【遊牧民の子どもたちのための小学校教育プロジェクト(5)】コミュニティ教育協議会と一緒に遊牧民の子どもたちを支援しています(2014.01.15)

  皆さま、少し遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

  2012年6月に開始した遊牧民の子どもたちの小学校教育を支援するプロジェクトのチームリーダーを務めていますゲレーテュヤです。モンゴル事務所を代表し、新年の挨拶を申し上げます。


ゲレーテュヤ ©Save the Children Japan

  今回は私たちの事業の中でも最も特徴的で、重要な役割を担うコミュニティ教育協議会についてお話したいと思います。コミュニティ教育協議会は、地域の人々が直面するあらゆる初等教育の問題を改善するために設立されています。初等教育に関わる地方政府職員、教育機関職員、教員などがメンバーとなり、定期的に情報の共有や問題解決のための施策について協議しています。例えば、小学校1年生のA君が学校に来なくなったという問題があったとします。その原因は、一体何でしょうか?A君自身の学業に対する意欲や担任の先生の問題だけではありません。A君の生活する寮の施設は十分に整っていて、寮母さんからあたたかい声をかけてもらっていたのでしょうか?遊牧民であるA君のご両親は、時々はA君に会いに来ていたのでしょうか?A君は十分な文房具が買えたのでしょうか?またA君の居住する地区から何か経済的な支援がでていたのでしょうか?更には、A君は、小学校に上がる前に幼稚園などに通い、学校に入学する前に十分な精神的準備ができていたのでしょうか?いろいろな原因が考えられます。そのため、このコミュニティ教育協議会のメンバーには、保護者や地域行政官などいろいろな関係者が含まれていて、いろいろな方面から問題の原因を考え、その問題が解決されるように促しています。

今回は、コミュニティ教育協議会の中でも、特に活発な動きを見せているウブルハンガイ県ウヤンガ村の協議会の様子をお話しします。



ウヤンガ村教育協議会

  ウヤンガ村では、2013年4月12日に協議会が設立されました。ウヤンガ村長が中心となって、7人のメンバーから構成されています。協議会メンバーは、毎月定例会の中で、成績が思わしくない子どもが村には多いことについて取り上げ、改善案について議論しました。成績が悪いと授業についていけず登校意欲が無くなり、やがて学校に行かなくなるという悪循環を生み出します。
  そのため、協議会メンバーは、成績の思わしくない子どもに特別授業を提供できないかと、村の小学校に相談しました。先生たちにとっては無報酬の仕事でしたが同意し、ウヤンガ村にいる約800人の小学生の内、123人の子どもが放課後特別授業に参加することになりました。たった1ヶ月間でしたが、子どもたちの成績はみるみるうちに伸びているという嬉しい報告が届いています。
  また協議会メンバーの1人は、毎日学校に通い、この放課後特別授業や教育に関する校内放送を5分間行うことにしました。教育の重要性を子どもたちや保護者に理解してもらうためです。またその後、毎月1回、村のFM放送も活用するようになりました。タイトルは「教育の鍵」です。

  そしてプロジェクトにおいて協議会は、2013年8月から、就学前教育支援プログラムを開始しました。これは、幼稚園に通えない子どものために、保護者が家庭で、小学校に上がるための準備学習を行うように支援するプログラムです。えんぴつを持って書く、本を開き、それを読んで理解する、質問に答えられるなど学習をするための準備をします。幼稚園に通っていないと、この準備が出来ず、小学校に行っても椅子にすら座っていられなかったりと、学校生活に適応することが難しくなります。スタート時点での出遅れ、その後の落ちこぼれにつながらないようにするためです。
  まず協議会は、村の小学校の図書館の一角に「わたしのおもちゃと本」というコーナーを作り、プロジェクトから支給された教育教材と絵本がセットになった「就学前教育キット」を置きました。キットは10巻まであり、1巻はおよそ7~10日間かけて教えるようになっています。


青色の箱が「就学前教育キット」 © Save the Children Japan
  上の写真は、「就学前教育」キットの例。ウヤンガ村でも同様にコーナーを作りました。

  協議会は、今年9月に小学校に上がる子どもを持つ世帯の中でも、特に、遊牧民のため居住地を点々とする家族、経済的に貧しく幼稚園に通わせることが困難な家庭など、28世帯を選び、この世帯に優先的に貸し出すことにしました。この28世帯は、1巻ずつキットを自宅に持ち帰り、子どもと一緒に使っています。


キットの使い方を保護者に説明する協議会のメンバー © Save the Children Japan


キットを受け取る子どもたちと協議会メンバー © Save the Children Japan



教材に見入る子どもたち © Save the Children Japan

さてさて、キットを自宅に持ち帰ったお父さん、お母さんの反応はいかがでしょうか?


キットを自宅に持ち帰る遊牧民の母親と子ども © Save the Children Japan

  ある母親は「お父さんは、図書館にキットを借り行く役目。私は本を読む役目と、役割ができました。子どもに本なんて読んだことはなかったわ。今じゃ、子どもが内容を覚えてしまうほど、繰り返し本を読んでいます。」またある父親は、「図書館にキットを借りに行くと、図書館の先生が、時間をかけていろいろ説明してくれるので、とても楽しいです。どんな風におもちゃを使うのか良くわかります。」また「キットの青い箱はとってもいいです。ゲルの中では煤や埃が多く、きれいにしまって置くのが難しいから。それに箱が机の代わりにもなっています」というコメントも聞かれました。
  このように子どもの教育、特に小学校に上がる前の教育の重要性に関心を持つ家族が増えていくことを、とても嬉しく思っています。

  今後も、チーム一同、一生懸命子どもたちのために取り組みたいと思います。ご支援のほどよろしくお願いします。


ウヤンガ村の子どもと保護者、並びに協議会のメンバー © Save the Children Japan


―モンゴル遠隔地における最も不利な状況に置かれた子どもたちのための基礎学力向上支援事業―

小学校中途退学の子どもが特に多いモンゴル遠隔地4県で、標準的な教育を受けていない、もしくは受けられないでいる子どもたち(5~10才)の初等教育における学力の維持、さらに向上を目指して支援しています。
事業期間:2012年6月21日~2016年6月20日
事業分類:【教育支援】

本事業は、世界銀行による「日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund)の助成金により実施されています。

(報告:モンゴル事務所ゲレーテュヤ)
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