【防災計画支援事業】子ども保護の視点に立った防災計画のパイオニアになります! (2012.07.04)

こんにちは。モンゴル事務所スタッフのオユンマーです。

以前このホームページで紹介された時は、子どもセンター長をしていましたが、現在は、「緊急災害時における子ども保護のための危機管理・防災対策」事業運営チームメンバーとして仕事をしています。この事業は2011年9月に始まりましたが、このような「子ども保護の視点に立った防災計画を立てる」という試みは、モンゴルでは初めてのことです。私たち事業運営チームは、この分野のパイオニアになるよう頑張っています!

これから2回に分けて、私たちの事業について紹介します。

 
(事業運営チーム/向かって左から2番目がモンゴル事務所スタッフのウヤンガ。右端がオユンマー)

日本では昨年の大震災を受けて、さらに防災計画が進められていることと思います。モンゴルでももちろん、防災計画は行われています。しかし日本とは違って、極寒の国モンゴルで自然災害と言えば「雪害(ゾド)」です。

このホームページでも紹介しましたが、2010年に起こった「ゾド」という豪雪は、800万頭以上の家畜、割合にして18%以上の家畜の生命を奪いました。牧畜の国モンゴルでは、家畜は重要な国の財産です。国は、干草の配布、栄養補強剤や獣医の巡回サービスなど、家畜を守るために全力を注ぎました。しかし、家畜という財産を失い家計に苦しむ家族の子ども、寒さによって病気になる子ども、学校に行けなくなる子ども、老朽化の進んだ学校寮で寒さに震える子どもたちには、目が向けられてきませんでした。

首都では、防災に対する認識も計画も進んではいませんでした。それもなんとなく納得ができます。1990年代までは、首都ウランバートルの人口は100万人足らず。高層ビルは見当たりませんでした。例え地震が起きても、大きな人災になる可能性は少なかったのでしょうね。日本では、学校や幼稚園での避難訓練は当たり前のように行われていると聞きましたが、モンゴルで避難訓練が計画的に行われた事はありませんでした。

しかし今は違います。首都には150万人が住み、高層ビルが建ち並んでいます。そして、特に古いビルの耐震性が大変問題となっています。急激に膨らんだ人口を受け入れるため山が削られ、山壁にくっつくよう建てられた家々で埋められ、道も細く、空き地も少なくなりました。

そして国全体が地震帯にかかっているモンゴルでは、頻繁に地震が起こっています。モンゴル自然環境省によると、過去20年の間にマグニチュード6以上の地震が、40回以上も起こっているのです。

「防災計画、特に地震という自然災害に対して防災計画が必要である」と国が実感し動き始めたのは、約10年前。国連関係機関や国際NGOと連携し進めていく事が決まり、私たちモンゴル事務所にもメンバーとなるための声がかかりました。私たちの役目は、「防災計画に、子ども保護の視点を入れる」こと。具体的にどういうことか次にご紹介します。


まず1つ目は、「防災計画に、子どもが防災に関する基礎的知識を高めるための教育の機会を設けること」

防災計画に、「子どもへの教育」が組み込まれた事はありませんでした。現在行っている事業では、防災訓練を実際に行う前に、子どもたちに「災害に関する基本的な知識・災害時に備えて準備すること・災害が起こった際の対応」について十分な情報を提供する機会を設けました。またそれだけではなく、防災計画を立てる際にも子どもに参加してもらい、子どもの声を聞きました、ある事業対象施設では、訓練の時に子どもが「怖い」と表現したことで、「子どもは本当に怖がり、その後も大変でした」と職員が驚いていました。恐怖感を少しでも和らげパニックにならないためにも、十分な情報を持ち、心の準備をさせることが重要であること、災害が起こった際は、ショックを長引かせないためにも、十分な精神的ケアが大切であることなども計画の中に加わりました。

 
(机の下にもぐる訓練をする園児/事業対象施設の1つである幼児用孤児院で行われた避難訓練より)


(地震で起こる災害について学習する児童/事業対象施設の1つである児童用孤児院にて)


2つ目は、「防災計画に、子どもの生存を保護する施設・設備を完備すること」

極寒の国モンゴルでは、ライフラインとして最も重要なのは「暖房」です。特に冬場に災害によって建物から追い出されたり、セントラルヒーティングシステムが壊れた場合、零下30度の中では、寒さが命取りとなります。私たち事業運営チームでは、寒さから子どもを守るためのストーブや毛布の準備、どこへ搬送すれば暖を取れるのか施設の特定を行う、という事が計画に盛り込まれました。


(屋外に作られたストーブ/事業対象施設の1つである乳幼児病院で行われた避難訓練より)


(幼児1人1人に準備された毛布/事業対象施設の1つである幼児用孤児院で行われた避難訓練より)


最後3つ目は、「防災計画に、子ども一人ひとりを大切にする災害グッズ作成や、子どもの精神的ケアを行うための玩具の準備を設けること」

この視点は、実際に事業で避難訓練をした際に、大変おびえた子どもたちがいたことから、職員らが必要性を実感したために付け加えたれました。子どもが楽しくなるような「子ども広場」の設置や頻繁の声かけの他に、ネームバンドや名札など、1人も見逃すことなく全員の命を守りケアをする方法が施設毎に考え出されました。
 

(子ども広場の様子/事業対象施設の1つである乳幼児病院で行われた避難訓練より)

 
(幼児一人ひとりに作成されたネームバンド/事業対象施設の1つである幼児用孤児院で行われた避難訓練より)


いかがですか~

きっと日本では、このような視点は、当たり前のように防災計画に取り入れられているのでしょうが、モンゴルでは、まだまだと言わざるを得ません、私たち事業運営チームは、今まで行ってきたさまざまな子ども保護事業の成果を、防災計画の中にも取り込んでいきたいと頑張っています。これからもご支援のほど、よろしくお願いします。

次回は、モンゴル初の「子ども保護の視点に立った防災計画」に基づいた避難訓練の様子を紹介したいと思います。


(報告:モンゴル事務所 オユンマー)

この事業は、セーブ・ザ・チルドレン・コリア(韓国のセーブ・ザ・チルドレン)の助成金により実施されています。
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