【事業地訪問】「ベトナム山岳地域の少数民族を対象とした母子の健康を守るための思春期の性と生殖の健康サービス改善事業」第一三共一行が訪問

セーブ・ザ・チルドレンは、企業とのパートナーシップを通じて、寄付金による事業のサポートのみならず、従業員参加やサプライチェーンの見直し、さらには企業の本業を通じた社会課題解決、CSVCreating Shared Value, 共通価値の創造)などを通じ、ともに社会にインパクトをもたらすことを目指しています。

こうしたパートナーシップの取り組みの一環として、法人企業による事業地訪問があります。2024310日から16日にかけて、第一三共の11人と在ベトナム日本国大使館の2人が、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフと共に、ベトナムの事業地を訪問しました。


第一三共株式会社は、2023年より、セーブ・ザ・チルドレンの「ベトナム山岳地域の少数民族を対象とした母子の健康を守るための思春期の性と生殖の健康サービス改善事業」を支援しています。同社は、「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」というパーパスのもと、革新的な医薬品の継続的な創出とともに医療基盤がぜい弱な地域における医療アクセスの問題解決に取り組んでいます。


また、
2020年からベトナムに現地法人を設立し、現在80人近い社員が働いています。今回の事業地訪問には、日本の本社から2名、ベトナムの現地法人から9名が参加しました。


支援対象事業の概要


少数民族が多く暮らすベトナム・イエンバイ省の少女たちは、18 歳未満で結婚する児童婚の割合が高く、望まない性交渉や意図しない妊娠、安全でない中絶、高い性感染症リスクなど、女性の基本的な人権である性と生殖に関する健康と権利(Sexual and Reproductive Health and RightsSRHR)に関して多くの課題が存在します。

 

本事業では、ベトナム政府、医療施設、学校などと連携し、わかりやすい視覚教材と研修ガイドラインを作成し、ASRH*ケアについての教育を強化する活動や、ASRH ケアサービスのための衛生用品の提供・管理を支援する活動等を実施し、思春期の子ども(1519 歳)に対する性と生殖に関する健康サービスの質とサービスへのアクセスを向上することで、早すぎる結婚・妊娠・出産を予防し、母子の健康を守る取り組みを進めています。

* ASRHAdolescent Sexual and ReproductiveHealth(若者の性と生殖に関する健康)



医療施設や学校などを訪問、人々と交流


ハノイから車で北西に移動すること4時間、イエンバイ省のムー・カン・チャイ県とヴァン・チャン県は、住民の約90%が少数民族です。貧困率が18%と他地域と比較して高く、伝統的に児童婚や早期出産が多い地域です。

 

一行は、少数民族の医療を支え、未成年の性に関する相談や出産に対応をしている地域の病院やプライベート・クリニックを訪問しました。病院の中には、本事業で作成した「青少年向け啓発教材」(ポスター、リーフレット)などを置いた「相談・啓発窓口」が設置されていました。都市部に比べて、性病リスクも高く、児童婚や未成年の出産も多いとの話を医師から聞きました。本事業の支援により、医療従事者の能力向上や未成年者の患者に対する広報活動・適切な情報提供ができるようになったことに感謝しているとのコメントがありました。

さらに一行は、ヴァン・チャン県で15歳から18歳の1,000人の子どもたちが通う高校を訪問し、「性と生殖に関する啓発イベント」に参加しました。

 
第一三共の社員が生徒たちの前で性と生殖について講演を行ったほか、生徒代表がグループに分かれ、「ジェンダー」「望まない妊娠」「性病」などのトピック別に協働で絵を描いたり、生徒代表100人による「性に関するクイズ勝ち抜き大会」を実施したりしました。オープンに楽しく性について学ぶイベントで、大変盛り上がり、子どもたちが笑顔で楽しそうに参加している姿が印象的でした。


閉会式では在ベトナム日本国大使館の佐々木祥平一等書記官があいさつし、日本政府としても本事業の重要性を認識していることや、悩んだ時には今日のイベントをぜひ思いだしてほしいとのメッセージを青少年に呼びかけました。


モン族の保護者クラブと交流


本事業では、思春期の子どもをもつ保護者への啓発にも取り組んでおり、イエンバイ省(ムー・カン・チャイ県)内の6コミューン40の村で40の保護者クラブの設立支援を実施しました。この保護者クラブには合計1,200人のメンバーが所属しており、保護者同士でジェンダーへの配慮を持ちながら思春期の性と健康について学び合う場となっています。

 
一行は、少数民族のモン族の保護者クラブの一つを訪問し、医師によるワークショップの様子を見学しました。本事業の支援で作成したフリップチャート(紙芝居)を使いながら、思春期の子どもたちとの向き合い方についてディスカッションを行い、はじめは恥ずかしそうにして口数が少なかった保護者たちも、後半は積極的に意見を述べる姿が見られました。また、第一三共社員との交流も行い、思春期の性と生殖の健康について、子どもともっとオープンに話すことの重要性がメッセージとして伝えられました。



最終日には第一三共からのフィードバック


訪問の最終日、事業視察を終えてハノイに戻ってきた一行は事業地訪問を振り返るミーティングを行い、第一三共からは、セーブ・ザ・チルドレンの事業に対するコメントや提案として、下記のような意見があがりました。
 


  • ●セーブ・ザ・チルドレンが政府や学校、医療施設等と緊密なコミュニケーションをとり、コミュニティとの関係性を築き上げてきたことを高く評価する。

  • ●子どもたちが恥ずかしがらずに楽しそうに性と生殖について学んでいたことが印象的であった。青少年は家族に情報を伝えるインフルエンサーであり、思春期の子どもたちにアプローチすることで、彼らの両親や兄弟、親戚、さらには彼らが大人になったときに彼らの子どもたちにも情報を伝えることができるため、青少年を主なターゲットとしてアプローチすることの重要性を再確認した。

  • ●プロジェクトは第一三共が期待する正しい方向、正しい目標、正しい目的で実施され、地域のニーズにも応えていると感じた。

  • ●ポスターなどの啓発素材により有効な活用や意識改革のための様々なツールを活用してタイムリーに情報共有する必要性、積極的に助けを求めることができる社会システムの開発の必要性を感じた。

  • ●これが一過性のイベントではなく、持続可能なベトナム社会の根幹となる、地域医療インフラの確立に向けた重要な一歩となることを心から願っている。 

セーブ・ザ・チルドレンが、地域のさまざまな関係者を巻き込んで、強固な信頼関係を築きながら事業を進めている様子を、今回の事業地訪問に同行した私自身も肌で感じることができました。また、第一三共の方々によるセーブ・ザ・チルドレンの活動へのエンゲージメントも高めていただく機会となり、NGOと企業とのパートナーシップの意義も再確認することができました。

 

今後、今回の訪問で体験してきたことを多くの方に伝えることで、さらなる巻き込み・連携促進へと繋げていきたいと考えています。

(パートナーリレーションズ部 法人連携チーム 山田有理恵)

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セーブ・ザ・チルドレンは、毎年600以上の企業・団体の皆さまとさまざまな形で連携し、子どもたちを取り巻く課題解決のために、緊急・人道支援や教育、子どもの保護、保健・栄養などの分野で、日本を含む世界約120ヶ国で活動しています。これからも、企業の皆さまとも協力・連携しながら、子どもたちを取り巻く社会課題の解決に取り組んでいきます。

【企業・団体の皆さまからのお問い合わせ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン法人連携担当
japan.corporatepartner@savethechildren.org
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