東北の支援現場から知る「子どもの貧困」 公開シンポジウム開催報告

東日本大震災から4年半を迎えた2015年9月11日に、公開シンポジウム「東北の支援現場から知る『子どもの貧困』」を実施しました。このシンポジウムは、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとゴールドマン・サックスが実施した「こども☆はぐくみファンド 子どもの貧困 NPO助成プログラム」の活動報告として、子どもの権利の観点から見た「子どもの貧困」の問題点、東北の支援現場から見た子どもたちや家庭の現状、支援活動上の課題などを知り、共に考える機会として企画したものです。当日は一般参加者や本プログラムの助成先団体スタッフなど、100名近くの方にご来場いただきました。
また、当日は本助成プログラムの内容をまとめた冊子「東北の支援現場から見える『子どもの貧困』」 を全参加者へ配布しました。





まずは立教大学コミュニティ福祉学部教授の湯澤直美氏による基調講演「日本における子どもの貧困問題と求められる社会的支援」。東日本大震災が貧困を生み出し、また深刻化させたこと、「子どもの貧困」を子どもの権利侵害と捉えていく必要性があることなどをお話しいただきました。また日本における「貧困」の状況についてのデータを交えながら「貧困」を個人の問題として解決するには限界があり、社会的対応を要するものであることをご説明いただきました。



立教大学コミュニティ福祉学部教授 湯澤直美氏


次にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン東日本大震災復興支援事業部副部長の津田知子より、子どもの貧困解決に向けたセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのこれまでの取組み を報告しました。


津田知子スタッフ


続いてゴールドマン・サックス証券株式会社取締役の綿貫治子氏より、社会貢献活動を社会全体の持続的な発展のための社会的投資と位置付け、子どもの貧困解決に向けた資金援助と人的援助の両方を継続的に進めていることを報告いただきました。


ゴールドマン・サックス証券株式会社取締役 綿貫治子氏


また「こども☆はぐくみファンド 子どもの貧困 NPO助成プログラム」の助成先2団体より助成事業の活動報告及び、日々子どもに寄り添い続け活動を続ける中で、子どもたちが変化していった事例を紹介いただきました。


NPO法人まきばフリースクール 理事 中山崇志氏


NPO法人ビーンズふくしま 子どもの貧困対策支援事業長・
ひきこもり支援センターコーディネーター 遠藤宏志氏



中山さんは、将来に希望がもてなかった子どもが、活動を通じて「人生これからでも何とかできるのかな」と前向きな思いを伝えてくれた事例を紹介。信頼関係を構築するまで時間と人手がかかるけれども大きな成果をあげていることが伝わってきました。一方で、活動地では交通の便がよくなく、子どもたちが活動に参加するには保護者の協力や、スタッフの人手が必要な状況があるとのこと。必要とされる事業でありながら、常に資金と人手獲得に苦労している現場の状況を伝えていただきました。


遠藤さんは、主に助成の対象となった集合型活動について報告。子どもたちは家庭の複合的な背景から貧困や社会との接点が持ちにくい状況に置かれ、それにより本来持つ生きる力(意欲や課題に取り組む力等)が育まれにくい環境にいるとしたうえで、生きる力を育む場として当該活動を実施し、子どもたちが主体となって計画した様々な活動を通して同年齢、異年齢の子どもたちが継続して交流する中で、成功体験を積み重ねた子どもの自己肯定感が育っていった事例や、暴力などのトラブルを起こしていた子どもが他の子どもを気遣うまでに変化した事例を紹介いただきました。また、活動の課題として、各関係機関と連携して支援活動を実施していく際に、情報共有や会議を通して課題の共通認識をもち、支援の統一性を強化していくことが適切な支援の提供に繋がることについて伝えて頂きました。


後半は会場からの質問を取り上げながら、登壇者全員によるパネルディスカッションを行いました。「活動するうえで課題となっている資金や人材確保について解決方法はどのようなものがあるのか」という参加者からの質問に対して「まずは貧困について知ってもらい、貧困のイメージを変えていくことが大切。地域で支えていくことが大切」「子どもたち自身も誰かの役に立ちたい、という思いがある。そうした気持ちを大切にしていくところに課題解決のヒントがあるのでは」等のお話がありました。





最後に締めくくりとして、各登壇者より次のようなメッセージをいただきました。


湯澤氏「子どもの貧困解決に取り組むことは、まっとうな社会を作ることにつながります。助成先団体の活動報告の中で、保護者の方にも厳しい状況があることが推察されました。精神疾患を抱える保護者には、暴力被害体験、社会の偏見、経済的ストレスなど複合的要因があることをふまえ、その背後にある問題を見据えた支援の必要があると思います。」


綿貫氏「科学的な眼を持って、事実を知ることが大切だと思います。ご自分の眼で確かめて、何が出来るかを考えていただくのが出発点になると思います。」


中山氏「子どもも、自分が役に立ちたい、自分が世の中を照らす光になりたいと思っています。それをどう活かすかというところに、これからのヒントがあるのではないかと思います。」


遠藤氏「ちょっとしたことを知ることから始めていっていただければ。ビーンズの活動やいろいろな活動を知ってほしいです。情報を知ることがきっかけで具体的な動きにつながったらいいなと思っています。」



参加者アンケートでは「子どもの貧困の現実がとてもリアルにわかりました。問題の深刻さにも気づくことができました」「自分ができることは何かを考える上で、現状を知ることができて良かったと思う」といった声が寄せられました。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、今後もみなさんと共に、子どもの貧困解決に向けた取組みを続けていきます。


(報告:東日本大震災復興支援事業部 瀬角・奥山)

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