夏休みの防災訓練「楽しく学んで、災害に備える!」~石巻市広渕地区から~(2012.08.10)

「防災訓練はゲームもあって楽しかったよ」と笑顔を見せてくれたのは、小学1年生の花音(かのん)ちゃん。7月26日に行われた石巻市広渕地区の学校・地域合同防災訓練に参加しました。「自分のうちからお母さんと妹と一緒に学校に来ました。いつもとちょっと違うな」。普段学校で行われている防災訓練とは異なり、子どもたちは、自宅から学校へ避難を行いました。確かに週末や長い休み中に災害が起こった場合どうすればいいか、自宅からの避難方法を確認することは大切ですよね。

防災訓練で笑顔を見せてくれた花音ちゃん(小1)


今回の防災訓練で最も重要な点は、“地域と学校が一緒になって防災訓練を行った”ということです。地域単位で避難経路の確認や安否確認など情報共有を行うとともに、子どもたちは普段の学校のクラス単位での点呼などを行っていました。自治体、消防、病院、学校などが一緒となって、合計およそ300人以上が参加した大規模な防災訓練となりました。









消防のみなさんも勢ぞろい 先生からの点呼を受けて整列

この防災訓練で、セーブ・ザ・チルドレンは、防災用品の展示と防災教育にご協力させて頂きました。宮城県を中心に防災教育を行っている「わしん倶楽部」と共に、1・2年生を対象に「防災ダックゲーム」と「新聞で作るコップづくり」を実施44名の子どもたちにカードゲームを使って防災の対処法を学んでもらうとともに、緊急時にも使用できるコップの作り方を覚えてもらいました。









防災グッズ展示。実用性の高い食品などに質問が。 

「防災ダック」はゲーム感覚で防災を学びます。


「防災ダック」は災害時のファーストムーブ(初期動作)をイラストで覚えるゲームです。たとえば、ナマズの絵がかかれた地震のカードの裏には、頭を守るダックの動作が書かれています。子どもたちは、カードの絵とファーストムーブを覚えて、提示されたカードに従って素早くファーストムーブを行う、というゲームになっています。

















カードを見ながら、素早くアクション! 花音ちゃんはじめ、子どもたちは真剣そのもの。


また、コップづくりでは実際に出来上がったコップに麦茶をいれて飲んでみました。「暑くて帰りたいよー」と言っていた子どもたちも、一時の涼にうれしそう。「上手にできたよ!」「写真を撮って!」と元気いっぱいにおしゃべりしてくれました。









新聞紙で作ったコップにビニールをかぶせればすぐに使えます


高学年の子どもたちは、消防隊と一緒に担架づくりを体験したり、消火訓練に参加したりしました。初めて消火訓練に参加した伸明君(小6)は「水が出てきて、楽しい!」と満面の笑み。実際に火事が起きたら消火器を使えそうかなと聞くと、「それはちょっとわかんない。でも今日の訓練を思い出したらちょっとはできるかな」と答えてくれました。

訓練ってこんなに楽しかった?いいんです、楽しく学びましょう!











竹と毛布で担架をつくります 訓練後のお待ちかね、炊き出しのカレー


「大きな地震があってから、家族で防災のことを話したり、懐中電灯を家に用意したりしています」と伸明君。さすが6年生。頼もしいな!


震災後、防災への意識の高まりはあるものの、学校と地域が一緒になって防災訓練を行っているところは多くありません。同じ宮城県でも、広渕地区は北部地震を体験していることもあり、防災意識が高く、学校のみならず、地域も協力体制が整っているのだそうです。広渕小学校の佐藤建雄校長によると「自治会内に学校に対して協力的な方がいたおかげで実現した」とのこと。地域と学校の関係を結ぶキーパーソンの存在が不可欠だそうです。普段から地域内でのコミュニケーションを密にしていることが、今回の防災訓練の実現につながりました。

キーパーソンの小野寺さん。地域と学校をつないでいます。


また、保護者からもこうした取り組みは高く評価されています。前述の花音ちゃんのお母さんの恵理さんは、「広渕は地域にまとまりがある」と言います。「普段から地域のつながりが深く、地域で子どもを見ている、大事に育てていると感じます。通学時も自分の子どもがどこにいるか、誰かが必ず教えてくれるので安心です」

恵理さんと花音ちゃん、妹の穂乃花ちゃん。「広渕は顔が近い安心の地域です」


防災という視点に立った時、子どもたちにとって本当に安全な環境を作るには、家庭だけでなく、学校だけでなく、地域全体で「もしもに備える」体制を整えることが大切だと実感できる防災訓練でした。また、子どもたちにとって防災訓練は怖い経験を思い出すものではなく、「楽しく学ぶ」ことが何より大切なのだと感じました。これからも子どもたちの笑顔が広がる活動を私たちは続けていきたいと思っています。

(報告: 東日本復興事業部 及川美樹)

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