(公開日:2012.11.12)
【防災計画支援事業】モンゴル初!子ども保護の視点に立った避難訓練をドルノドでも実施しました!(2012.11.12)
- モンゴル
こんにちは。
セーブ・ザ・チルドレンが実施している事業の評価オフィサーとして、2012年5月よりモンゴル事務所で仕事をしていますカラです。オーストラリアから来ました。
(一番左端がカラさん)
モンゴルで生活して6ヶ月が経ちました。休暇を利用し、あちらこちらを旅行しましたが、人も含めて、「なんて美しい国!」というのが私の印象です。今のモンゴルは、急激な経済成長を遂げ、それに伴い人々の暮らしも大変良くなってきていると感じます。しかし、その恩恵を全ての人が受けているのかというと、取り残された人も多く、まだまだ私たちセーブ・ザ・チルドレンにはすべきことがたくさんあるように思います。
さて私は、今年9月、セーブ・ザ・チルドレンが現在行っている「緊急災害時における子ども保護のための危機管理・防災対策」事業の評価のため、モンゴル最東部のドルノド県に行ってきました。ドルノド県では、2つの学校と1つの幼稚園が事業の対象で、私はその中でも、第6番幼稚園の活動が大変印象に残りました。今回は、その第6番幼稚園を訪問したときの様子を取り上げてみたいと思います。
2012年8月23日、第6番幼稚園の8人の先生たちと事業運営スタッフが、事業について話し合いをしました。その話し合いに参加しながら、「この事業が、先生たちにもたらしたものは、危機管理・防災対策だけでなく、本当にたくさんある!」と実感しましたが、ここでは大きく3つに分けてみたいと思います。
(事業実施前のドルノド県・第6番幼稚園 )
(事業実施後のドルノド県・第6番幼稚園 )
1つ目は、「緊急災害」というぼんやりとした概念を具体化したことです。モンゴルの、しかもドルノド県のような地方都市では、「災害」というと「雪害・大寒波」というぐらいのイメージしかありませんでした。これも、確かに災害ですが緊急ではありません。加えて、学校や幼稚園で仕事をする先生には、「直接関係ないこと」になってしまいます。しかしそれが、「地震や火事」という緊急災害になると、それは幼稚園の先生たちに大きく関わってきます。
このように「緊急」という概念を具体的に理解したことで、「緊急時にはなにをすればいいのか?」という具体的な方法を、先生自ら提示することができました。この事業実施前には、消火器が一か所、しかも屋外に設置されていましたが、事業実施後には、各教室に消火器が設置され、全職員が使用方法を理解しました。全部の幼稚園の先生が、救急法を学習しました。そして、幼稚園全体としては、緊急時の連絡簿、避難経路などを含んだ『防災計画書』を作成しました。
(避難経路について説明する国家緊急対策機構職員とそれを聞く幼稚園職員)
2つ目に、今のこの幼稚園環境が、緊急時にいかに対応していないかだけでなく、危険な個所、事故が起こりやすい個所が多くあるのか、という事に気がつかされたということです。第6番幼稚園は、1964年に建設され、その後主な改修工事は行われていません。非常口は2つありましたが、事業参加前は両方とも鍵がかけてあり、荷物が置かれていたりして、とても使用できる状態ではありませんでした。事業開始後に施錠は外したものの、老朽化が激しく、使用すればかえって事故が起こるのではないか、と思われるほどです。また開閉が難しい窓も多く、避難の際には使用できないものもあります。特に電気の配線は、火事を起こす恐れもあり、緊急に修理が必要とわかりました。
このように施設設備の安全管理を高めないといけないということに気がついた結果、「だから緊急対策を行うためには、予算が必要で、そのために行政を巻き込んでいかなければならない。」という結論を導き出しました。そして、なんと行政から予算を獲得し、改修工事を行ってしまいました。ご覧ください!
