(公開日:2018.06.15)
ガザ地区の子どもたちのメンタルヘルスに関する調査を実施-子どもの95%以上に、抑うつ感情や活動過多などが見られる結果に
- ガザ
セーブ・ザ・チルドレンは、パレスチナ自治区ガザ地区に暮らす子どものメンタルヘルスに関する調査を実施し*、子どもの95%以上に、抑うつ感情や活動過多、一人でいることを好む傾向、攻撃的な言動がみられることがわかったと発表しました。通常、強い精神的苦痛を受けている時には、これらの症状が複合的に現れますが、親や養育者の96%以上が、息子や娘、孫に、これら4つの、すべての症状がみられると回答しています。また、調査の結果、子どもの63%が悪夢をみる、68%が眠れないなど不安の兆候を示していることもわかりました。
*子ども150人と親や養育者150人を対象に、今年2月に実施
サマールさん(15歳)
サマールさん(15歳)
親や養育者の60%が、子どもたちにとって最大のストレス要因は、紛争の脅威や、爆弾への恐怖、政情不安により絶えず続く不安定な状態であると話し、78%の子どもが、最も怖いのは飛行機の音だと話しています。
インタビューの中で、子どもたちはたびたび、紛争が起きるかもしれない、または、自分自身や家族に爆弾が落とされるかもしれないことが、「怖い」もしくは「危険だと感じる」と言い、なかには、”悪夢から自分自身を守るため”に、夜眠ることを怖がる子どももいます。
今年3月の抗議デモに参加したサマールさん(15歳)は、これまでに紛争を3度経験し、封鎖下の生活しか知らないと言います。サマールさんは、以下のように話します。
「ひどい悪夢をたくさん見ます。そして、爆弾や砲撃のターゲットにされたり、けがをしたり、殺されるのではないかという不安を常に感じています。私と同じように感じている子どもはたくさんいて、恐怖のために、精神的な傷を負っています。恐れが、子どもたちの行動に大きな影響を及ぼしています。
3月の抗議デモに参加した時、人々がけがをするのを目撃し、とても取り乱してしまいました。何の罪もない子どもたちがけがを負うのを目にして泣きそうになり、犠牲になった子どもを見た時、泣きました。胸が張り裂けるようで、つらかったです。今でも、悲しいです」
子どもたちは、上記の通り、困難な状況に直面していますが、一方で、レジリエンス(立ち直る力、回復する力)があることも明らかになっています。例えば、インタビューした子どもたちの80%以上が、家族や友人に自分自身の問題について話をすると言い、90%が両親からのサポートを感じると話しています。
セーブ・ザ・チルドレンの中東地域におけるメンタルヘルスおよび心理社会的支援シニアアドバイザーを務めるマルシア・ブロフィ博士(Dr Marcia Brophy)は、以下のように指摘します。
「インタビューした子どもの80%以上が、両親から離れると安全だと感じないと話しているとおり、子どもたちの安心・安全は、家族の存在がもたらしている安定感と結びついています。
しかし、5月の衝突の激化で、親や親族がけがをしたり、犠牲になるなどの経験をした人々が数千人に上りました。すでに不安定な状況下で家族の安全が失われることは、子どもたちのメンタルヘルスを危機的な状態に陥らせるリスクがあり、子どもの脆弱な対処メカニズムに対する重大な脅威となります。 また、長期間にわたり有事の状況下に置かれることで、ストレス反応のうち最も危険とされる毒性ストレス(toxic stress)の状態に陥る危険性が高くなります。
最近の衝突が子どもに与えた影響について把握するには時期尚早ですが、親や大切な家族、友人を失ったり、抗議デモで負傷した人の世話をしなければならなかった子どもたちがいます。
紛争下の子どもたちにとって、家族の安全の崩壊は、メンタルヘルスの問題を引き起こす主要因の一つだということが分かっています。 ガザ地区に暮らすすべての子どもたちは、もう一度衝撃的なことが起これば、生涯にわたる計り知れない影響を受けかねない、瀬戸際の状態にあります」
過去10年間、封鎖や3度の紛争がガザ地区の経済と公共サービスに大きな負担を課しており、家族は多くの困難と先の見えない生活に直面しています。インタビューした親や養育者150人の90%近くは、封鎖が日常生活に深刻な影響を及ぼしていると話しています。また、子どもの60%が、広範囲に及ぶ電力不足により毎日数時間しか電力が供給されないことが、最大の負の要因だと話しています。子どもたちは、電力の供給が遮断されると怒りを感じ、夜間に電気が消えると不安感、孤独感、または、周囲に誰もいないような感覚が生じると話しています。
一方で、親や養育者は、経済情勢の悪化に最も懸念を抱いており、約半数がストレスの最大の要因であると話しています。過去15年間で、貧困率は30%から50%以上に上昇し、失業率は35%から43%に上昇しました。現在、若者の失業率は60%に達しています。 20年近く前は、96%の人々が、安全な水を得ることができましたが、現在では、93%の人々は安全な水を得ることができません。医療措置を受けるためにガザ地区から出るための許可を得ることがますます難しくなっている一方で、医療用品や食料は不足し、値段は高額になっています。
パレスチナ自治区事務所代表ジェニファー・ムーアヘッドは、以下のとおり訴えます。
「ガザ地区に暮らす子どもたちは、困難な状況から回復する力がありますが、トラウマを引き起こすような経験を克服するためには、今すぐに、さらなる支援が必要です。 国際社会は支援を強化し、学校や課外活動、家庭において、精神保健・心理社会的支援を提供する必要があります。こうした今すぐ必要な支援とともに、封鎖を終わらせ、恒久的で公正な解決策を模索することで、子どもたちははじめて、より希望のある未来を描けるのです」
