組織概要

セーブ・ザ・チルドレン英国のオフィスを見学したとき、衝撃を受けました。
やはり日本とは歴史も文化も違うんだなと。

「ご縁」によってトントン拍子に設立が実現

――セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの設立は、セーブ・ザ・チルドレンUKの総裁(当時)であったアン王女が来日したときに、当時皇太子妃殿下だった美智子さま(現在の上皇后)に、日本法人設立を提案したことに始まると聞いています。そこに服部さんも深くかかわっていますね。

服部悦子さん(以下、服部さん):アン王女が来日されたとき、美智子さまとお会いになられて、お話の中でセーブ・ザ・チルドレンについて触れられたそうです。その後、美智子さまは、国際婦人福祉協会の麻生和子さんに、日本でもセーブ・ザ・チルドレンのような活動ができないかとお話をされました。その場に、私も同席しておりました。

服部悦子さん_1

――美智子さまからお話を受けた麻生さんが、服部さんに声をかけられたということですね。

服部さん:そうです。そのすぐ後に、セーブ・ザ・チルドレンの国際会議がデンマークで開かれると聞いて、三浦智子さんと沖三枝子さんと一緒に現地に行き、会議を聴かせていただきました。お互いに大変感銘を受けて、「日本でもこの活動をしなければ」と思いました。

帰国後、日本青年会議所で第3代会頭をしていた夫(服部禮次郎氏)に話したところ、国際婦人福祉協会が単独で団体設立を担うには規模が大きすぎるから、大阪青年会議所にお話を持っていってはどうかと言われました。大阪青年会議所は、「愛の手基金」を創設して、本格的に困難な状況にある子どもたちへの支援活動を始めていました。大阪青年会議所にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン設立の話を持ち込かけたところ、大阪青年会議所の設立35周年記念事業の一環として、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを設立することになりました。当時、大阪青年会議所の理事長だった更家悠介さん(サラヤ株式会社代表取締役社長)が、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの理事長を兼務することになりました。

――すべて、ご縁ですね。

服部さん:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの事務局は当初大阪にあったので、新幹線でしばしば大阪に行くことになり、月に2回は日帰りで行っていたでしょうか。しばらく後に、当時の理事長の立野純三さん(株式会社ユニオン代表取締役社長)が、東京にある自社のショールームのお部屋を貸してくださり、その時に、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの事務局が東京に移りました。

子どもたちを見ていたら、「人間愛」が湧き上がってきた

――ご苦労されたことも、たくさんあったのではないでしょうか。

服部さん:苦労というよりも、いったい何から手をつけたらいいか分からなくて、暗中模索の状態でしたね。

――どのような事業から始めましたか。

服部さん:まずはフィリピンとタイで、教育支援を始めました。フィリピンでは、マニラのスモーキーマウンテンで活動を開始し、その後ギマラス島に、学校の校舎をつくりました。校舎と言っても、皆さんが想像するような日本の学校のようなものではなく、小さな小屋のようなものでした。子どもたちが朝、ごみ拾いなどに行かされる前に、文字を教えたりするプロジェクトでした。タイでは、学校に通うことができないスラム地域の子どもたちに、移動式図書館による学習支援をしました。

服部悦子さん_2

――現地の子どもたちは、どんな様子でしたか。

服部さん:みんな、目がキラキラ輝いて何かを求めていました。それを見て、ますます何とかしてあげたいという気持ちになりました。「人間愛」というか「地球愛」というか、そういうものが湧き上がってくる感じがしました。一緒に現地を訪れた大阪青年会議所の方たちも、支援活動にとてもやりがいを感じていたと思います。

当時のプリンセス、紀宮さまのお供でタイの奥地へ

――特に印象に残っている出来事など、教えていただけますか。

服部さん:デンマークで開かれたセーブ・ザ・チルドレンの国際会議に参加した帰りに、セーブ・ザ・チルドレンUKのオフィスを見学したのですが、そのときに「日本はこんなにも遅れているのか」と衝撃を受けました。広いオフィスの大きな部屋の真ん中にテーブルが置かれていて、その上に山積みにされた封筒を、スタッフが3人、4人で開封していました。中に入っている手紙と小切手を分けていたのです。「毎日あんなにたくさんの小切手が届くんだ」と、驚きました。やはり日本とは、社会貢献活動の歴史も文化も違うんだなと思いました。

――日本には、まだ寄付文化が根付いていない頃ですよね。服部さんは、海外の支援活動にほとんどにかかわっていたそうですが、思い出深いエピソードを教えていただけますか。

服部さん:当時、紀宮さま(現在は黒田清子さん)とご一緒に、タイのシリキット王妃が行っていらした、繭から絹織物をつくるプロジェクトを訪問したことでしょうか。山の中にある機織りをしている現場まで、舗装されていない道を、車で延々と走りました。3時間ぐらいかかったと思いますが、紀宮さまには終始セーブ・ザ・チルドレンの活動をお話し申し上げ、穏やかにお聴きくださいました。

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――これからも、セーブ・ザ・チルドレンの活動へのご協力をよろしくお願いいたします。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

<プロフィール>

服部悦子さん(セイコーホールディングス株式会社特別顧問)

聖心女子大学卒業。配偶者はセイコーホールディングス株式会社第5代社長服部禮次郎氏。1986年から2004年まで社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン副理事長を務める。その後2015年3月まで公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン顧問(2011年4月1日付で公益社団法人へ移行)。その他に
社団法人いけ花インターナショナル会長(1968年)、国際婦人福祉協会会長(1974年・1983年)、日米婦人会会長(1984年)を務めた。セイコーホールディングス株式会社特別顧問(現職)。公益財団法人日本いけばな芸術協会顧問(現職)。一般社団法人いけばなインターナショナル名誉顧問(現職)

(プロフィールは、2022年8月現在のものです。)

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