最後に、幼稚園だけではなく、保護者や周辺コミュニティーも巻き込んで「緊急」の知識を深め、緊急災害対策を行っていかないと、結局はパニックが起こり、子どもに被害が起こると感じたことです。第6番幼稚園では、2012年5月30日に、幼稚園で避難訓練を実施しました。その際に、数人の保護者が、「これは本当の火事かもしれない。子どもを助けに施設内に行かないといけない。」と、建物の中に入り込もうとしました。また、そのような事態に対応するために、警察の協力も必要であると感じました。
子どもたちの安全を確保するには、幼稚園職員だけが適切なことをしていても不十分であると気がついたことは、事業の枠組みを大きく広げることになりました。例えば、「緊急災害時に保護者もパニックにならにように、「緊急災害対策マニュアル・保護者用」も開発し、保護者が知識を深め、心の準備ができるような訓練もしなければならない。」とか、「緊急時に保護者が建物の中に駆け込んでいかないよう、道路をふさいでしまわないよう、保護者対応の方法を『防災計画書』に含めていかないといけない。」という意見が活発に出てきました。そして最後に、「地域の警察や行政も巻き込んで、緊急災害に対応した街をつくっていかないといけない。」という意見も出たことは本当に特記すべきことで、これらの意見が、今後の事業の枠組み作りに生かされたことは言うまでもありません。
私は、この事業が、こんな風に幼稚園の先生たちにインパクトを与え、事業を発展させていくことを垣間見ることができとても感動しました。私のモンゴルでの任期は、2013年3月までです。もうしばらく、この事業の今後の展開を見守っていきたいと思います。
(5月30日の避難訓練の様子:訓練前に訓練についておさらいをする子どもたち)
(5月30日の避難訓練の様子:幼稚園校内から避難する子どもたち)
(5月30日の避難訓練の様子:第6番幼稚園の子どもたちと職員、事業関係者)
*カラさんは、オーストラリア政府の「 Australian Youth Ambassadors for Development 」というプログラムで、SCJモンゴル事務所に派遣されました。
モンゴル事務所では、昨年に引き続き、2人目の受け入れです。
(報告:モンゴル事務所 カラ)
セーブ・ザ・チルドレンが実施している事業の評価オフィサーとして、2012年5月よりモンゴル事務所で仕事をしていますカラです。オーストラリアから来ました。
(一番左端がカラさん)
モンゴルで生活して6ヶ月が経ちました。休暇を利用し、あちらこちらを旅行しましたが、人も含めて、「なんて美しい国!」というのが私の印象です。今のモンゴルは、急激な経済成長を遂げ、それに伴い人々の暮らしも大変良くなってきていると感じます。しかし、その恩恵を全ての人が受けているのかというと、取り残された人も多く、まだまだ私たちセーブ・ザ・チルドレンにはすべきことがたくさんあるように思います。
さて私は、今年9月、セーブ・ザ・チルドレンが現在行っている「緊急災害時における子ども保護のための危機管理・防災対策」事業の評価のため、モンゴル最東部のドルノド県に行ってきました。ドルノド県では、2つの学校と1つの幼稚園が事業の対象で、私はその中でも、第6番幼稚園の活動が大変印象に残りました。今回は、その第6番幼稚園を訪問したときの様子を取り上げてみたいと思います。
2012年8月23日、第6番幼稚園の8人の先生たちと事業運営スタッフが、事業について話し合いをしました。その話し合いに参加しながら、「この事業が、先生たちにもたらしたものは、危機管理・防災対策だけでなく、本当にたくさんある!」と実感しましたが、ここでは大きく3つに分けてみたいと思います。
(事業実施前のドルノド県・第6番幼稚園 )
(事業実施後のドルノド県・第6番幼稚園 )
1つ目は、「緊急災害」というぼんやりとした概念を具体化したことです。モンゴルの、しかもドルノド県のような地方都市では、「災害」というと「雪害・大寒波」というぐらいのイメージしかありませんでした。これも、確かに災害ですが緊急ではありません。加えて、学校や幼稚園で仕事をする先生には、「直接関係ないこと」になってしまいます。しかしそれが、「地震や火事」という緊急災害になると、それは幼稚園の先生たちに大きく関わってきます。
