャー アラファト・カブゴ氏からは、GFFの支援によって進められているユース主導の取り組みについて報告がありました。


ウガンダでは、ユースの代表たちの能力強化を行うことで、彼らがコミュニティの中から声を上げ、政策決定に影響を及ぼすとともに、青少年の健康サービスの質を高めるための働きかけなど、着実に成功事例を積み上げてきたと言います。


今後はGFFの協力のもと、異なる国のユースたちが互いの取り組みを共有し合い、学び合う機会を作っていくとともに、より効果的に資金を活用するための能力を向上したいと述べられました。



最後に、東京大学医学部医学科6年/株式会社Famileaf 三好真衣佳氏より、日本のユース世代がGFFに寄せる期待を込めたメッセージが示されました。

 

インド訪問を通して実感された、妊婦の栄養不良改善への取り組みや、官民学の連携の重要性、そしてステークホルダー間の調整を行い、資金動員を行うGFFの意義が示されました。


日本政府に対して、こうした活動への拠出の増額、連携強化、またユースのさらなるキャリア形成の機会創出を求めたいと発信がありました。



参加した国会議員からは、母子や青少年の健康の改善を通して、UHCの達成に向けて重要な役割を果たしてきたGFFに対して敬意が表されました。

 

また、GFFが実施しているような資金調達が、強固な保健システム構築に必要不可欠であることが再認識されるとともに、柔軟で複合的な政策を実施できる体制を整える必要性が確認されました。

 

さらに、これまでもGFFへの拠出について国会議員による財務省への申し入れが行われてきたことが紹介されるとともに、日本の拠出を何倍にも生かすことができるGFFの触媒的な役割に期待し、今後も財源確保のために協力して取り組んでいきたいという力強い言葉が表明されました。



イベントの終わりには、駐日エチオピア大使館のヨハネス・ファンタ・ウォルデギオルギス特命全権公使より、母子や青少年の健康改善の現状について話がありました。

 

エチオピアでは、女性が妊娠や出産を原因として命を落とすべきでないという理念が掲げられ、さまざまな取り組みが展開されているとともに、政府予算の保健分野への配分が増加していることが紹介されましたが、それだけで課題に対応することは難しく、外部からの資金調達がこれからも必須になることも踏まえ、GFFを含むグローバルドナーに対する感謝の意が示されました。



 

イベントを通して、GFFの果たす多様な役割に対する関心と共感を広げるとともに、今後日本政府がGFFと協力して母子・青少年の健康と栄養の取り組みをさらに加速させることの意義を共有することができました。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、2023年秋のGFF増資会合に向けて、他のパートナーとともに、日本政府が追加資金を拠出することの意義を含め、GFFへの理解と支持を高めていきます。





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