(公開日:2024.10.21)
予防接種の普及・拡大ですべての子どもに「生きる権利」を
- アドボカシー
セーブ・ザ・チルドレンが支援する保健医療施設でコレラのワクチン接種を受ける子ども(スーダン)
セーブ・ザ・チルドレンは、定期的な予防接種を一度も受けたことがない、「ゼロドース・チルドレン」と呼ばれる子どもたちの数が、紛争地域(22.7%)では、その他の地域(7.1%)と比べ3倍多いことを発表しました。
また、アフリカ諸国における「ゼロドース・チルドレン」の数は、世界の他の地域(6.9%)の2倍以上(18.7%)であることも報告しました。
この分析は、WHOとユニセフによるデータに基づき行われたもので、2024年6月20日にパリで開催された、予防接種に関する主要な国際会議(注1)に先駆けて発表されました。この会議は、予防接種拡大のためにドナー各国に資金提供を呼びかけ、アフリカ全土でのワクチン製造と生産を促進するための新たなイニシアティブの開始を決定するものでした。
セーブ・ザ・チルドレンは、この分析結果が、世界的に予防接種率の向上に取り組む「Gavi ワクチンアライアンス」(注2)に対するドナーの資金提供の拡大に繋がることを期待しています。セーブ・ザ・チルドレンはこれまで、Gaviとのパートナーシップにより、予防接種推進の取り組みと保健サービスを強化することで、最も社会から疎外され、支援が届きにくい地域の子どもたちにも予防接種の機会を提供してきました。
セーブ・ザ・チルドレンが支援する保健センターで子どもの予防接種の順番を待つ母親たち(エチオピア)
すべての子どもには、「健康への権利」として、ワクチン接種を受ける権利があります。紛争地域に住む子どもたちは、すでに健康面で大きな被害を受けており、さらには避難生活によって保健医療サービスへのアクセスが途絶え、疾病のまん延に苦しんでいます。
2023年にスーダンで紛争が勃発した際、5人の子どもの母親である30歳のハディアさん(注3)は、末っ子を出産した2日後に、ハルツームの自宅からナイル川への避難を余儀なくされました。
ハディアさんは、 「子どもたちが予防接種を受けられないことが、避難生活そのものよりも気がかりでした。 予防接種が受けられないと、子どもたちがポリオや、はしか、ジフテリアなどの病気にかかり、成長に影響が出たり、時には死に至ることもあるのです。」と話します。
Gaviの支援を受けることができる国の半数近くは、脆弱な紛争国に分類されています。そのため、Gaviに提供される資金が増額されることにより、Gaviは保健システムの強化と、より多くの子どもたちへのワクチン提供に投資できるようになるとセーブ・ザ・チルドレンは考えています。
セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長、インゲル・アッシンは、「すべての子どもには生きる権利があります。しかし、予防接種を受けられないために、予防可能な病気で命を落としている子どもたちが驚くほどたくさんいます。こうした子どもたちは、紛争や避難生活という耐え難い経験をし、多くのものを失っています。」と述べています。
子どもを誰ひとり取り残さないようにすることは非常に重要であり、また可能なことでもあります。政府、民間セクター、その他パートナーが、子どもたちの生命と福祉を優先し、Gaviが必要としている資金を不足なく投資し、支援することが必要です。
セーブ・ザ・チルドレンはまた、アフリカ諸国が自国のワクチンを製造する能力と自律性を高める「アフリカ・ワクチン製造アクセラレーター(AVMA)」の発足を歓迎しています。これにより、アフリカ大陸の多くの子どもたちが予防可能な病気から守られることが可能となります。
セーブ・ザ・チルドレンは、これからもすべての子どもたちが必要な予防接種を受け、健康への権利、生きる権利が守られるように世界中で活動していきます。
■英語で読む:
注1:
6月20日にパリで開催されたGaviワクチンアライアンス、アフリカ連合、フランス政府共催の会議では、2026年から2030年までのGaviの増資計画が発表され、ドナーに対して予防接種への投資が呼びかけられました。また、アフリカのワクチン製造業者が生産規模を拡大し、長期的に持続可能なものとなるよう、財政的インセンティブを提供する「アフリカ・ワクチン製造アクセラレーター(African Vaccine Manufacturing Accelerator)」の発足が決定しました。ワクチン製造の多様化の必要性は、新型コロナウィルス感染症のパンデミックから得た重要な教訓です。アフリカやその他の地域では、現地での製造能力が不足していたため、ワクチンが入手できるようになるまで長く待たなければならず、その結果、2022年4月時点で、アフリカで新型コロナウィルス感染症の予防接種を完全に接種できた人は人口のわずか12%でした。
注2:
Gaviワクチンアライアンスとは、2000年にスイスで設立された官民連携パートナーシップで、特に低所得国の予防接種率を向上させることで、子どもたちの命と人々の健康を守ることを目的としています。Gaviは、これまでに78の低所得国で11億人以上の子どもたちへのワクチン接種を支援し、1,880万人以上の死亡を予防してきました。Gaviには日本政府も資金提供を行ってきました。
セーブ・ザ・チルドレンは、Gaviとのパートナーシップにより、 紛争の影響を受けている地域や脆弱な国における予防接種を推進し、「ゼロドース・チルドレン」にワクチンを届けることに注力しています。
注3:
セーブ・ザ・チルドレンは、ポリオを含む定期的な予防接種の提供を通してハディアさんを支援しました。
データ分析手法:
本分析では、WHO/UNICEFが推計した国の予防接種率 (2022年時点の最新データ)を使用し、ジフテリア・破傷風・百日咳(DTP)混合ワクチンの初回接種率を用いて、DTPの接種を一度も受けていない、ゼロドース・チルドレンの割合を算出。次に、国連人口推計(UN Population Prospects)の人口推計を用いて、アフリカとそれ以外の地域の人口加重接種率を比較した。同様に、世界銀行によって分類された脆弱国や紛争の影響を受けている38ヶ国と、影響を受けていない155ヶ国を比較し、カバー率を推定した。