【トルコ・シリア大地震から1年】トルコで被災した子どもの3人に1人は家を失ったまま、シリアでは人道支援が必要な人数が過去最多に

1年前の2023年2月6日に、トルコとシリア国境沿いの地域で大きな地震が2度起こり、その後も余震が続きました。この地震で被災した子どもたちの3人に1人は、今でも自宅を失ったままです。そして、トルコとシリアの被災地域に暮らす子どもたちは、震災以降、不安や心理的な負担を抱えている状況が明らかになっています。


トルコ・シリア大地震で犠牲になった人たちは5万6,000人以上[1]、自宅を失った人たちは数百万人にのぼり、約620万人の子どもたちが影響を受けました。

このうちトルコでは、66万人の子どもを含む約240万人[2]が、テントや、車1台分の駐車スペースほどのコンテナで避難生活を余儀なくされました。 1年経った今も、20万5,000人の子どもたちを含む76万1,000人以上が自宅に戻ることができていません[3]。

トルコ政府は、避難している人たちに対して、住宅用に整備された場所に移動するように促していますが、ほぼ半数にあたる35万5,000人は、日常生活を送るには環境が整っていない場所で、小さなテントやコンテナの仮設住宅に暮らしており、その中には3×7メートルほどの小さなスペースに暮らしている人もいます。[4]

シリアでは、大地震後も子どもたちは経済危機と激化する紛争に直面し、学校や保健医療施設がさらに被害を受けました。現在、国連世界食糧計画(WFP)からの支援の多くが停止され、数千人が避難場所や食料を手に入れることができていません[5]。

加えて、子どもたちは、自身の壮絶な被災体験との向き合い方に悩み、精神的苦痛を感じています。セーブ・ザ・チルドレンのパートナー団体が、シリアで調査した結果によると、障害のある子どもたちの85%が、震災時の体験が原因で、家族や友人、教師などとの交流に困難を抱えています [6]。

また、セーブ・ザ・チルドレンの調査 [7]によると、シリアの5地域の回答者の約70%が、子どもたちが「悲しみ」を感じていると回答し、約30%の子どもたちが悪夢にうなされたり、眠れなくなったりしているとの結果もあります。

さらに、トルコの被災地4ヶ所では、調査対象世帯の半数(51%)から、震災後に子どものこころや行動に変化が見られたほか、49%が強い不安感による反応を示し、21%が攻撃的な行動を示したことが報告されています[8]。


テントで暮らすアスリさん(トルコ)

トルコのアドゥヤマン近郊のテントで両親と暮らすアスリさんは次のように話します。  
「私は9歳です。お母さんとお父さんと一緒にテントに住んでいます。地震が起きて、私たちの家は壊れました。テントでの生活はひどく、時々すごく暖かくなったり、すごく寒くなったりします。シャワーは外にあります。家を取り戻したいです。おじいちゃんもおばあちゃんも死なないでいてくれたらー」

セーブ・ザ・チルドレンがトルコで避難生活を送る家族を調べたところ、60%が衛生用品を手に入れることが難しく[9]、水を十分に利用できないと話す人たちもいました。さらに、避難している家庭は、子どもたちを学校に通わせることができた一方、30%の親はその学習継続のための費用捻出に苦慮していることもわかりました[10]。

シリアでは、今年さらに150万人近くが人道支援を必要としており、シリア危機が始まって以来13年で過去最多の人数になっています。数千人の子どもたちが、その場しのぎのテントや避難民キャンプで暮らし、親は十分な食料や安全な水、冬物の衣服を手に入れることが難しい状況です。

シリア北部のキャンプで暮らすマラーさんは、紛争と地震によって2度避難を余儀なくされました。

「爆撃や砲弾、地震で私たちは逃げました。地震と爆撃で、学校は破壊されました。明かりもなく、真っ暗で、黒板の文字も見えませんでした。先生が板書するたびに、板が落ちてきて、とにかくひどい場所でした。
(マラーさんは、1年間通学ができませんでしたが、セーブ・ザ・チルドレンのパートナー団体が支援する学校への通学を再開しました)

