(公開日:2012.08.06)
【防災計画支援事業~】モンゴル初!子ども保護の視点に立った避難訓練をしました。(2012.08.06)
- モンゴル
こんにちは。モンゴル事務所スタッフのオユンマーです。
今回のブログでは引き続き、セーブ・ザ・チルドレンが現在行っている事業「緊急災害時における子ども保護のための危機管理・防災対策」で、5月24日に行った「国立乳幼児病院」での避難訓練の様子を取り上げてみたいと思います。
この乳幼児病院には、身寄りがなく警察に届けられた子ども、貧しく治療費を支払う事ができない子ども、精神的障害があり家族に見放され誰にも世話されない子どもなど、ただ単に病気を持っているだけではなく、それ以外に様々な家庭や社会問題を抱える子どもたちが約100人入院しています。そのような家族背景があるため、親の付き添いもありませんし、親や家族からの愛情も注がれることもありません。病院は、子どもたちの生活の場そのものであり、病院職員は親のような役割を担っています。
ですので、何か緊急な事態が起こった場合、通常の施設以上に「子ども保護の視点」を重要視しなければなりません。「無事避難した後は、親に引き渡す」というわけにいきません。すでに心にも病を背負った子どもたちですので、精神的ショックも受けやすいでしょう。
しかし、事業実施前はそれらが配慮されていませんでした。
病院長であるオーガンツェツェグ先生の話を聞いてみましょう。
(避難訓練について説明をするオーガンツェツェグ先生:右から2番目の立っている女性)
「今日のこの避難訓練の日を迎えるまで、私たちは多くの研修を受け学習し、そして院内で防災計画を立て、避難訓練の準備をしました。モンゴルの多くの施設に防災計画がない中、事業開始前に、すでに私たちの病院には防災計画があり、自負していたところがありました。しかし、セーブ・ザ・チルドレンの事業を通じて多くの事を学ぶ中で、その計画は適切なものではないという事がわかりました。それは“子ども保護の視点”です。
第一にこの病院の子どもたちは、心が傷ついていて、精神的に大変不安定です。“子どもたちに不安な思いを持たせないこと、怯えさせないこと、そのための工夫”は最も重要だと感じました。
そして次に、そのために私たち職員が、子ども保護の視点を学び、適切な防災計画を作り理解し、それに従って正しく落ち着いて行動することが重要となります。
そして最後に、子どもたちも防災計画を理解し心の準備をすることが重要だとわかりました。」
では「国立乳幼児病院」が「子ども保護の視点」のために、訓練当日どんな工夫をしたか、以下は引き続き、オーガンツェツェグ病院長の報告です。
「極寒の国モンゴルで最も重要なのは、暖の確保です。特に病気の子どもたちは免疫力が低下しているので、寒さが命取りとなります。そこで私たちは、屋外ストーブの設置や、多くのテントの設置を行いました。」
(屋外に設置されたストーブ)
(テントの中で暖を取る子どもたち)
「次にしたことは、子ども広場の設置です。子どもが不安感を忘れるような楽しい雰囲気になるように工夫しました。幸い私たちの病院には予算がありました。そのため、事業でも必要な物品を購入していただきましたが、玩具などで子どもの年齢や疾患に対応していないものは、独自の予算で補充しました。」
(暖かいじゅうたんが敷かれ、楽しい玩具がいっぱいの子ども広場)
(子ども広場の外からの様子)
「そして最後に、子ども1人も漏れることなく全員を無事避難させることができるように、病棟ごとに色を分けたリボンを準備して腕に巻きつけました。言葉を発することができない子どもたちが、大勢の職員によって避難させられるため、だれがどの子どもなのか、わからなくなってしまう事が起こります。とりあえず病棟の担当職員に引継げば、どこの子どもかは見分けがつきます。」
(黄色のリボンをつけた子どもたち)
最後に、避難訓練を終えたオーガンツェツェグ先生の報告です。
「避難訓練中、怯えた子どももなく、全員を無事避難させる事ができましたので、目的は達成することができました。しかし、いくつか課題も見えてきました。例えば、一度も使ったことのなかった病院の非常階段は、大変古く、修繕も行われておらず、急な傾斜で、大人が子どもを抱えて降りるにはとても危険な状態でした。しかも、実はこの事業が開始する前は、非常階段の前に荷物が積まれ、その上入り口は施錠されており、開けることすらできませんでした。入り口の荷物の問題は解決しましたが、非常階段の老朽化の問題は以前のままです。
(段差が急で、老朽化の激しい非常階段の様子。)
ですので、このような防災計画を続けていくには、予算確保とそのための行政への働きかけが最も重要であると痛感しました。来年度に向け、四半期ごとに避難訓練を行う予算と、全職員用防犯バッグ購入のための予算を確保しました。今後、モンゴルの防災計画のモデル病院になれるようにがんばりたいと思います。」
(子どもたちと病院職員、事業業関係者)
「これらの成果が認められ、当初1年の予定であった事業は、9月以降、引き続き支援がいただけることとなりました。セーブ・ザ・チルドレンのスタッフや関係者の皆さま、本当にありがとうございました。今後も温かいご支援をよろしくお願いします。」
(報告:モンゴル事務所 オユンマー)
