(公開日:2016.08.24)
第4回国際母子栄養改善議員連盟報告
- アドボカシー
今月27日から28日にかけて、ケニアのナイロビにてTICAD VI (Tokyo International Conference on African Development)が開催されます。TICADとは日本が主導し、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)、世銀と共催で開催する、アフリカの開発をテーマとした国際会議です。今回の会議では、様々な栄養イニシアティブが発表される予定で、議連ではそれらについて関係省庁より報告がありました。
まずは内閣官房健康・医療戦略室の山本尚子次長より、栄養改善推進プラットフォームについて報告がありました。2014年7月、健康・医療戦略が閣議決定され、新興国・途上国を含む各国の栄養改善のために、官民を挙げて包括的なビジネスを含む事業の国際展開を進めることが決められました。そして、2015年3月、栄養改善事業の国際展開検討チームが立ち上がり、官民及び様々な分野と協力しつつ、どのような取組ができるか検討を重ねてきました。その結果、この度栄養改善推進のプラットフォームが立ち上げられ、特に妊娠から2歳までの最初の1000日間の栄養に焦点を当て、低身長、肥満対策などの栄養改善に資するために、プロジェクト実施、情報発信、セミナー開催、PR活動等の多角的な取組を行っていくこととなりました。
次に、農林水産省の丸山雅章審議官より、TICAD VIにおけるサイドイベント開催についての報告でした。一つは8月26日にケニア国立博物館にて開催される「日本食文化に学ぶ栄養改善」をテーマとしたシンポジウム。日本の食文化の知恵を途上国の栄養改善の取組に活かした事例をケニアの政府関係者や食品事業者に紹介する予定です。また、8月27日、28日にTICAD会場で開催されるジャパン・フェアでは、日本の栄養改善の取組を紹介するブースを設置し、前述の栄養改善事業推進プラットフォームのメンバー企業の様々な取組を紹介します。
国際協力機構(JICA)からは、榎本雅仁上級審議役より、世界の栄養不良の現状、原因と対策、栄養改善の効果、国際的な潮流について包括的な報告がありました。また、TICAD VIにおいて「食と栄養のアフリカ・イニシアティブ(IFNA:Initiative for Food and Nutrition Security in Africa)」を打ち上げ、栄養改善のための実践的な活動の加速化を、国際機関、二国間ドナー、NGO等と共にまずはアフリカ10か国で目指していきたい旨説明がありました。
次に、財務省開発政策課の三村課長より、SUN(Scaling Up Nutrition)信託基金についての報告でした。SUN信託基金は、栄養不良対策を進める目的で2009年に世銀に設立されたシングル・ドナー・ファンドです。2009年からは第1フェーズとして、重度栄養不良国の栄養不良対策のために、行動計画の策定支援、キャパシティ・ビルディングなどを実施しました。そして、この度、その経験を踏まえ、支援国を拡大し、いよいよ第2フェーズを開始することとなりました。世銀のキム総裁も子どもの栄養不良の問題は極めて大きな問題と考え、取り組んでいるため、財務省も引き続き世銀と連携しながら取組を続けていきます。
また、外務省からは国際保健政策室長代理として、西野様よりTICAD VIから2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組について報告がありました。2015年には、SDGsの目標2で飢餓の撲滅、栄養の改善が位置づけられました。また、今年に入り、国連の場において日本も共同提案者となり、2016年から2025年までを「栄養に関する行動の10年」と位置付けました。2016年はSDGsの実施の初年であり、「栄養に関する行動の10年」の初年でもあり、非常に重要な年です。栄養改善の取組を進めて行くに当たっては、「平和と健康のための基本方針」に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成という観点から、栄養改善事業支援プラットフォームをはじめとする官民連携を通じた栄養改善支援を進めるべき取組として示しています。また、G7伊勢志摩サミットにおいても、国際保健と食料安全保障の二つの切り口から栄養を議論しました。TICAD VIでは、保健の柱の下、栄養改善事業推進プラットフォームやIFNAなどを中心に日本の貢献として議論する予定です。また、8月4日には、イギリス・ブラジル・日本が共催し、ブラジルにて「成長のための栄養(Nutrition for Growth)」イベントが開催され、日本からも梅田駐ブラジル大使より、日本の経験である栄養士、食糧栄養調査、食育、学校給食制度などを紹介すると共に、上記の新しい取組についても紹介するとの報告がありました。そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組について、皆さんと共にしっかりと検討していきたいと考えています。
更に、国際母子栄養改善国家戦略タスクフォースの渋谷健司議長及び櫻井武司議長に代わって、あべ俊子事務局長より、国家戦略案の紹介がありました。これは、省庁、国連、大学、研究所、企業、NGO等で日々栄養改善の政策や活動に取り組んでいる専門家の方々に、個人の資格でワークショップに参加された幅広い経験、知見からの意見をとりまとめたものです。栄養不良の二重負荷、栄養改善の地域間格差、エビデンスの欠如、アカウンタビリティ等の課題に対して、栄養に特化した介入、栄養に配慮した介入、栄養支援の環境整備の3つのレベルの具体的なアクション案が提案されました。本議連にて、この国家戦略案は承認され、今後は政策として反映されるよう、引き続き議連として働きかけをしていきます。
また、当日参加した、日本栄養士連盟、福田パー咲子先生、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、ワールド・ビジョン・ジャパン、アライアンス・フォーラム財団、国際ロータリー財団、ユニセフ東京事務所、UNDP駐日事務著、ジョイセフ、名古屋大学が、それぞれの栄養に関わる活動について一言ずつコメントを発表しました。
そして、最後に今井絵理子議員より、世界の子どもたち、お母さんたちのために、片方の車輪だけではなく、もう片方の車輪を動かして共に発信していきたい、という力強い言葉がありました。また、今井議員が事務局次長として引き続き関わることが決定しました。
第四回国際母子栄養改善議員連盟では、議員及び一般の方々より、100名以上の参加があり、内容も盛り沢山で、国内外の栄養改善の盛り上がりを反映する内容となりました。2014年7月に設立されたこの国際母子栄養改善議員連盟ですが、このように多くの方々にご関心を寄せて頂くまでになり、感謝しています。リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピックが終われば、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックに向けた栄養改善の取組の開始です。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは日本リザルツ、ワールド・ビジョン・ジャパン、栄養不良対策行動ネットワークと共に、引き続き栄養関係者を結び付ける役割を果たすと同時に、政策決定者への働きかけを積極的に行っていきます。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
地引英理子