【ウガンダ】社会福祉オフィサーが語る、家族としての愛着を育む子育て支援の重要性

日本では、児童虐待防止法が2000年11月に施行されたことから、毎年11月が児童虐待防止推進月間として位置づけられています。世界では毎年、子どもの2人に1人、10億人以上の子どもたちが暴力を受けています。セーブ・ザ・チルドレンは2030年までに、あらゆる場面での子どもへの暴力を終わらせるための取り組みを実施しています。


社会福祉オフィサーとセーブ・ザ・チルドレン・スタッフ

2024年11月、ウガンダをはじめとする8ヶ国が体罰を禁止する法案を推進することを誓約しました。この国際的な会議では、WHOやユニセフ、国連の特別代表(子どもの保護担当)も後援し、「親の子育て教育」や「家庭への介入」が暴力の予防において最も効果的な手段であることが科学的根拠に基づいて強調されました。

セーブ・ザ・チルドレンがウガンダの北西部アルア県・アルア市で進めている「子どもの保護システム強化事業」では、まさに家庭への介入をコミュニティベースで実施しています。
「体罰等によらない子育て(Safe Families)」の研修を地域住民や親・子どもたちに対して提供し、家庭内での虐待や暴力の予防を目指しています。(詳しくは【ウガンダ 南スーダン難民支援】地域で取り組む、体罰のない子育ても合わせてご参照ください。)

この取り組みの中心的な役割を担っているのは、パラ・ソーシャルワーカーと呼ぼれる子どもの保護のボランティア人材から選抜された「子育てメンター」と、このメンターを支え、助言や指導を行う「社会福祉オフィサー」です。(パラ・ソーシャルワーカー、社会福祉オフィサーについて、詳しくは【ウガンダ】子どもの保護システム強化事業・2年目へ【ウガンダ】持続的な子どもの保護システムの強化を目指して:人道支援から開発支援へをご参照ください)


■社会福祉オフィサーの声:家族としての愛着
社会福祉オフィサーは、現地の子育ての慣習や文化に起因する課題について次のように語っています。

「伝統的なアフリカの家庭では、父親と子どもの関係がまるで犬猿の仲のように冷え切っていることがよくあります。父親が帰宅すると子どもは家から逃げるように外に遊びに行き、父親が出かけると子どもは安心して笑顔を見せるのです。この背景には、父親が乳幼児期から体罰を通じて『しつけ』を行い、恐怖で自分への尊敬を強いるといった子育て観が根付いているためです。その結果、親子間の相互尊重が失われ、子どもは母親にしか安心感を持たなくなります。このような状況を改善するためには、体罰等によらない子育てのプログラムを通じて、父親が積極的に子育てに関与し、親子間や夫婦間、家族としての愛着を深めることが重要だと考えています」

社会福祉オフィサーは、家庭内の問題に第三者として介入する非常にデリケートな業務を担っています。コミュニティ内での信頼を築くことが不可欠であり、そのためにパラ・ソーシャルワーカーと協働して、日々家庭を訪問し、問題解決に向けて丁寧にアプローチを行っています。
 
 


子育てメンターに対して体罰等によらない子育て(Safe Families)の研修を実施する
社会福祉オフィサー


■情熱をもって最前線で奮闘する支援者たち
社会福祉オフィサーは子どもの保護の課題に現場で向き合う仕事に強い情熱を持ち、次のように語っています。

「私自身も暴力が『しつけ』の手段とされる家庭で育ちました。だからこそ、子どもが安心できる家庭で育てば、より良い社会が実現すると信じ、今この仕事をしています。子どもや親のエンパワーメント、家庭に笑顔を取り戻すこと、その全てのプロセスにモチベーションを感じながら仕事をしています。アルアだけでなく、ウガンダ全土がより良い社会になることを目指して、目の前の地域社会への支援を継続していきたいと思います。」

児童虐待防止推進月間にあたる11月、日本国内外を問わず、さまざまな葛藤を抱えながらも、子どもたちを虐待や暴力から守るために情熱を注いで活動を続ける支援者たちが現場の最前線で奮闘していることに想いを馳せながら、そうした人々の努力や想いが、子どもたちの健やかな成長を支え、豊かな子ども時代が守られることを願い、今後も事業を継続していきたいと思います。

本事業は皆様からのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力からの支援で実施しています。

(海外事業部 ウガンダ駐在員 内藤 優和)

i 参照:
Countriespledge to act on childhood violence affecting some 1 billion children
UgandaTo Pursue Legislation Against Corporal Punishment :: Uganda Radionetwork
Uganda,   7 other countries to pursuelegislation against corporal punishment

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