*この事業は、セーブ・ザ・チルドレン・コリア(韓国のセーブ・ザ・チルドレン)の助成金により実施されています。
今回のブログでは引き続き、セーブ・ザ・チルドレンが現在行っている事業「緊急災害時における子ども保護のための危機管理・防災対策」で、5月24日に行った「国立乳幼児病院」での避難訓練の様子を取り上げてみたいと思います。
この乳幼児病院には、身寄りがなく警察に届けられた子ども、貧しく治療費を支払う事ができない子ども、精神的障害があり家族に見放され誰にも世話されない子どもなど、ただ単に病気を持っているだけではなく、それ以外に様々な家庭や社会問題を抱える子どもたちが約100人入院しています。そのような家族背景があるため、親の付き添いもありませんし、親や家族からの愛情も注がれることもありません。病院は、子どもたちの生活の場そのものであり、病院職員は親のような役割を担っています。
ですので、何か緊急な事態が起こった場合、通常の施設以上に「子ども保護の視点」を重要視しなければなりません。「無事避難した後は、親に引き渡す」というわけにいきません。すでに心にも病を背負った子どもたちですので、精神的ショックも受けやすいでしょう。
しかし、事業実施前はそれらが配慮されていませんでした。
病院長であるオーガンツェツェグ先生の話を聞いてみましょう。
(避難訓練について説明をするオーガンツェツェグ先生:右から2番目の立っている女性)
「今日のこの避難訓練の日を迎えるまで、私たちは多くの研修を受け学習し、そして院内で防災計画を立て、避難訓練の準備をしました。モンゴルの多くの施設に防災計画がない中、事業開始前に、すでに私たちの病院には防災計画があり、自負していたところがありました。しかし、セーブ・ザ・チルドレンの事業を通じて多くの事を学ぶ中で、その計画は適切なものではないという事がわかりました。それは“子ども保護の視点”です。
第一にこの病院の子どもたちは、心が傷ついていて、精神的に大変不安定です。“子どもたちに不安な思いを持たせないこと、怯えさせないこと、そのための工夫”は最も重要だと感じました。
そして次に、そのために私たち職員が、子ども保護の視点を学び、適切な防災計画を作り理解し、それに従って正しく落ち着いて行動することが重要となります。
そして最後に、子どもたちも防災計画を理解し心の準備をすることが重要だとわかりました。」
では「国立乳幼児病院」が「子ども保護の視点」のために、訓練当日どんな工夫をしたか、以下は引き続き、オーガンツェツェグ病院長の報告です。
「極寒の国モンゴルで最も重要なのは、暖の確保です。特に病気の子どもたちは免疫力が低下しているので、寒さが命取りとなります。そこで私たちは、屋外ストーブの設置や、多くのテントの設置を行いました。」
(屋外に設置されたストーブ)
(テントの中で暖を取る子どもたち)
「次にしたことは、子ども広場の設置です。子どもが不安感を忘れるような楽しい雰囲気になるように工夫しました。幸い私たちの病院には予算がありました。そのため、事業でも必要な物品を購入していただきましたが、玩具などで子どもの年齢や疾患に対応していないものは、独自の予算で補充しました。」
(暖かいじゅうたんが敷かれ、楽しい玩具がいっぱいの子ども広場)
(子ども広場の外からの様子)
「そして最後に、子ども1人も漏れることなく全員を無事避難させることができるように、病棟ごとに色を分けたリボンを準備して腕に巻きつけました。言葉を発することができない子どもたちが、大勢の職員によって避難させられるため、だれがどの子どもなのか、わからなくなってしまう事が起こります。とりあえず病棟の担当職員に引継げば、どこの子どもかは見分けがつきます。」
(黄色のリボンをつけた子どもたち)
最後に、避難訓練を終えたオーガンツェツェグ先生の報告です。
「避難訓練中、怯えた子どももなく、全員を無事避難させる事ができましたので、目的は達成することができました。しかし、いくつか課題も見えてきました。例えば、一度も使ったことのなかった病院の非常階段は、大変古く、修繕も行われておらず、急な傾斜で、大人が子どもを抱えて降りるにはとても危険な状態でした。しかも、実はこの事業が開始する前は、非常階段の前に荷物が積まれ、その上入り口は施錠されており、開けることすらできませんでした。入り口の荷物の問題は解決しましたが、非常階段の老朽化の問題は以前のままです。
(段差が急で、老朽化の激しい非常階段の様子。)
ですので、このような防災計画を続けていくには、予算確保とそのための行政への働きかけが最も重要であると痛感しました。来年度に向け、四半期ごとに避難訓練を行う予算と、全職員用防犯バッグ購入のための予算を確保しました。今後、モンゴルの防災計画のモデル病院になれるようにがんばりたいと思います。」
(子どもたちと病院職員、事業業関係者)
「これらの成果が認められ、当初1年の予定であった事業は、9月以降、引き続き支援がいただけることとなりました。セーブ・ザ・チルドレンのスタッフや関係者の皆さま、本当にありがとうございました。今後も温かいご支援をよろしくお願いします。」
(報告:モンゴル事務所 オユンマー)
*この事業は、セーブ・ザ・チルドレン・コリア(韓国のセーブ・ザ・チルドレン)の助成金により実施されています。