※本調査は、子ども14人を含む100人以上が犠牲になった2018年3月にはじまった抗議デモが行われる前に実施されました。
セーブ・ザ・チルドレンは、ガザで活動する最大規模のNGOの一つで、子どもたちやその家族に対して教育支援、子どもの保護、食料・生計支援、心理社会的支援、就労支援を行っているほか、パートナー団体を通じて水・衛生支援なども行っています。
インタビューの中で、子どもたちはたびたび、紛争が起きるかもしれない、または、自分自身や家族に爆弾が落とされるかもしれないことが、「怖い」もしくは「危険だと感じる」と言い、なかには、”悪夢から自分自身を守るため”に、夜眠ることを怖がる子どももいます。
今年3月の抗議デモに参加したサマールさん(15歳)は、これまでに紛争を3度経験し、封鎖下の生活しか知らないと言います。サマールさんは、以下のように話します。
「ひどい悪夢をたくさん見ます。そして、爆弾や砲撃のターゲットにされたり、けがをしたり、殺されるのではないかという不安を常に感じています。私と同じように感じている子どもはたくさんいて、恐怖のために、精神的な傷を負っています。恐れが、子どもたちの行動に大きな影響を及ぼしています。
3月の抗議デモに参加した時、人々がけがをするのを目撃し、とても取り乱してしまいました。何の罪もない子どもたちがけがを負うのを目にして泣きそうになり、犠牲になった子どもを見た時、泣きました。胸が張り裂けるようで、つらかったです。今でも、悲しいです」
子どもたちは、上記の通り、困難な状況に直面していますが、一方で、レジリエンス(立ち直る力、回復する力)があることも明らかになっています。例えば、インタビューした子どもたちの80%以上が、家族や友人に自分自身の問題について話をすると言い、90%が両親からのサポートを感じると話しています。
セーブ・ザ・チルドレンの中東地域におけるメンタルヘルスおよび心理社会的支援シニアアドバイザーを務めるマルシア・ブロフィ博士(Dr Marcia Brophy)は、以下のように指摘します。
「インタビューした子どもの80%以上が、両親から離れると安全だと感じないと話しているとおり、子どもたちの安心・安全は、家族の存在がもたらしている安定感と結びついています。
しかし、5月の衝突の激化で、親や親族がけがをしたり、犠牲になるなどの経験をした人々が数千人に上りました。すでに不安定な状況下で家族の安全が失われることは、子どもたちのメンタルヘルスを危機的な状態に陥らせるリスクがあり、子どもの脆弱な対処メカニズムに対する重大な脅威となります。 また、長期間にわたり有事の状況下に置かれることで、ストレス反応のうち最も危険とされる毒性ストレス(toxic stress)の状態に陥る危険性が高くなります。
最近の衝突が子どもに与えた影響について把握するには時期尚早ですが、親や大切な家族、友人を失ったり、抗議デモで負傷した人の世話をしなければならなかった子どもたちがいます。
紛争下の子どもたちにとって、家族の安全の崩壊は、メンタルヘルスの問題を引き起こす主要因の一つだということが分かっています。 ガザ地区に暮らすすべての子どもたちは、もう一度衝撃的なことが起これば、生涯にわたる計り知れない影響を受けかねない、瀬戸際の状態にあります」
過去10年間、封鎖や3度の紛争がガザ地区の経済と公共サービスに大きな負担を課しており、家族は多くの困難と先の見えない生活に直面しています。インタビューした親や養育者150人の90%近くは、封鎖が日常生活に深刻な影響を及ぼしていると話しています。また、子どもの60%が、広範囲に及ぶ電力不足により毎日数時間しか電力が供給されないことが、最大の負の要因だと話しています。子どもたちは、電力の供給が遮断されると怒りを感じ、夜間に電気が消えると不安感、孤独感、または、周囲に誰もいないような感覚が生じると話しています。
一方で、親や養育者は、経済情勢の悪化に最も懸念を抱いており、約半数がストレスの最大の要因であると話しています。過去15年間で、貧困率は30%から50%以上に上昇し、失業率は35%から43%に上昇しました。現在、若者の失業率は60%に達しています。 20年近く前は、96%の人々が、安全な水を得ることができましたが、現在では、93%の人々は安全な水を得ることができません。医療措置を受けるためにガザ地区から出るための許可を得ることがますます難しくなっている一方で、医療用品や食料は不足し、値段は高額になっています。
パレスチナ自治区事務所代表ジェニファー・ムーアヘッドは、以下のとおり訴えます。
「ガザ地区に暮らす子どもたちは、困難な状況から回復する力がありますが、トラウマを引き起こすような経験を克服するためには、今すぐに、さらなる支援が必要です。 国際社会は支援を強化し、学校や課外活動、家庭において、精神保健・心理社会的支援を提供する必要があります。こうした今すぐ必要な支援とともに、封鎖を終わらせ、恒久的で公正な解決策を模索することで、子どもたちははじめて、より希望のある未来を描けるのです」
※本調査は、子ども14人を含む100人以上が犠牲になった2018年3月にはじまった抗議デモが行われる前に実施されました。
<セーブ・ザ・チルドレンのガザにおける活動>
セーブ・ザ・チルドレンは、ガザで活動する最大規模のNGOの一つで、子どもたちやその家族に対して教育支援、子どもの保護、食料・生計支援、心理社会的支援、就労支援を行っているほか、パートナー団体を通じて水・衛生支援なども行っています。