(公開日:2017.02.16)
「まずは知ること。そして、声をあげること」子どもの貧困問題解決に向けたシンポジウム@東京都千代田区
- 日本/子どもの貧困問題解決
2017年2月11日、セーブ・ザ・チルドレンは子どもの貧困問題解決に向け、東京都千代田区で「経済的に困難な状況下にある子どもや保護者の現状と支援施策~東日本大震災から6年、子どもの今と未来のために~」を開催しました。
1月31日には宮城県石巻市でも同様のシンポジウムを開催しており、東京でも関係者や市民の方々と一緒に子どもの貧困対策の充実に向けて考える機会となるよう実施しました。
当日は、セーブ・ザ・チルドレンからの報告と文部科学省、学校事務職員の方からは経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯が活用できる支援施策の一つである就学援助制度について、国と学校現場の立場から、同制度の内容や実践事例、課題について発表がありました。会場は、行政、自治体の議員、学校関係者、法人企業関係者、学生、NGO・NPO関係者、一般の方々など71名の参加者で満席に。中には小さなお子さんと一緒にご参加くださった方や高校生もおり、子どもの貧困問題に対する関心の高さを伺わせました。
最初に、セーブ・ザ・チルドレンから昨春岩手県山田町、宮城県石巻市で行った「給付型緊急子どもサポート~新入学応援キャンペーン~」受給世帯を対象としたアンケート調査結果をもとに、東北沿岸部の経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の状況、また子どもや保護者が必要とする支援の内容について報告しました。参加者からは「貧困と、それによってどのような困難が生じているのかが分かってよかった」「今回は震災地域のみでしたが、こうした現状は全国にもあると思いますし、子どもたちが我慢をしている現実にも心を痛めるばかりです」といった感想がありました。
続いて、アンケート調査結果の中で、「(就学援助制度を)知らなかった」「周囲の目が気になって申請しなかった」という理由で利用していない世帯もあった同制度について、文部科学省と学校事務職員の方からお話しいただきました。
文部科学省初等中等教育局の大久保享之氏は、就学援助制度についての全体的な説明や課題、今後の展望などについて発表。アンケート調査結果でも課題として上がっていた制度の周知方法についての全国的な状況、認定の基準や援助される費目など具体的な内容を説明いただきました。
公立中学校事務職員の?澤靖明氏からは、学校事務職員が困難な状況にある子どもたちをどのように支えているか、また、就学援助制度の周知徹底・利用率の向上に対する現場の実践的な取り組みを、子どもの権利の視点を踏まえながら共有いただきました。
お二人の発表の後には、参加者から、就学援助制度の予算や、周知・申請方法の改善に向けた具体的な提案、就学援助を利用することに対するスティグマといった、様々な質問やコメントがあがりました。
参加者からは
「援助が受けたくても周りを気にして受けられない人がいる現状を知りました。教育の機会を平等に受け取れるように、就学支援制度が必要であり、今後より知ってもらう必要があることがわかりました」
「国や地方自治体、現場によってそれぞれ支援の実態把握が変化しているのはしょうがないとしても、もう少し風通しがよくなると良いなと思いました。予算がどんなに増えても、追いつかないほどの貧困状況の深刻さを感じました。しかし、この様な取り組みがもっと広報されて『見えない貧困』の可視化が広がれば良いなと思いました」
といった声があがり、参加者一人ひとりの気づきや学びがあったように感じられました。
子どもの貧困問題の解決に向けて、私たち一人ひとりができることとして、参加者からは
「考えることをやめないこと」
「いろいろな現状を知ること、知って伝えること、つなげること」
「自分の周りの人たちに、まず周知していくこと、自分自身も自分事としてアンテナを張ること」
「今経済的な理由で夢が限られてしまっている子どもとその夢をどうしても実現したい親がいることをきちんと理解して行動していきたい。まだ高校生なので具体的に何ができるかは分からないので、このシンポジウムをきっかけにこれから見つけていきたい」
といった、まずは自分の身近からできる取り組みについての声があがりました。
さらに、
「就学援助は受けて恥ずかしいものではない。必要なら利用して当たり前の制度だという理解ができたので、もし機会があれば、この事を他の人にも伝えたい」
「世間話の中に就学援助制度について言及する、SNSで知らせる、ママ友からの広がり期待」
など、就学援助制度など様々な制度の周知や活用につながるアイデアも上がりました。
今後もセーブ・ザ・チルドレンでは、これまで行政や地域との連携を築き上げてきた東北や熊本県を中心に、日本の子どもの貧困問題解決に向け、活動していきます。特に、今回のシンポジウムで焦点をあてた就学援助制度に関しては、関係団体と協力しながら、その周知徹底や申請方法の改善を国や地方自治体へ働きかけていく予定です!
すべての子どもたちが夢や希望を持ち、4月からの新しい生活を迎えることができるよう、一人ひとりの力を合わせて現状を少しずつでも変えていきましょう。
(報告:東京事務所 田代光恵)