このように「緊急」という概念を具体的に理解したことで、「緊急時にはなにをすればいいのか?」という具体的な方法を、先生自ら提示することができました。この事業実施前には、消火器が一か所、しかも屋外に設置されていましたが、事業実施後には、各教室に消火器が設置され、全職員が使用方法を理解しました。全部の幼稚園の先生が、救急法を学習しました。そして、幼稚園全体としては、緊急時の連絡簿、避難経路などを含んだ『防災計画書』を作成しました。
(避難経路について説明する国家緊急対策機構職員とそれを聞く幼稚園職員)
(事業前に設置されていた消火器) | (事業によって提供された消火器) |
2つ目に、今のこの幼稚園環境が、緊急時にいかに対応していないかだけでなく、危険な個所、事故が起こりやすい個所が多くあるのか、という事に気がつかされたということです。第6番幼稚園は、1964年に建設され、その後主な改修工事は行われていません。非常口は2つありましたが、事業参加前は両方とも鍵がかけてあり、荷物が置かれていたりして、とても使用できる状態ではありませんでした。事業開始後に施錠は外したものの、老朽化が激しく、使用すればかえって事故が起こるのではないか、と思われるほどです。また開閉が難しい窓も多く、避難の際には使用できないものもあります。特に電気の配線は、火事を起こす恐れもあり、緊急に修理が必要とわかりました。
このように施設設備の安全管理を高めないといけないということに気がついた結果、「だから緊急対策を行うためには、予算が必要で、そのために行政を巻き込んでいかなければならない。」という結論を導き出しました。そして、なんと行政から予算を獲得し、改修工事を行ってしまいました。ご覧ください!
(老朽化が激しく、子どもが触ると危険な幼稚園のフェンス) | (改修工事後のフェンス) |
(改修工事前:開閉が困難な老朽化の激しい窓) | (改修工事後の窓) |
(改修工事前:危険な電気の配線システム) | (改修工事後の電気の配線システム) |
最後に、幼稚園だけではなく、保護者や周辺コミュニティーも巻き込んで「緊急」の知識を深め、緊急災害対策を行っていかないと、結局はパニックが起こり、子どもに被害が起こると感じたことです。第6番幼稚園では、2012年5月30日に、幼稚園で避難訓練を実施しました。その際に、数人の保護者が、「これは本当の火事かもしれない。子どもを助けに施設内に行かないといけない。」と、建物の中に入り込もうとしました。また、そのような事態に対応するために、警察の協力も必要であると感じました。
子どもたちの安全を確保するには、幼稚園職員だけが適切なことをしていても不十分であると気がついたことは、事業の枠組みを大きく広げることになりました。例えば、「緊急災害時に保護者もパニックにならにように、「緊急災害対策マニュアル・保護者用」も開発し、保護者が知識を深め、心の準備ができるような訓練もしなければならない。」とか、「緊急時に保護者が建物の中に駆け込んでいかないよう、道路をふさいでしまわないよう、保護者対応の方法を『防災計画書』に含めていかないといけない。」という意見が活発に出てきました。そして最後に、「地域の警察や行政も巻き込んで、緊急災害に対応した街をつくっていかないといけない。」という意見も出たことは本当に特記すべきことで、これらの意見が、今後の事業の枠組み作りに生かされたことは言うまでもありません。
私は、この事業が、こんな風に幼稚園の先生たちにインパクトを与え、事業を発展させていくことを垣間見ることができとても感動しました。私のモンゴルでの任期は、2013年3月までです。もうしばらく、この事業の今後の展開を見守っていきたいと思います。
(5月30日の避難訓練の様子:訓練前に訓練についておさらいをする子どもたち)
(5月30日の避難訓練の様子:幼稚園校内から避難する子どもたち)
(5月30日の避難訓練の様子:第6番幼稚園の子どもたちと職員、事業関係者)
*カラさんは、オーストラリア政府の「 Australian Youth Ambassadors for Development 」というプログラムで、SCJモンゴル事務所に派遣されました。
モンゴル事務所では、昨年に引き続き、2人目の受け入れです。
(報告:モンゴル事務所 カラ)