2030アジェンダ/持続可能な開発目標(SDGs)実施に関する報告書
『「誰一人取り残さない」約束の実現に向けて』を発表

「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」


“この偉大な共同の旅に乗り出すにあたり、我々は誰も取り残されないことを誓う。人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、目標とターゲットがすべての国、すべての人々及び社会のすべての部分で満たされることを望む。そして我々は、最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する”(パラグラフ4、外務省仮訳)

 

20159月、国連にて全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、20161月より実施の段階に入っています。各国が実施に向けて、政策や計画の策定などを進めています。2030アジェンダに述べられている上記の「誰一人取り残さない」という公約は、世界で最も貧しく、排除された子どもにかつてない変革をもたらす可能性があります。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、この公約が国内においても、また国際社会においても確実に達成されるよう、新しい報告書『「誰一人取り残さない」約束の実現にむけて』(Realising the Pledge to Leave No One Behind)」を発表しました。



ここ数十年で、絶対的貧困は驚くほど減少しました。より多くの子どもが学校に通い、基本的な医療ケアやその他必要不可欠なサービスを受けられるようになりました。しかし、この改善は国全体の平均であり、それだけに注目すると、子どもたちの間に生じている格差を見逃してしまいます。

 

貧しい家庭の子ども、へき地で暮らす子ども、障害を持って生活する子ども、少数民族の子どもは、より有利な立場にある子どもに比べると、大きく取り残されてしまっています。この大きな格差は、子どもたちが排除されていることにより生じています。つまり、貧困と差別が重なり、子どもたちから機会を奪い、さらに不利な立場に追いやってしまうのです。例えば、女の子は深く根付いた差別的な規範によって、物資配給の列の最後に追いやられることがあります。紛争下や緊急下にある子ども、難民の子どもは、世界で最も不利な立場にいます。また、気候変動により、今後13年間で、3,500万から12,200万人の人々が貧困に陥る恐れがあり、子どもたちの状況はさらに悪化するでしょう。

 

こうした状況から考えると、「誰一人取り残さない」という公約が革新をもたらしうるということがいえます。つまり、2030アジェンダに掲げられた「持続可能な開発目標(SDGs)」がどのぐらい達成されているかを評価するには、「最も取り残された集団においてどのぐらい改善されているか?」を基準にしなくてはならないということなのです。これはとても重要な点です。もはや、国全体の平均的な成長率のみを見て、国内における排除や差別を見過ごすことがあってはなりません。2030アジェンダにこの公約が掲げられたことにより、排除された集団に、大きな注目が向けられるでしょう。最後の一人の子どもまで支援の手を差し伸べるということを、世界が宣言したのです。

 

「誰一人取り残さない」という公約は、2030アジェンダの最も重要な要素であり、SDGsを達成するための鍵でしょう。しかし、政策立案者にとって、この公約を実行しようとするインセンティブは今のところ強くありません。公約をどう具体的に実現させうるかが明確でないことに加え、取り残された集団にリーチし排除の問題に取り組むことは、しばしば政治的にも、経済的にも難しいためです。その結果、「誰一人取り残さない」という公約は、簡単に口先だけの約束になってしまい、繰り返し述べられる原則ではあっても、排除された子どもに実質的な変化をもたらすものではないということになってしまう可能性があります。

 

しかし、「誰一人取り残さない」アプローチは、潜在的に大きな利点があります。格差は貧困削減の努力を妨げ、力強い持続可能な経済成長を損なうというエビデンスが提示されています。経済的、社会的排除は、排除された集団が貢献できる国の生産性やイノベーションを奪うことになります。例えば、バングラデシュでは、障害のある人々を経済的に排除することによる損失は、年間89,100万ドルにのぼると言われています。排除は、社会を不安定にし、紛争の原因にもなります。

 

最も取り残された集団が排除されないよう取り組みを進めることは、公正であり、かつより早い改善を促すことができる賢明な行いでもあります。各国政府は、時間を無駄にすることなく、「誰一人取り残さない」という公約を実施すべきです。

 

誰一人取り残さない公約は、国際社会が行なった最も革新的なコミットメントの一つです。公約は、何世紀にも渡って排除された集団の軽視、虐待を元に戻す可能性があり、最後の一人の子どもに確実にリーチできる可能性があります。しかし、公約が行動に移された時にだけ、この可能性が実現されるでしょう。2030アジェンダの重要な目標を達成して、一世代で貧困を終わらせることは、公約に命を吹き込むことにかかっています。世界の子どもの状況を見れば、私たちが口先だけの約束をできる余裕はありません。

 

では、政府は何をすることを求められているのでしょうか。セーブ・ザ・チルドレンは、国内において「誰一人取り残さない」という公約を実現するために、各国政府に以下を行うよう提言します。

 

(1)分析すること

“「誰一人取り残さない」ための評価” を実施し、どの集団が、なぜ最も取り残されているのか特定すること。


(2)行動すること

排除された集団すべてに支援を届けるため、また、そのための適切な資金確保と支出を確保するためのアクションプランを定め、実施すること。


(3)説明すること

「誰一人取り残さない」公約の進捗を報告し、透明性のある、包括的かつ参加型の方法でモニタリングを行うこと。


 

また、国際社会(援助国、国連機関、多国間組織を含む)に以下の三つの手段を講じるよう提案します。

 

(1)調整すること

国際協力、国際的な税制度、貿易やビジネスに関する政策を含め、あらゆる政策を公約と一貫したものにすること。ODAは、たとえどこに住んでいようと最も取り残された人々に届くべきです。国際税制度や他の金融制度は、低・中所得国に不利益をもたらす制度であってはなりません。


(2)行(2)行動すること

社会的な集団別(収入、ジェンダー、民族、世代別等)に細分化された質の高いデータの収集に投資すること。細分化された全てのデータを可能な限り使用して、取り残された集団の能力強化や、その集団のための投資を増やすこと、データに関する国際会議の設立に投資することも含まれます。


(3)説(3)説明すること

国際的なモニタリングや公約の定期的かつ包括的なレビューを確保し、公開すること。説明の機会としては、国連における「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」にて、国際的に統一された形で、専門的な報告を各国が自発的に行うこと、そして国連によるSDGs進捗報告書の毎年の発表も含まれます。

 

上記提言を一枚にまとめたインフォグラフィックスはこちら

報告書全文(英語)はこちら

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