(公開日:2012.06.18)
G20 政策提言「世界経済危機により、新たに600万人の人々が飢餓に陥ることに」(2012.6.18)
- アドボカシー
2012年G20メキシコ・サミットに向けた
セーブ・ザ・チルドレンの政策提言と新報告書
セーブ・ザ・チルドレンの政策提言と新報告書
ユーロ圏を中心とした経済危機への対応に世界の首脳陣が追われる中、何百万人もの子どもたちに影響を及ぼす飢餓と栄養不良の問題はこれまで見過ごされてきました。現在の世界金融の混乱はヨーロッパの領域を広く超え、世界の貧困国の最も脆弱な人々に波及し、新たに600万人の人々に飢餓をもたらすことになると推測されます。
この度、セーブ・ザ・チルドレンは新報告書「成長のために―社会保護による子どもの栄養不良と経済機会向上への取り組み」を発表し、最近の下方修正された世界経済は、2013年末までに何百万人もの人々が新たに飢えることを意味すると報告しています。アフリカの経済成長率はヨーロッパよりも高いにもかかわらず、世界的な経済下降と食料・石油価格のさらなる高騰により、600万人の人々が貧困に追い込まれ、栄養価の高い食べ物を入手することもできなくなると見込まれます。
世界では何百万人もの子どもたちが栄養不良に苦しんでおり、2008年の経済危機以来、世界の飢餓人口は8億5千万人から世界人口の7分の1にあたる約10億人にまで増加するなど、非常に深刻な事態が続いています。先進諸国は金融危機からの立て直しが迫られる一方で、アフリカやアジアを中心とする途上国の家庭では、子どもたちを飢餓から守るための緊急かつ切迫した問題に直面しています。
セーブ・ザ・チルドレンは新報告書の中で、こうした事態への対応策として社会保護システムの導入を提唱しています。危機に対応するための社会的セーフティネットとして、低所得国が社会保護システムを構築・発展・維持させるための支援が求められます。社会保護は、貧困や飢餓を削減すると共に、より長期的な成長のために経済的強靭性を強化するための有効な方法です。しかしながら、世界経済危機以降、社会保護への投入は削減される一方です。
メキシコのロス・カボスにおけるG20サミット開催(6月18日~19日)に向け、セーブ・ザ・チルドレンはG20各国が5月のG8に続き、この機会を食料安全保障と栄養不良問題への大きな突破口を開き、低所得国の貧しい人々がさらなる貧困と飢餓に追い込まれることを防ぐための「社会保護システム」の構築に向けた世界的気運を高める機会として活用されるよう、各国政府への働きかけを行っています。
日本でも、6月1日に西宮外務審議官に要望書をお渡しし、G20の主要国として栄養不良問題の解決及び社会保護システムの構築に向けた取り組みへのリーダーシップを発揮して頂くよう、お願いしました。
セーブ・ザ・チルドレンのG20サミットに向けた要望内容:
食料安全保障と栄養改善について:
- 食料安全保障、農業および栄養改善への資金的コミットメントのラクイラ・イニシアティブと同レベルでの維持。栄養改善の直接対応策へのより多くの資金配分と世界農業食料安全保障プログラム(GAFSP)への資金投資。
- 発育阻害削減への世界的目標の設定支持。「栄養改善拡充のための枠組み(SUN: Scaling Up Nutrition Framework)」の公式支持。
- 複数セクターにおける栄養改善アプローチの優先化。農業政策とプログラムへの栄養改善の位置づけと、効果的な農業政策および手法の研究・取りまとめ。
危機対応と包摂的成長について:
- 低所得国が危機発生時に貧しく脆弱な人々を保護するための社会保護システムの構築・発展・資金投入への支援。世界銀行の緊急社会対応信託基金への追加資金の提供。社会保護分野の新たな協力枠組みの立ち上げ。G20各国のセーフティネット構築と資金投入に関する経験を踏まえた低所得国向けの政策指針の開発。
G20に向けたセーブ・ザ・チルドレンの政策提言書「世界経済危機と栄養不良」は以下をご参照ください:
政策提言(英文)
政策提言(和文)
セーブ・ザ・チルドレンの新しい報告書「成長のために―社会保護による子どもの栄養不良と経済機会向上への取り組み」は以下をご参照ください:
報告書本文(英文)
報告書概要(和文)
スリランカのボシカリ村に住むサビトリ・バラさんとサイカト君(13ヶ月)。
バラさんはこれまで6人の子どもを出産したが、経済的理由により医療従事者の立会いのもとでの出産は一度もなく、2人の子どもは生後30分以内に亡くなっている。
(c) Colin Crowley/Save the Children
バラさんはこれまで6人の子どもを出産したが、経済的理由により医療従事者の立会いのもとでの出産は一度もなく、2人の子どもは生後30分以内に亡くなっている。
(c) Colin Crowley/Save the Children