今は、勉強したり、友だちと出かけたり、教育を受けられるので、状況は良くなりました。しかし地震と爆撃のせいで、私は勉強するのをやめ、1年近く学校に行けませんでした。」

セーブ・ザ・チルドレンのシリア事務所長ラシャ・ムレズは、次のように述べています。
「シリアは、人道危機が続いているなかでさらなる危機に見舞われています。地震や紛争、経済―今、私たちは支援を必要としている人たちをこれまで以上に目の当たりにしています。まだ復興の兆しは見えません。子どもたちのニーズに応えるためには、より多くの資金が緊急に必要です。状況は年々悪化し、資金は底をついています。 私たちは、子どもたちとその家族が失ったものを再建し、平和で安全に暮らせるように支援することに、再び力を注がなければなりません。」 

セーブ・ザ・チルドレンのトルコ事務所長のサーシャ・エカナヤケは、次のように話します。
「震災は、もはや大きく報道されることはないかもしれません。しかし、その影響はここトルコでまだ続いています。私たちは復興への道を歩んでいますが、地震の影響を受けた子どもたちの3人に1人が、いまだに小さなテントやコンテナから出られないでいるという現実があります。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちが教育を再開し、基本的なサービスを利用できるよう、地元当局と協力して支援に尽力していますが、支援を必要とする人たちは依然として多くいます。国際社会はトルコのことを忘れないでください。」



トルコで、セーブ・ザ・チルドレンは、2013年から活動しています。 地震発生後、私たちは被災した家族に衣類、水、食料を提供する最初の支援組織のひとつでした。パートナー団体8団体と協力し、これまでに31万7,000人以上に支援を届けてきました。

また、子どもたちが教育を続けられるよう、安心・安全な学習スペース、学用品の提供や教員への研修のほか、家の再建、こころのケア、必要な物資の提供なども行っています。

シリアでは、2012年から子どもたちを支援し、現在も続く紛争と経済危機によって家を失った家族を支援しています。これにより、地震発生後48時間以内に地震に対応する支援の準備を整え、冬の厳しい寒さの中避難を余儀なくされた家族に、マットレス、冬物の衣服、食料、暖をとるための燃料の提供を開始しました。シリア北西部で活動するパートナー団体とのネットワークにより、私たちは安全な仮設住居(シェルター)、生活必需品、そして親や養育者と離ればなれになった子どもたちを含む脆弱な状況に置かれた子どもたちへのこころのケアの提供を行ってきました。これまでに、私たちは、地震の影響を受けた約35万人の子どもを含む66万5,900人を支援しています。


[1] https://reliefweb.int/report/turkiye/turkiye-earthquake-2023-humanitarian-response-overview-17-may-2023
[2] UN OCHA 
[3] Number of children is calculated based on a share of 27% of children among the total by applying the same ratio of children (2.5 million) among the overall population affected by the earthquake in Türkiye (9.1 million) as per UNICEF.
[4] Based on the latest data from IOM as of October 2023 which found that 760,964 people were living in formal and informal temporary settlements in the provinces of Adiyaman, Gaziantep, Hatay, Kahramanmaras and Malatya.
[5] https://www.wfp.org/news/wfp-forced-scale-down-operations-syria-donors-gather-brussels-ahead-major-conference
[6] Based on research conducted by Save the Children’s partner organisation in June 2023.
[7] Save the Children’s earthquake Assessment Report: Multi-Sectoral Needs Assessment that covered government-controlled areas.
[8, 9 & 10] Save the Children Multi-Sector Needs Assessment (MSNA), Turkey, October to December 2023. The MSNA surveyed 441 households affected by the earthquake, 87 of which were displaced and living in camps, tents, containers and prefabricated houses. 




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