【幼稚園プロジェクト(2)】モンゴルの幼稚園は、先生にもやさしくないの?(2012.05.09)

日本のみなさま、こんにちは。オトゴです。以前このプログで紹介された時は、別の教育事業に関わっていました。今は、「子どもにやさしい幼稚園推進」プロジェクトのコーディネーターを務めています。今回は「子どもにやさしい幼稚園」にするために、事業開始から9ヶ月間で何をしたのか?を報告したいと思います。


(オトゴンチメグ。普段は、オトゴと呼ばれています)


さて、昨年12月21日のプログでは「子どもにやさしくない幼稚園」の実情をお知らせしましたが、そのような幼稚園になってしまう原因の1つに、日々子どもと直接向き合う先生の置かれた環境が大変厳しいことを少しお伝えしました。ですので、「とにかく幼稚園の先生はとても忙しいので、その他の先生がもっと先生に協力し、業務を分担しましょう。そういう協力体制を幼稚園でつくりましょう。そのことで、先生が教室で子どもや保護者と触れ合う時間も増えます。幼稚園の先生だけに教育を任せるのではなく、幼稚園全員で子どもの教育をする体制をつくりましょう。」と、幼稚園職員全員に訴えているのが私たちの事業の特徴です。
そのために、先生を最も身近でサポートできるすべての人を洗い出してみました。

まず、幼稚園の内から先生を支援する人は、・園長 ・助手の先生 ・園医の先生、の3つに分けられます。(下の図の青色の部分)
次に、幼稚園の外から支援する組織は、・モンゴル国立教育大学 ・国家監査局や地区教育課などの行政機関 と主に2つに分けられます。(下の図の赤色の部分)
また最後に、幼稚園の外と内から支援する人が、・保護者や地区住民 ということになります。(下の図の緑色の部分)
 


今回は、幼稚園の内から先生を支援する・園長 ・助手の先生 ・園医の先生、のおかれた現状、それに対して何をしようとしているのかを述べたいと思います。

まず助手の先生についてです。2008年の就学前教育法で、「教育教材作成の手伝い、子どもの健康管理、保護者との連絡役など、専門的な立場で先生をサポートする」と助手の先生の役割が明記されました。しかし私たちの16の事業対象幼稚園を調査した結果、79%の助手の先生が幼稚園で働くための専門教育を受けていないことが分かりました。その後助手としての専門教育を受けた人もいますが、実際は「用務員業務をこなしている日々」という事がわかりました。



(第147番幼稚園にて、協力隊員が企画する幼児教育セミナーに参加する助手の先生)


またモンゴルの幼稚園には、学校の「保健室の先生」にあたる園医の先生がいます。1990年前の社会主義時代には、全幼稚園に配属されていましたが、現在は、各幼稚園の予算次第なので、配置されていない幼稚園もありますが、それでも公立の幼稚園の約80%には園医がいます。しかし園医は何をしているのでしょうか?まず前述の就学前教育法で役割が明記されていません。私たちの対象校で調査した結果、教室やトイレの清潔管理が中心ということがわかりました。子どもの身長・体重測定もしていますが、教室ごとに一覧表に記載して掲示するという方法が一般的で、1人1人の子どもの親へ報告し、治療を促し、治療状況を確認する、というきめ細かな個別の健康管理はほとんど行われていませんでした。それもそのはず。小児保健や学校保健を学んだ人は、1人にしかすぎませんでした。これでは、「子どもの健康管理面で、先生を手伝ってください」といっても、何をしてよいのかわかりませんよね。



(第70番幼稚園にて朝の健康診断を行う園医)


さらに問題なのは、そのような現職の助手や園医の先生が学ぶ機会がほとんどないということです。国唯一の現職先生を育成するモンゴル国立教育大学には、幼稚園の先生のための研修は1年に1回開催されています。しかし助手と園医の先生についてはカリキュラム自体存在しません。

そこで私たちセーブ・ザ・チルドレンは、各幼稚園に図書館を設置することにしました。日本の図書館というイメージからすれば、とても小さな規模ではありますが、それでも、大変喜ばれています。また、全ての幼稚園が「貸し出し管理台帳や図書カード」を作成し、保護者への貸し出しも始めています。



(プロジェクトで寄与した第128番幼稚園の図書館の様子)


また、モンゴル国立教育大学にこの2つのカリキュラムを新規立ち上げることにしました。これに参加することで、幼児教育・小児保健、または学校保健の専門家として、先生を助けることができるようになります。 現在は、カリキュラムのドラフトが仕上がったところで、まだその効果のほどははっきりとはわかりません。しかし、助手の多くの先生から、「今まで、いろいろなプロジェクトが入ったけれど、いつも園長先生と幼稚園の先生だけが呼ばれることが多かった。私たち助手も研修に参加させてもらえるので本当に嬉しい」という声が聞こえています。


最後に一番重要な園長先生です。私たちの16の事業対象幼稚園を調査した結果、ほとんどが、「幼稚園で大切なことは、子どもに適切な教育と保護を行うこと」と述べています。それはそれで大切です。しかし管理者として重要な、例えば「職員をどう育成するのか?保護者をどう巻き込んでいくのか?無駄遣いのない経営はどうするのか?」といったことは、関心が薄いことがわかりました。1990年以前の社会主義時代は、全てが国で管理されていたので管理者が考える必要はありませんでした。就学前教育法の施行以後、職員のリクルートから、予算作成、保護者から寄付金集めなど、多くの権限が与えられましたが、実際はどうしてよいのかわからないという園長先生も多いということです。

これに対して、教育分野に実績のある市民団体と協働で、管理者のための研修カリキュラムとそれを実行する手段として、「幼稚園指導要綱」の紹介を試みることにしました。これは、「教育目標・指導方針・年間活動計画・職員組織図や役割」など、幼稚園毎に毎年作成し、職員全員で共通の目標に向かって運営を促すものです。これもまだドラフトの段階ではありますが、すでに、幼稚園によっては、「今月はスマイルの月(笑顔を絶やさない月)」「保護者参加の月(保護者と積極的にコミュニケーションを取る月)」など、月別目標を決めて幼稚園全体で新しい取り組みを進めています。


(スマイルの月を呼びかける第82番幼稚園)


(お昼寝中の第82番幼稚園の子どもたち)


今まで述べたようなことをまとめ、3月に、ニュースレターを発行しました。このニュースレターを通じて、事業関係者だけでなくモンゴルのもっと多くの人が、幼稚園や幼児教育に関心を持ち、幼稚園の先生をサポートしてくださるようになることを願っています。
また日本の皆様には、このプログを通じて、今後も定期的にお伝えしたいと考えています。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いします。


(報告:モンゴル事務所 オトゴ)


 
(ニュースレター表紙の写真にもなった第147番幼稚園の子どもたちと先生)

*本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しています。

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